株式会社ワークス 代表取締役会長/代表取締役社長
Toshihiro Nishiguchi/Masaru Saito
西口 敏広 氏/斉藤 昌氏
35年以上の歴史を持つ金沢のデザイン会社・株式会社ワークス。さまざまなスキルを持つクリエイターが力を合わせ、Webサイト、グラフィックなどのデザイン制作をはじめ、広告制作、動画制作、コピーライティングまでを幅広く手掛けています。地元企業に最適な提案ができるのは、お客さまファーストを貫き、金沢の伝統や文化も深く理解しているからこそ。代表取締役会長の西口 敏広(にしぐち としひろ)さんと代表取締役社長の斉藤 昌(さいとう まさる)さんに、独立までの経緯や強み、新たに立ち上げた雑誌「KanazawaStyle(金沢スタイル)」についてもお話を伺いました。
稼働し続ける“工場”のように、がむしゃらに仕事をこなした創業当初
ワークス立ち上げまでの西口さんの経歴をお聞かせください。
西口さん:小さな頃から車のデザインが好きで、車の絵ばかり描いていました。地元の石川県立工業高校のデザイン科で学び、専門学校へと進学して、卒業後はデザイン事務所に入りました。その後もう1カ所デザイン事務所を経て、広告代理店へ転職しました。
2度目の転職で広告代理店を選ばれたのはなぜですか?
西口さん:元々興味があり、視野を広げるのもいいかなと考えました。前の事務所を辞めたらすぐに来ないかと電話がかかってきて。ちょうどデザイナーを募集していて、タイミングも良かったのだと思います。
その後、2018年に独立され、ワークスを立ち上げられます。どのようなきっかけがあったのでしょうか。
西口さん:代理店で3年働いて20代後半になり、独立のタイミングかなと思いました。妻と2人でのスタートでした。
社名に込めた想いを教えてください。
西口さん:「ワークス」は一般的には「作品」という意味ですが、「工場」や「作業場」という意味もあります。ずっとハードに仕事してきて、今後もそのペースが続くだろうと、稼働し続ける工場をイメージして名付けました。多少辛くてもやり続けないと生き残れない状況でしたので。
ハードにやり続けたことで、会社も急成長していくわけですね。
西口さん:そうですね。仕事がどんどん入ってきて人手が足りず、優秀な人材をほかの会社からスカウトしていました。
そこで斉藤さんもワークスへ合流されたと。いつ頃でしょうか?
斉藤さん:創業から5年経った頃でした。西口と同じく県立工業のデザイン科を卒業後、デザイン事務所で働きましたが、より自分に合った場所を探していたところ声をかけてもらいました。忘れもしない、ある日画材屋の一室で「明日から来ないか、いい給料出すから」って(笑)。待遇や自身を評価してくれる点に魅力を感じて入社を決めました。
「デザインはサービス業」。お客さま最優先で求められることに応え続けた
創業36年を迎えられ、県内のデザイン事務所では最も歴史があり、規模も最大です。これだけ長く続けてこられたのはなぜしょうか。
西口さん:第一にスタッフが優秀なこと。プレゼンを複数の人間で行うことで強みを発揮してきました。さまざまな個性があるので、プレゼン時にそれぞれの特色を出せば幅広い表現ができ、思いが伝わりやすいです。
表現力も多彩ですが、手掛けている仕事も多岐に渡りますよね。
西口さん:うちは専門家集団。何でもできます。Webも動画もグラフィックもやりますし、社員にも複数のスキルを持つことを求めています。取材してコピーを書き、撮影して、デザインして、すべてワンストップで可能です。発注する側にすれば非常に楽ですよね。
スタートアップ企業支援、ブランディング・リブランディング支援なども行なっていますよ。
口コミだけで仕事が入り続けている、というのも驚きでした。
西口さん:営業せずとも仕事が続く大きな理由は「デザインがサービス業」だと理解していることだと思います。これまで積み重ねてきた膨大なノウハウを生かしながら、お客さまが求めることに汗をかいて一生懸命応えること。
斉藤さん:ワークスは、創業時からお客さまのことを最優先に考えてきました。言われたことをきちんとこなす、期待に応える。時間を守る。そして断らない。何とかしてやろうとする。発注担当者もサラリーマンですから、その人の目的も達成できるように、「サービス業」だと常に意識してきました。だからこそ重宝されてきたと思います。
創業当時からお客さまファーストを貫いているのはなぜですか?
西口さん:クリエイティブよりも営業が一段上をいく広告代理店での経験があるからです。ずっとデザイン事務所にいたら、このような考えはできなかったでしょうね。「お客さまの求める通りやれ」と叩き込まれました。
世代交代、新スタジオ・・・。新しいワークスへと生まれ変わるために
23年に西口さんから斉藤さんへ社長を交代されたと。今この決断をされた理由をお聞かせください。
西口さん:昨年65歳になり、取引先に私より年下の社長がいなくなったことがきっかけです。長く続く会社なので、“老舗イメージ”を払拭できる大チャンスだと感じたからです。
撮影スタジオのオープンも、新しいワークスを感じさせる取り組みですね。
西口さん:広告自体のパワーが減ってきて、これからは記事の時代が来ると考えました。アメリカでは大企業は軒並みオウンドメディアを所有し上手くアピールしています。日本にもその流れが来た時にすぐ対応できるよう、取材から撮影まですべて可能な環境を整えようとオープンさせたのがこの撮影スタジオです。
斉藤さん:潜在的に何かやりたいというニーズを拾い上げたい。そこまで予算をかけず効率的にアピールしたいという企業の欲求を、第三者目線で発信できればと考えています。
「金沢の雑誌文化を残したい」。この時代にあえて紙の雑誌を創刊する理由
そうした記事での発信が形になったものの一つが、雑誌「KanazawaStyle(金沢スタイル)」ですね。どのような想いで創刊されたのでしょうか。
西口さん:これまでの手掛けたものの中で最も印象的だったのが、株式会社金沢倶楽部の仕事です。「Clubism(クラビズム)」、「金澤」のほか、新しい雑誌をいくつも立ち上げました。独立直後から一緒にやってきたので非常に思い入れがあります。
しかし、残念ながら倒産してしまい、雑誌も廃刊して、関わっていた人たちの活躍の場が無くなってしまった。それならうちがやろうと。金沢の雑誌文化を残したいと思ったんです。22年7月に金沢スタイル合同会社を立ち上げ、Webマガジン「KanazawaStyle(金沢スタイル)」での情報発信を経て、これまでに3冊の別冊と創刊準備号の4冊を出版しました。
斉藤さん:エディトリアルデザインは金沢一上手いと自負しています。その技術やエッセンスを盛り込んで、「これぞ雑誌だ」というものを残したかった。
地元目線で金沢が紹介され、写真も美しく読み応えがありますね。
西口さん:コンセプトは「移住促進」です。日常的な、金沢に住んでいないと見つけられないような魅力を掲載することで、ファンが増え移住先に選んでもらえるのではと。
斉藤さん:僕は生まれも育ちも金沢ですが、まだまだ知らない店や場所がたくさんあります。「こんなところがある、一緒に行こう」となれば活気が出るし、多くの可能性を持つ金沢が、どんどん魅力的な街になっていく。それを後押しするような雑誌になればと。
今の時代にあえて紙の媒体というのは、大きな決心だったと思います。
西口さん:目立つだろうと思ったんです。ワークスが変わったことも示したかったし、若い人にも注目される会社にしたい。「こういうものもできますよ」という、会社のPR誌の役割もあります。
斉藤さん:Web制作は全盛で、参入障壁が低いです。それと比べると、美しい雑誌作りができるところは減っているのではないでしょうか。最初から最後まで、ワンストップでできるワークスの強みを打ち出す意図もあります。
今後どれくらいのペースで出版されるのでしょうか。
西口さん:まもなく、そしていよいよ創刊号が出ます。その後は年2回のペースで、不定期に出していきたいと思っており、どこかのタイミングで収益化できれば、年4回の出版が理想です。
斉藤さん:収益化は現時点では難しいですが、続けることで「頑張っているから協力したい」と手を挙げてくれる方もいるかもしれない。とにかく今はワークスという会社のできることを広く知ってもらいたいですね。
改めて、自社で雑誌作りを行って感じたことはありますか?
西口さん:単なる1ページの広告だけを作るのではなく、企画・執筆・誌面作りなどの流れがあり構成がある。プロセスが楽しいですよね。なんと言っても手元に残るというのが魅力です。
斉藤さん:雑誌作りは「商品作り」。広告は依頼があって作ってクライアントの名前で世に出ますが、雑誌はダイレクトに商品作りに関わることができます。表紙がパッケージで、この一冊が商品。見て楽しい。ライターとフォトグラファー、デザイナー、エディターのみんなで作る感じもいいですよね。
歴史を受け継ぎながら「より役に立てる」会社へ進化していく
展望をお聞かせください。
斉藤さん:西口が立ち上げた今までのワークスは持続させつつ、規模的に少し大きくしていきたいと考えています。Web制作事業を強化し、若い世代のデザイナーやエンジニア、他にもプランナーやコピーライターにもぜひとも入ってもらい、チームをより拡充していきたい。現社員のスキルもアップさせて、どうすればお客さまに対して「より役に立てるか」を考えていきたいですね。
新しいメンバーを迎えるとしたら、どのような人と一緒に働きたいですか?
斉藤さん:みんなと仲良くできる人がいいですね。仕事はチームとして動くので、臨機応変な対応が必要なことも多い。誠実で相手のことを想像できる人。
西口さん:プロジェクトを進めるためには、やはりコミュニケーションを伴います。だから人間性は重視したい。素直なことは大切ですね。
最後に、クリエイターへのメッセージやアドバイスをお願いします。
斉藤さん:美しくなくてもオシャレでなくても、目標が達成できればそれはデザインだと言いたい。
もちろん美しく機能的なものを追及するのはデザイナーの使命ですが、デザイナー自身の美的センス(好み)とは異なることもあります。特に広告などのコミュニケーションデザインにおいては、課題解決のためにベストな選択ができるかが重要です。「美しさ」も手段の一つと考えます。
西口さん:サービス精神を持って仕事をできる人がググッと伸びやすい。例えば「3案作って」と言われて「2案追加で作りました」というような。すると頼りにされてどんどん仕事が回ってきます。若いうちにいい仕事をどれだけ回してもらえるかで、成長スピードが変わりますよ。
取材日:2024年4月22日
株式会社ワークス
- 代表者名:代表取締役会長 西口 敏広、代表取締役社長 斉藤 昌
- 設立年月:1988年 2月1日
- 資本金:3,000,000万円
- 事業内容:Webサイト制作、グラフィックほか各種デザイン制作、広告の企画・制作、各種コンテンツ制作事業、スタートアップ企業支援事業、ブランディング・リブランディング支援事業、モーショングラフィックス・動画制作・動画編集、コピーライティング/グループ会社「金沢スタイル合同会社」で、雑誌「金沢スタイル」発行、地域活性コンテンツの企画・制作、スタートアップ企業支援、新製品のプロモーション支援
- 所在地:〒921-8034 石川県金沢市泉野町4-13-38/撮影スタジオ 〒921-8036 石川県金沢市弥生1-70
- 電話番号:076-243-0780(代表)
- URL:https://worksdesign.net/
- お問い合わせ先:上記電話番号またはURL、またはメールoffice@works-kanazawa.com より
この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。