“ウマくいく”地域文化継承ー馬術競技から手仕事まで、多面的な馬文化を発信【福島県南相馬市】

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国の重要無形民俗文化財・相馬野馬追で知られる福島県南相馬市で10月、「馬と親しむ日 in 南相馬 2025」が開催され、親子連れや馬の愛好家で大いににぎわった。今年のテーマは「馬と人がより近く、より深く」。馬車や乗馬などの体験型プログラムを通じ、来場者が多面的な“馬の世界”に触れる一日となった。

馬とともにある暮らしを体感

馬は古来より農耕や運搬、戦などで人と共に生きてきたが、モータリゼーションの普及に伴い現代ではその存在を身近に感じる機会が減ってきている。しかし南相馬では、野馬追の伝統や観光、ペットなど、暮らしの中に馬文化が息づく。 会場には、そんな馬と人との関わりを多面的に体感できる企画が並んだ。

馬術競技場では「東北ジュニア・アマチュア選手権2025」を同時開催。障害馬術競技には中学3年生の最年少選手を含む若手が出場し、愛馬とともに日頃の練習の成果を披露した。障害物の落下やミスがあれば減点になるだけに、最後の障害を越えゴールすると“人馬一体”となった演技に観客席から大きな拍手が送られた。

地域の“ウマいもの”でグルメも満喫

会場奥では、馬の雑貨やスイーツなど約50店舗が集う「ノマハラマルシェ」も開催。相馬野馬追のDVDや馬をモチーフにした雑貨、スイーツを扱う店舗が軒を連ねた。手づくりの馬具やアクセサリー、親子で参加できるワークショップもあり、地域の手仕事や文化の魅力を発信する場となった。装蹄師(そうていし)による実演コーナーでは、蹄(ひづめ)を削り形を整える作業に多くの来場者が釘付けになっていた。蹄を守るという繊細な仕事がいかに職人技を要するかを間近に見る機会は貴重だ。

屋根のある全天候型の馬場、覆馬場(おおいばば)に設置されたステージでは国内外の馬術文化を紹介。スペイン馬術の華やかさ、ウエスタン馬術の力強い動きなどが披露され、騎乗者の指示に合わせて馬が方向を変えると、多くの観客が拍手とともにその姿をカメラに収めた。馬が単なる動物ではなく、まさに“相棒”として人と心を通わせてきた歴史と多様性を感じた。

“馬のまち”として未来へつなぐ

統計によると、現在、日本の乗馬人口は6〜7万人で推移している一方、どちらかというと敷居が高い趣味と思われがちだ。しかし南相馬では文化継承や観光振興など、相馬野馬追を通じて、馬とともに歩んできた同地のDNAを次世代に受け継ぐ取り組みが続いている。

野馬追を通じて馬とともに歩んできた地域だからこそ、「馬と生きる文化を受け継ぐこと」その大切さを感じられるイベントとなった。

参考:馬関係資料(農林水産省生産局,2016年)、障害馬術競技(公益財団法人日本馬術連盟)、新たな家畜改良増殖目標等のポイント(農林水産省生產局,2010年)

イベント概要

馬と親しむ日 in 南相馬2025
日時:2025年10月18日(土)・19日(日)
会場:南相馬市馬事公苑(福島県南相馬市原町区)
主催:南相馬で馬と親しむ委員会
協力:日本中央競馬会(JRA)、東北馬術大会実行委員会、東北地区馬術連盟協議会

昆愛

昆愛

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。また、2025年、「津波遺留品の返還事業終了へー東日本大震災から14年、記憶を未来へ【福島県いわき市】」で3回目となる本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を受賞。写真を通じた情報発信の一環として、郡山市(福島県)の市民カメラマンも務める。

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