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私たちの生活に当たり前のように存在する「におい」。その奥深さと意外性にスポットを当てた「におい展」が、福島市の「こむこむ」で開催された。本展では、心地よい香りから強烈な悪臭まで、嗅覚をフル活用した体験ができるとあって、会期中は1万人を超える入場者が来訪。戦国武将が身にまとった香や、人を引きつけるフェロモンの匂い、そして「世界最悪の悪臭」と言われるシュールストレミングの臭気まで、五感を刺激する展示が並んだ。
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福島といえば、温泉地の硫黄のにおい、全国トップクラスの生産量を誇る桃の甘い香り、そして消費額日本一を記録した納豆の独特な香りが思い浮かぶ。においは、その土地の歴史や風土と深く結びついており、地域のアイデンティティを形作る重要な要素のひとつだ。
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戦国時代、武将たちは香をたいて体臭を抑えたり、気持ちを落ち着かせたりする習慣を持っていた。特に戦の前には、死後の体臭を隠すために特別な香をまとったとも言われる。また、現代においてはフェロモン研究が進み、においが人間関係や恋愛に及ぼす影響が科学的に解明されつつある。
そんな「においの歴史と伝統」を、実際に嗅ぎながら体感できる貴重な場となったのが、この「におい展」だった。
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「におい展」のハイライトは、やはり「悪臭体験ゾーン」だ。最後のハイライトとなるエリアには、「臭豆腐」「くさや」、そして「世界最臭」と称されるシュールストレミング(スウェーデンの発酵ニシン)が並ぶ。鼻を押さえながら悶絶する者、無言でその場を立ち去る者——「試してみたい!」という好奇心と、「やっぱりやめておけばよかった…」という後悔が入り混じる、なんとも言えないスリリングなコーナーとなった。悶絶しながらも、これを「ネタ」として楽しむ来場者の姿が印象的だった。
悪臭体験の後には、「鼻をリセットする」ためのコーヒー豆の香りが用意されており、意外にも多くの人がホッとした表情を浮かべていた。
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笑いあり、驚きあり、そして感動も詰まった「におい展」。本展を通じて、「におい」が単なる嗅覚の刺激ではなく、歴史・文化・人間関係に深く結びついていることを改めて実感できた。戦国武将が戦略として活用し、発酵食品が地域文化を形成し、フェロモンが人を引きつける。においは時に私たちをリラックスさせ、時に悶絶しながらも、確実に記憶に刻まれるものだ。この「におい展」を通じて嗅覚という感覚の持つ力を再認識し、日常の「におい」に少し意識を向けてみるのも面白いかもしれない。