「若者一人ひとりが主役。”自分ごと化”が地域の自己肯定感を高める秘訣」高齢化率50%超の秋ノ宮で生まれた地域団体『AsoV!va秋ノ宮』の設立ストーリーと関係人口拡大の取り組み【秋田県湯沢市】

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秋ノ宮・若者ミーティングでの一幕(画像:菅さん提供)

秋田県湯沢市の秋ノ宮地区は、温泉地としての歴史と豊かな自然に恵まれながらも、現在の高齢化率が50%、10年後には65%を超える見込みとなっており(湯沢市行政区別福祉基本情報より)、地域コミュニティの維持が課題となっています。この状況を打破するために2024年12月に設立されたのが、若者主導の地域団体『AsoV!va秋ノ宮(アソビバ秋ノ宮)』です。「若者一人ひとりが主役」という基本方針のもと、地域の自己肯定感を高め、関係人口を活用しながら持続可能な地域づくりを目指しています。本記事では、AsoV!va秋ノ宮の立ち上げに関わりながらも、あえて若者に運営を託した、NPO法人こまちハート・オブ・ゴールドのクラブマネージャー菅善徳さんに話を聞きました。

若者がつながれば、地域は変わる。地域プレイヤーの世代交代へ。

秋ノ宮では、地域づくりの中心となる自治組織の高齢化が進み、運営を支える人材の確保が困難になっていました。地域課題が顕在化してくる中で、「若者が主体となる組織が必要ではないか」という声が上がりました。しかし、秋ノ宮には青年会のような若者が自然に集まる場がありませんでした。そこで、市の支援を受けながら、まずは若者がつながるきっかけをつくろうと若者ミーティングを開催しました。

ミーティングでは、初対面の人が多かったため、バーベキューを行いながら交流を深めました。その場では「自分も地域のために何かやりたかったが、どう関わればよいかわからなかった」という声が多く上がりました。そうした対話を重ねる中で、「若者が主体的に動ける環境を整えることで、地域が変わるかもしれない」との思いが広がっていきました。

まずは、集まることが大事。そうすればやりたいことが見えてくる(画像:菅さん提供)

「この流れのなかで、『やりたいことを形にする場があれば、もっと多くの若者が動けるのではないか』という意見が高まり、若者が自由に発案し、実行できる団体としてAsoV!va秋ノ宮が設立されました」と菅さんは振り返ります。

「第一声は黙る」「若者の意見に乗っかる」ベテランならではの関わり方

地域の若者が、自らのアイデアを発信し、実行する場を提供するため、AsoV!va秋ノ宮では年長者やベテランの役割の軸足を「支援」に置き、意見を出しすぎないようにしています。

「ディスカッションするとどうしても経験のある人の声が反映されやすいので『第一声は黙っている』を徹底します。若い人たちの声が大事なので、失敗するのわかっていたとしても、『やりましょう』というスタンスで、そこに乗っかってサポートしていくことを心がけています。年長者たちは、みんなでケガしても大丈夫なようにサポートしていく。子育てと同じですね。歯がゆいところはりますが、若者達が自分で言ったことをやってもらった方が自分ごとになりますし、それが責任感につながって、自信になって、地域の自己肯定感になります」と菅さん。

若者の意見に乗ることが大事、それが自分ごと化するための秘訣(画像:菅さん提供)

AsoV!va秋ノ宮では、ミーティングを通じて地域の理想像を共有し、その実現に向けたビジョンを策定しました。
『秋ノ宮地区を愛する者が幸せに生きていくために、これまでに育まれてきた伝統や文化、地域特性を活かしつつ、積極的に地域活動に参画する社会を目指すとともに、活力ある地域コミュニティの実現と持続可能な社会を秋ノ宮地区から実現すること』

このビジョンは、参加した若者一人ひとりの思いが反映されたものです。「誰かに決められた目標ではなく、みんなで作ったものだからこそ、実現に向けて自分ごととして取り組める」と菅さんは語ります。

課題解決からではなく「理想の未来」からバックキャストとして活動を考える

AsoV!va秋ノ宮の運営では、「課題を解決すること」よりも、「理想の未来を描き、そこから逆算して今やるべきことを考える」ことを重視しています。これが「バックキャスト」の考え方です。

若者ミーティングのなかで、行政から示されたデータを見た参加者たちは、大きな衝撃を受けました。秋ノ宮では、高齢化率が10年後には65%を超える見込みとなっており、急速に進行しています。「共助組織や雪下ろしボランティアが5年後には継続できなくなるかもしれない」などの意見がでました。持続的に地域を支える仕組みのあり方への関心が高まり、「このままではいけない」という強い意識が生まれました。

課題は受け止めつつ、理想の未来からの逆算で活動を作っていく(画像:菅さん提供)

また、「働く場所が少なく、若い世代が定着しにくい」「子育ての環境が不安定で、送迎を支える親の健康が保証されない」といった現実も浮かび上がりました。秋ノ宮には想像以上に多くの不安要素が存在していたのです。

しかし、それを課題解決から考えるのではなく、地域のビジョンからバックキャストして考えていくことがAsoV!va秋ノ宮のアプローチです。これから来年度の事業計画を考えるにあたり、地域資源の活用や地元のお祭りへの関わり、地域内外の人の情報発信、地域内の若者のつながりの強化など、自分たちが描く未来を起点にした活動を計画しています。

「年間1200人も不可能ではない」関係人口とともに地域の未来をつくる

秋ノ宮の人口は約1200人。住民の減少が進む中、地域の閉塞(へいそく)感や孤立感が深まり、外部とのつながりが希薄になっています。この状況を変えるためにAsoV!va秋ノ宮が特に重視しているのが「関係人口」の創出です。

菅さんは「秋ノ宮地域で年間1200人の関係人口の創出を目指しています。これは決して非現実的な数字ではないと思っています。週に20人が地域に関わるようになれば、月に約100人、新しい活気と可能性が生まれます。すでに杏林大学の学生が継続的に関わりを持ち、地域課題の解決に携わっています。若者が訪れることで、地域住民にとっても刺激となり、新たな学びや気づきにつながっています」と関係人口の可能性について語ります。

「関係人口の受け皿はしっかりしています」と菅さんは太鼓判を押す(画像:菅さん提供)

関係人口を増やすことで、地域に新たな経済の循環を生み出すことも視野に入れています。秋ノ宮では、地域課題の解決と経済活動を両立させる「コミュニティビジネス」の構築を目指しています。定期的に地域と関わる人々が小規模なビジネスを展開し、地域の活性化に貢献する仕組みも検討しています。

「秋ノ宮を愛する人々が増え、関係人口とともに地域を育てていくことで、新しい価値を生み出していきたい」と菅さんは語ります。関係人口とのつながりを深め、持続可能な地域コミュニティの実現を目指すAsoV!va秋ノ宮から目が離せません。

関わりしろ


・AsoV!va秋ノ宮が主催・共催するイベントへの参加
・コミュニティビジネスの構築に向けたアセット(人的リソース、ネットワーク、アイデア、資金など)の提供
・現地訪問を通じたAsoV!va秋ノ宮メンバーとの交流、サポートなど 

AsoV!va秋ノ宮 公式オープンチャット 
https://line.me/ti/g2/T-yIqRwPJ40s4anawmxrDZP1Xfz41Ch1Q6m8GQ?utm_source=invitation&utm_medium=link_copy&utm_campaign=default
お電話でのお問い合わせは
0183-55-2277(NPO法人こまちハート・オブ・ゴールド 担当:菅)

「あきたの物語(https://kankei.a-iju.jp/)」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

畠山智行

畠山智行

ローカリティ!エヴァンジェリスト
ふるさと:
宮城県仙台市(出身地) 
秋田県湯沢市(自分で選んで移住した土地その1) 
神奈川県横浜市(自分で選んで移住した土地その2)

何気ない日常がどんなに尊く、感動に満ちているか、そのことに読者の皆さんが気付けるメディアに成長させていきたいと思います!

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