株式会社ModelingX 代表取締役
Koudai Yamada
山田 航大氏
「地方の暮らしを豊かに、自分らしく生きられる社会」を目指して、テクノロジーを使った事業を展開する富山の株式会社ModelingX。実現化の一歩に、メタバース(仮想空間)で家づくりが体験できる新感覚アプリ「MELIFE」があります。代表取締役の山田 航大(やまだ こうだい)さんと取締役の織田 拳丞(おだ けんじょう)さんは学舎をともにした同志。若手で起業した経緯や葛藤、事業にかける思い、そして展望をお伺いしました。
「何かにチャレンジがしたい」。抱えてきた閉塞感をバネに起業へ
起業までのキャリアを教えてください。
山田さん:生まれも育ちも富山で、富山大学経済学部に進学し地方銀行へ就職しました。2年間勤めた後に退職して2021年に独立、22年に会社設立という流れです。在職2年目のときに出場した“ビジネスプランコンテスト”で賞をいただいたことが起業につながる成功体験になりました。
銀行を2年で退職するのは大きな決断ですね。どんないきさつがあったのでしょうか?
山田さん:「何かにチャレンジがしたい」とずっと思っていました。その根本には「地方で暮らすフラストレーション」があったかもしれません。都心に比べると“刺激が少なく、暇で退屈”とどうしても感じてしまいます。「もっとクリエイティブな仕事がしたい」という思いから、自分で動画やホームページを作っていくことを選びました。起業は“ハードシングスが多い”とよく言われますが、紆余曲折を乗り越えて成長できることがうれしいです。「世の中にあったらいいな」と思うものを仲間たちと一緒に作って届けられていることがありがたいです。
CTO 織田さんとは同級生だとお聞きしました。
山田さん:中学、高校、大学が同じです。織田は工学部出身でITやプログラミングについて学んでいました。“ビジネスプランコンテスト”に出場するときに「力を貸してほしい」と声をかけたのがきっかけで共同創業にいたりました。
織田さんは起業に関心があったのでしょうか?
織田さん:まさか自分が起業するとは思っていませんでした。安定志向と言いますか、一般企業に勤めて暮らしていけたらいいかなと思っていたぐらいです。でも、就職先で電気関係の仕事をしながら、これまで身に着けてきた「プログラミングを生かしたい」という気持ちがだんだん大きくなっていました。起業したからこそできた経験や知り合えた全国の仲間が、財産だと感じています。
がむしゃらに取り組んだからこそ見えた“やりたいこと”。「どんな評価だろうともこのサービスを届ける」
現在の事業についてお聞かせください。
山田さん:住宅展示場アプリ「MELIFE(ミライフ)」のサービスを展開しているほか、メタバース・CG、VR・実写VR・ARのコンテンツ制作、VR・AR等の導入や新規事業開発に関するコンサルティングを行っています。
最近では、富山市で閉校になる小学校の「デジタル資産化プロジェクト(インターネット上に3Dで再現して残す取り組み)」を実施しました。生徒や地域の方々と一緒に行った事業で、富山市のWebページに掲載していただいています。
住宅展示場アプリ“MELIFE”はどのようなサービスですか?
山田さん:家を建てたいユーザー(施主)さんと、家を売る側の工務店やハウスメーカーをマッチングするアプリです。住宅総合展示場をバーチャル空間で行っているイメージですね。現代は、広告費をかけるか、SNS活用が得意な事業者さんが目に留まりやすい仕組みがあります。でも、良いものを作っている事業者さんは数多くあります。アプリにメタバースを用いることで公平なマッチングにつながります。ユーザーにとっても、対等な関係で情報を得られるので自分に合った暮らしを選びやすくなります。
このようなサービスは他社も挑戦しているのでしょうか?
山田さん:サービス自体はあります。これまでもいろいろな方々が実現化に向けて挑戦して来られたと思います。ただ、世間とのタイミングのずれ、グラフィックを美しく表現できない、操作が難しい、待ち時間が長いといったさまざまな問題がありました。私たちはそれを解決して、スマートフォンで使えるようにまでサービスを身近なものにアップグレードしました。
「住宅展示場」なので網羅的に閲覧できることも強みですね。ハウスメーカーさんにとっても「まず知ってもらう」という機会づくりになります。
MELIFEのサービスはどうやって生まれたのでしょうか?
山田さん:個人事業主のときに応募したビジネスコンテストがきっかけです。織田といろいろな種類の案を数多く出していくなかで、「人が家を買うとき」の実態を目の当たりにしました。
例えば、「今契約したら100万円安くします」といった営業の勢いに押されて、“どういう家に住みたいのか”という吟味が十分にできないまま契約につながるケースがあります。もちろん誰かが悪いというわけではありません。ブラックボックスになっている慣習に、新しい技術で風穴を開けられるのではないかと考えました。「どんな評価だろうとも、自分たちはこのMELIFEサービスをやる」と決意がここで固まって、現在までやり続けています。
ユーザーの声を受け止め、改善。都心と地方の格差をうめるため「家」に着目
ユーザーの反応はいかがでしょうか?
山田さん:「アプリが落ちる」「アイテムが少ない」「何をしたらいいか分からない」などいろいろなご指摘をいただきます。それに対して「課題を受けて、改善する」を繰り返しています。
どのような意識を持ってMELIFEを作られてきましたか?
山田さん:最先端を都心ばかりでなく、地方にも届けたい。“情報や機会の格差”という地方が抱えるフラストレーションをポジティブに捉えて「より良い暮らしを作っていく」という気持ちで事業に取り組んでいます。
そもそも「メタバースを触ったことがない人」がほとんどで、地方では特に顕著です。でも、この新しいプラットフォームを使って、1年後、2年後…これから先の未来で、地方に住む人たちに喜んでもらえるものって何だろうと考えたときに「暮らしの真ん中にある“家”だ」と確信しました。
ソフト、ハードに関わらずものづくりの本質は同じ。前人未踏のプログラムに挑戦し続ける
事業をするうえでの「やりがい」や「大切にしていること」はなんですか?
織田さん:プログラムを書いていると必ずエラーが出ます。私たちの取り扱っている内容が珍しいものなので、Googleや海外の記事を検索しても答えが見つからないことがよくあります。そうなったら手探りして解決方法を見つけるしかない。そうして見つけた方法をブログに掲載しています。それが「世界初の記事」のときもあって、前人未踏を達成したようで手ごたえがあります。
そして、記事を書くうえで「正確さ」を何よりも重視しています。間違った情報を届けられないので相当念入りに調べます。おかげさまでGoogle検索をすると一番上に私の記事が出てきます。それを見た人たちから感謝の声をいただくととてもうれしいですね。
山田さんはいかがでしょうか?
山田さん:「楽しむ・夢中になれる」これに尽きます。自分の思いと違うことをそれぞれがやらされ続けたら意欲も湧かなくなる。なので、言いたいことを言い合える雰囲気づくりが重要で、そのうえで規律とのバランスを取ることを意識しています。
でも、「楽しんだもの勝ち!夢中になれることこそ成長して突出したものになる」と思っています。前例がないなら作ればいい。みんなが本当にやりたいことを確かめ合いながら日々取り組んでいます。
「リアル」と「バーチャル」の“ものづくり”に違いはありますか?
山田さん:家づくりで言えば「触らなければ分からない質感」があるのは事実です。「実際の家にアプリは敵わないだろ」と言われることもあります。違いは確かにありますが、ものづくりという観点では「リアルとバーチャル」が辿る工程は同じだと自負しています。いわゆる「ソフトとハード」の違いで、ソフトは軽視されがちかもしれません。でも、実際に多くの人が関わり、バーチャル空間を制作しているのは、必要だからです。
アプリなら気軽に最速で一番かっこいい家が現れて、リアルにつなぐことができる。これがバーチャルの面白さであり強みだと思います。
「世界中のどこにいてもつながれる社会」リアルとバーチャルがシームレスになる未来を目指して
どんな仲間と働きたいですか?
山田さん:協力しながら、新しい世界を開拓していける仲間と働きたいです。弊社ではバーチャルオフィスのような形で石川・富山・東京・ベトナム・韓国と世界各地のスタッフが働いてくれています。才能を持っていても地方だと仕事が少ない。私たちも自社だけで事業を拡大していくことは難しいと思っています。だからこそ、どこに住んでいてもつながって面白いものを一緒に作る仲間が全国、世界中にさらに増えたらいいなと思っています。
展望をお聞かせください。
織田さん:地方出身のエンジニアがもっと増えればいいなと思っています。私たちが富山で起業しているのを知って「富山でもこんな面白い会社があるんだ。自分たちもやってみよう」と新しいことにチャレンジする若い人が増えればうれしいです。
山田さん:MELIFEは「お客さん、つまりユーザー(施主)と住宅メーカーに心から喜んでもらうこと」をこの1年間、特に力を入れて形にしていきます。3年以内には全国のみなさんに利用してもらえるように拡大していきたいです。「地方だけ、都心だけ」という分断ではなく「地方も東京も含めた全国、そして世界中がつながる」という想像を膨らませながら着実に成長していきたいです。
ただ、「実生活を重視する人」「バーチャル空間で生きていきたい人」という風に“理想の暮らし像”は千差万別です。だからこそ「VRやメタバース」と「現実世界」がシームレスになって、それぞれの人が願う“暮らし”が実現するような社会になればいいなと思ってサービスを手掛けています。そんな未来を描きながら事業を進めていくのはとにかく楽しいですね。理想の暮らしへの一歩目に、MELIFEを体験していただけるとうれしいです。
取材日:2024年7月10日
株式会社ModelingX
- 代表者名:山田 航大
- 設立年月:2022年4月8日
- 資本金:100万円
- 事業内容:住宅展示場アプリ“MELIFE”制作、メタバース・CG・VR・実写VR・ARのコンテンツ制作、VR・AR等の導入や新規事業開発に関するコンサルティング
- 所在地:〒930-0887 富山県富山市五福3216-12 林ビル2階
- URL:https://modelingx.jp/
- お問い合わせ先:https://modelingx.jp/contact/
この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。