
株式会社ビーステップ 代表取締役
Takumi Yamaguchi
山口 巧己氏
福岡市天神に拠点を置くWeb、SNSマーケティング事業を展開する株式会社ビーステップは、SNSやWebを活用した集客・採用、ブランディング支援を行うマーケティング会社です。代表の山口 巧己(やまぐち たくみ)さんは、大学時代にフリーランスとして活動を始め、営業を学ぶために就職。しかし9カ月で退職し、再び独立の道を選びました。その歩みの背景には、父の背中から学んだ経営への情熱や、学生時代に味わった迷いと再起、覚悟を決めた日からの挑戦し続けた日々がありました。
父の背中と迷いの学生時代。支えたいと始めたマーケティングへの道
株式会社ビーステップを立ち上げるまでの経緯を教えてください。
起業を志す原点は父の姿でした。父は地方で車屋を営んでいましたが、独立して経営することが珍しかった時代で、応援よりも批判や否定の声を浴びていました。そんな父を見て「自分が集客の力で支えたい」と思い、力をつけるために大学進学を決意しました。
しかし大学2年生では環境の変化や周りの誘惑もあり、遊びに流され、原点を忘れていました。転機は3年生。就職活動のなかで「自分は何のために大学に入ったのか」と問い直し、意識が変わったことで、学生イベントやオンラインスクールでマーケティング、営業を学び始めました。
そこから本気で動き出し、大学4年生で本格的にフリーランスとして活動をスタート。ホームページ制作やMEO(Map Engine Optimization/マップエンジン最適化)、SNS運用を請け負い、紹介で案件を得ることもありました。
卒業後は営業を学ぶために企業に就職。テレアポから即日受注を目指して叩き込まれる日々を過ごしました。背水の陣で挑む先輩たちの姿を見て「覚悟の強さが成果を生む」と理解し、自分自身も独立の覚悟を決めて9カ月で退職。2022年に株式会社ビーステップを設立しました。就職して営業力や組織の仕組みを学んだ経験は、組織を運営していくうえで土台となっています。
フリーランスから活動をスタートされていますが、法人化されたのはなぜですか?
フリーランスとして活動していた頃、周囲から「法人化したら信頼感が違う」と背中を押され、決断しました。
法人化によって取引先との関係は大きく変わりました。フリーランス時代は「個人だから」と大手案件を任せてもらえないこともありましたが、法人化後は自治体や上場企業からの相談も増えました。「会社」として看板を掲げることが、信用そのものにつながると痛感しました。
社名「ビーステップ」の由来を教えてください。
アメリカのことわざ「baby steps to giant strides(千里の道も一歩から)」に由来しています。小さな一歩を積み重ねれば、大きな成果につながる。僕自身、迷いや失敗を重ねながら少しずつ前進してきました。中小企業も同じです。リソースが限られているからこそ、小さく始めて積み重ねることが重要。その思いを込めて「ビーステップ」と名付けました。
事業のスタート当初は順調でしたか?
法人設立から2期目までは1人で事業を進めていたので、孤独を感じることもありました。しかし、大学時代から「遊びをやめ、自分の時間を投資する」生活に切り替えていたので、1人で考え動くことに慣れており、特に大きな問題もなく仕事をしていましたね。小さな一歩を重ねる姿勢は、この頃に培われたものだと思います。
地方に眠る宝を世に届けたい。福岡から挑む価値の伝播

事業内容を教えてください。
WebやSNSの活用によって集客・採用、ブランディング支援を行っています。
戦略から実行まで伴走し、成果を出すことが弊社のこだわりです。例えば「Instagram運用をしたい」と相談された場合、“目的”を徹底的に問い直します。「なぜやりたいんですか?」と相手に問うと「周りがやっているから」と返ってくることもあります。しかし私たちはフォロワー数や見栄えよりも「どうすれば売上や採用につながるか」を考える。それが僕たちの姿勢です。
なぜ地方で事業を展開しているのでしょうか?
地方にはまだ光が当たっていない価値が数多く存在します。伝統工芸、長年続く地域のサービス、優れた商品。その価値は、知られなければ広まらない。広まらなければ売れることはない。そうやって地方の魅力がどんどん衰退していっていると感じています。僕は「いいものが正しく広まる社会」を作りたいと思っています。
東京の大手企業と競合することもありますが、真摯な対応やスピード感、距離の近さで評価されることも多いです。最近では100億円規模の企業と取引する機会もあり、地方から全国水準で戦えていると実感しています。福岡を拠点に活動することは「ローカルから全国へ」という挑戦でもありますね。

地方企業における課題について、どのようにお考えですか?
マーケティング力の不足が課題だと感じています。「いいものを作れば売れる」というのが従来の発想でしたが、価値基準が“モノ・コト消費”から“意味消費”へと移行していることから、現代では市場ニーズを理解しなければ成果は出ません。この考えがまだまだ地方には根ざしておらず、東京などの都市に比べて地方が追い付くことができていない要因だと考えています。
印象的な事例を教えてください。
県内で鉄工業を営まれている株式会社乗富鉄工所さまの事例です。熟練の鉄工職人の技を生かしたキャンプ用品を展開する「ノリノリプロジェクト」において、SNS運用のご支援をしました。

「鉄工所×キャンプ用品」というこれまでにない組み合わせでしたが、質の高さや使いやすさなどを発信。投稿の内容を工夫することでアウトドアに関心がある方々に魅力を届けることができ、フォロワー数は1万人を達成、売上向上に寄与しました。
情報過多の時代に抗う「無駄のないシンプルな社会を作る 」を目指すミッション

将来のビジョンを教えてください。
ビーステップのミッションは「無駄のないシンプルな社会を作る」ことです。現代は情報が氾濫し、誇張や煽りが横行しています。SNS広告やオンライン商材には「価値を生んでいないのに価値があるように見せる」ものも少なくありません。僕自身、学生時代にそうした情報に触れ「これは本質ではない」と気づきました。
本当に良い商品やサービスが埋もれてしまう社会は不幸だと思います。情報が整理され、シンプルで分かりやすく、手に取った人が幸せになれる社会を作りたい。そのためには地方からの挑戦が必要です。東京や大手だけでなく、地方から正しい情報を発信することで、日本全体が健全に成長できると信じています。
一緒に働くクリエイターに求めるものは何でしょうか?
求めるものは二つあります。一つは「マーケティング思考」。制作物を仕上げるだけでなく“クライアントをどう成功に導くか”を考える姿勢です。もう一つは「誠実さ」。嘘をつかず、価値提供を第一にできる人です。
これまで多くのフリーランスや業務委託の方と協働してきましたが、最後まで責任を果たす人は信頼を勝ち取り、結果的に自分の成長にもつながっています。逆に途中で投げ出す人はチャンスを逃す。誠実さはスキル以上に大切な資質です。
役割分担を明確にし、互いに信頼できるチームをつくること。そうした仲間とともに「無駄のない社会」という理想を追い続けたいと思います。
取材日:2025年8月6日
株式会社ビーステップ
- 代表者名:山口 巧己
- 設立年月:2022年9月
- 事業内容:SNSマーケティング事業、Webマーケティング事業
- 所在地:〒810-0001 福岡市中央区天神1丁目1-1 アクロス福岡1F fabbit
- URL:https://www.b-step.net
- お問い合わせ先:https://www.b-step.net/contact/
この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。




