大人が前のめりになって聞く420年の歴史。院内銀山の秘密と守り続ける人々の背中に迫る!【秋田県湯沢市】

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▲ガイドの佐藤順子さん

2025年8月23日、秋田県湯沢市の院内地区で、秋田発・地域づくりワークキャンプ「まちあるき」が開催され、筆者を含む大学生6人と湯沢市や院内地区に関連する人たちが参加しました。院内地区は、江戸時代初期から明治時代後期にかけて、日本有数の銀山町として発展した地域です。今もなお、丁寧に保存され、歴史が語り継がれる”院内”の魅力とは…。今回は地元のガイドの方を中心に、院内銀山の秘密や守る大人たちの姿勢についてレポートします。

大人が前のめりになるふたつの理由

佐藤順子さん
会田一男さん

訪れたのは院内銀山史跡、院内銀山三番供葬墓地、御幸坑、岩井堂洞窟(どうくつ)の4か所です。地元のガイド・佐藤順子さんや地域づくり協議会会長・会田一男さんによる案内のもと、まちあるきを行いました。どの場所においても参加した大学生より、同行した大人の人たちが前のめりに話を聞いたり、写真を撮ったりする姿が見られました。好奇心旺盛で新たな発見に素直に感動する大人たちの姿勢が、この街の未来を守っているのではないでしょうか。

▲会田さんのガイドを皆真剣に聞く

そこまで大人が楽しめたのには、大きく2つの理由があると考えます。1つ目は、院内銀山の歴史に隠された秘密です。秋田県の指定史跡にもなっている院内銀山三番供葬墓地では約3000と推定されるほど多くの方が葬られています。中には、子分が親分のお墓を作ったり、好きなものや短歌を石に彫ったりしているものもありました。会田一男さんは、「この時代に遊び心があるっていいことだよね」と、その時代に隠された背景を教えてくれました。

岩井堂洞窟は、縄文・野生・平安時代の三時代からなる複合遺跡で県内では数少ない洞窟遺跡です。洞窟は約80mに及ぶ凝灰岩の露頭に大小4か所(第1~第4洞窟)が並んでおり、いずれも縄文時代に住居として利用されていました。発掘調査は1964(昭和39)年から1976(昭和51)年までに8回行われており、第14層まで確認されているとのことです。ガイドを担当してくださった佐藤順子さんは第8次調査に参加した経験があるそうで、「歴史が好きで、高校時代に所属していたクラブ活動の一環で参加した。かなり下まで掘っていった記憶がある」と仰っていました。

院内の地形については、「山々に囲まれた盆地上の地形は、火山の噴火によってできた、カルデラだと考えられている。これによる火山噴出物が長い年月をかけ固まってできた凝灰石が広く分布しており、「院内石」と呼ばれていて、風化や熱に強く、加工しやすいため、石材などに利用されている」とわかりやすく説明してくださいました。

大人も楽しめる2つ目の理由は、案内してくださった佐藤さんや会田さんの情報量とガイド力です。場所一つひとつの歴史やそこに込められた意味について、丁寧にガイドしてくださいました。時には訪れた場所にある看板を使ったり、さらに、佐藤さんはスケッチブックに絵を書いたりして説明してくださったのです。私たちに伝えたい、少しでも興味を持ってほしいという姿勢が私たちを前のめりにさせたのだと感じています。やはり現地の方からの説明は何よりもわかりやすく、場所に対する熱量を感じ取ることもできました。

また来たいと思ってもらえる院内に

院内銀山は閉山から約70年経っているのにも関わらず、まだ車や人が通れるほど、整備されていました。一時期は”廃墟の世界”と呼ばれていたこの場所がなぜそこまできれいな状態で保存され続けているのか。その背景には、「銀山を守ろう」とする老人クラブのメンバーみなさんの存在がありました。

何人かで集まり、年に数回草刈りなどを行い、場所の維持・保存に貢献しているとのことです。その一方で、雪や災害によってお墓が倒れてしまうこともあり、それを起こすようなことはされていない現状や歴史や場所の保存する継承者の少なさが問題となっています。

人口約1200人、高齢化率50%を超え、少子高齢化が進む中で、若者の少なさが浮き彫りとなっています。老人クラブ員の1人である会田一男さんは「自分たちもいつまでできるかわからない。このままだと草しか生えないかもな」と冗談交じりに、かつ寂しそうに胸の内を明かしてくれました。しかし、今回、筆者は会田さんを中心に、若者や関係人口にあたる人たちが集まり賑わっているのを目の当たりにしました。

「院内がまた来たいと思ってもらえる場所に」今は会田さんたちを軸にした動きですが、大人たちが前のめりになるようなこの輪は、これから広がっていくと筆者は確信しました。長い年月の間守られてきたこのまちの将来と幸福を願わずにはいられません。

秋山咲奈さんの投稿

取材:地域づくり協議会 会田一男さん ガイド 佐藤順子さん
取材地:院内銀山 秋田県湯沢市院内銀山町

ふるさとミライカレッジ×ローカリティ!in湯沢院内

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「ふるさとミライカレッジ」は、秋田県が進める地域づくりワークキャンプです。
今回はカリキュラムのひとつとして「ローカリティ!」が湯沢市院内地区においてワークショップを実施し、参加した大学生たちが地域の人に出会い、祭りや地域の宝、そして日々の営みを取材をし、記事制作を行いました。

その土地に、何か想いを持てば、 そこはあなたの大切なふるさとになります。 大学生のフレッシュな視点で綴られた、地元愛爆発の素敵な記事をご紹介します!

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