
280年以上の伝統を誇る「壱岐郷ノ浦祇園山笠(いきごうのうらぎおんやまかさ)」。山笠といえば、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている福岡県の博多祇園山笠が有名ですが、博多から高速船で約1時間の長崎県壱岐でも祇園山笠が行われています。
壱岐の最大の夏祭りの一つともいわれ、毎年7月の第4土曜日・日曜日に開催されます。今年は7月26日、27日に行われ、祭り当日と前日の宵祭りは多くの見物客でにぎわいました。なかでも見せ場の「佐賀里の石段登り」では、約1.5トンの山を持ち上げながら階段を登る漢(おとこ)たちは、かけられる力水で熱気も最高潮。最大の盛り上がりを見せます。
目次
博多山笠人形が海を渡って島に来る

「壱岐郷ノ浦祇園山笠」は、1730年ごろに壱岐で疫病が流行し、郷ノ浦の八坂神社に疫病退散を願ったところ無事に流行が治まり、造り酒屋で働いていた福岡出身の杜氏が、故郷の祇園山笠を奉納したのが始まりとされています。
博多祇園山笠が終了して数日、山笠の人形たちはトラックに乗ってフェリーで海を渡り壱岐に向かいます。
「ヨーカイタ」「ヨーサシタ」と盛り上がる最大の見せ場

山笠は、本町流(ほんまちながれ)、下山流(しもやまながれ)、塞流(さいながれ)、新道流(しんみちながれ)の4つの流が舁(か)き山を担ぎ、7月27日9時ごろに塞(さい)神社で出発式をした後、町内の神社で参拝をしながら町中へと巡行します。
最大の見せ場は「佐賀里の石段登り」。約1.5トンの舁き山を担いだ舁き手たちが「ヨーカイタ」の掛け声とともに急な階段に挑み、途中で立ち止まりながらも一歩一歩前へ進む姿に観衆は大歓声。太鼓や唄子が盛り立て、住民はホースやバケツで水をかけて応援します。照り付ける太陽の下、熱気と水しぶきに包まれた石段は迫力満点です。
熱気と一体感で迎えるフィナーレ

新道バス停前では、舁き山同士をぶつけ合う場面も。「ヨイヨイヨイヨイ」と担ぎ上げられ、「ヨーサシタ」と掲げられるたびに観衆も一体となって盛り上がり、拍手が沸き起こります。博多の山笠がスピード感なら、壱岐は石段登りの力強さがあります。壱岐ならではの熱気あふれる祇園山笠は、島民の誇りを感じさせる夏の風物詩です。