住友不動産株式会社は、分譲マンション、オフィスビル、注文住宅、商業施設など、都市開発と住まいづくりを幅広く手がけてきた総合不動産会社です。
同社で分譲開発事業本部 戸建事業部 第二課長兼事業企画部 第二課長 西河大貴(にしかわ・ひろき)さんは、2008年の入社以来、マンション販売の現場、営業企画、海外事業、商業施設、新規事業など、さまざまな事業の企画に携わってきました。
今回は、首都圏の住まい選びが大きく変化するなかで、同社が「CITY GARDEN(シティガーデン)」という新事業を通じてなぜ戸建てという選択肢を提案し、どのような価値観のもと、どのような未来を見据えているのかを伺いました。

目次
首都圏住宅の価格と広さの課題にこたえる。子育て世代の住まいに新しい選択肢を
住友不動産が展開する「CITY GARDEN」は、2026年2月にリリースされた「分譲宅地+注文住宅」の新しい戸建て住宅ブランドです。都市で暮らす人たちに新たな住まいの選択肢を届ける事業です。
西河さんは、CITY GARDENについて、単に戸建てを販売する事業ではなく、都心近郊で暮らし続けたい家族に対して、利便性、広さ、安心安全を兼ね備えた住まいを提案する取り組みだと説明します。背景にあるのは、首都圏の住まいをめぐる大きな変化です。西河さんは、現在の住宅市場について次のように語ります。
「首都圏のマンションの価格が上がって、かつ面積も狭くなっている。広さを求めると郊外に行かないといけない。もしくは、広さを諦めるという選択になってくると思っています」
共働きで、子どもがいて、都心近郊で暮らしたい。そうした世帯にとって、住まい選びの選択肢は狭まりつつあります。CITY GARDENは、こうした課題に対して、戸建てという形で応えようとする取り組みです。
プラス30㎡でマンションではできない動線
西河さんが強調するのは、マンションと同等価格帯で提供し、暮らしに必要な余白をつくれることです。
「マンションにプラス30㎡あるというのは、大きいと思います」
30㎡は、単なる面積としてだけではありません。リビングの開放感、収納量、家事動線、帰宅後の手洗い動線、ファミリークローゼット、季節物をしまう小屋裏収納など、毎日の暮らしを楽にするための余白です。西河さんは、こうした余白があることで、マンションでは実現しにくい暮らしの動線や収納計画も取り入れやすくなると話します。
「家に帰って、洗面所で手を洗ってからリビングに行きたいよね、といった動線も、この面積があればできる。そして、やっぱり収納ですよね。最近だとファミリークローゼットといって、家族全員の衣類や小物を一カ所にまとめて収納する大型クローゼットの需要が高まっています。洗濯家事の時短や、居室の収納スペースを削減できるというメリットがあり、これも実現可能になります」
住友不動産が磨いてきた分譲事業のノウハウを戸建てに
CITY GARDENを展開する背景には、住友不動産が長く磨いてきた分譲事業の力があります。西河さんは、同社の分譲マンション事業について、「商品企画力、外観、エントランスの作り方、間取りに優位性があった」と振り返ります。
分譲マンションで培ってきたのは、単に建物をつくる力ではありません。土地を見極め、顧客のニーズを読み取り、商品として成立させ、価値を届ける力です。そのノウハウを、戸建てという領域にも展開しようとしているのがCITY GARDENです。
挑戦的な取り組みに関わり続けたキャリア
西河さんは2008年、住友不動産に新卒入社しました。当初は用地仕入れの部署に配属されましたが、入社から数カ月後にリーマンショックが起き、マンション営業の現場に出ることになります。
その後、分譲マンションの販売立ち上げや営業企画を経験しました。モデルルームをつくり、営業トークを整え、価格を決め、販売に必要なツールを用意する。住まいを商品として届けるための実務を、現場で担ってきました。
その後は、中国・大連でのマンション事業に携わり、帰国後は六本木五丁目の再開発、有明ガーデンや羽田エアポートガーデン、ホテル関連、新規事業など、幅広い事業の企画に関わりました。
西河さんが就職活動の時点で、同社にひかれていたのは、商品企画の仕事でした。
「文系で商品企画ができる業種はあまりないと思っていました。仮説を立てて、それを形にして、試してみて、当たるかどうかを見る。そういう仕事がすごく好きだと感じたんです」
これは、CITY GARDENで実行しています。市場の変化を読み、顧客の悩みを捉え、土地や建物の条件を組み合わせ、実際に商品として世に出していく。西河さんは現在、戸建事業部の課長であると同時に、新規事業の立ち上げの役割も担っています。
「戸建て事業、新規事業の両方を担っていますが、考えるのは好きなので、なんとか成果を出したいと思っています」
戸建て事業を次の成長の種にする挑戦
住友不動産にとって、CITY GARDENは単なる商品ラインの追加ではありません。西河さんは、同社が分譲マンション以外の販売事業をつくっていく必要性を語ります。
同社では2025年10月、もともとの住宅分譲事業本部を分譲開発事業本部へと改称しました。西河さんは、この変化について次のように説明します。
「住宅に限らず、分譲できるもの、もしくは販売できるものをどんどん作っていこうじゃないか、という会社全体に関わる話として舵を切っています」
分譲マンションは、同社が長く磨いてきた強い事業です。しかし、10年、20年、30年という長期の視点で見れば、少子化や人口減少、住宅市場の変化に向き合う必要があります。
西河さんは、現在の挑戦について「分譲マンション事業が好調だからこそ取り組み始めた」と話します。
厳しい状況に追い込まれてから新しいことを始めるのではなく、既存事業が強い今だからこそ、次の成長の種をまくという同社の姿勢が表れています。
住まいの選択肢を創り出し、社会を前に進める
住友不動産の姿勢は、住友グループに受け継がれる「浮利を追わず」という考え方に影響を受けています。目先の利益だけを追うのではなく、着実に積み上げ、成長しながら利益を出していく。その姿勢が、同社にとって重要だと話します。
西河さんは、次のように語ります。
「非常に前向きに、新しいことに取り組もうと、みんなで考えている。会社として着実に前進していると感じています。」
分譲マンションで磨いた力を持ちながら、5年後、10年後に向けて新たな事業の種をまく。CITY GARDENの取り組みは、住友不動産がこれからの都市生活に対して、どのような住まいの選択肢を創り出していくのかを社会に対して示す挑戦です。
最も印象に残った言葉
非常に前向きに、新しいことに取り組もうと、みんなで考えている。会社として着実に前進していると感じています。
聞き手、執筆:木場晏門
※写真はすべて住友不動産株式会社提供
情報
会社名:住友不動産株式会社
取材対象者:分譲開発事業本部 戸建事業部 第二課長兼事業企画部 第二課長 西河大貴さん
経営理念:「信用を重んじ、浮利を追わず」
設立年月:1949年12月
事業内容:ビルの開発・賃貸、マンション・戸建住宅の開発・分譲、注文住宅・リフォーム、不動産流通、ホテル、商業施設、イベントホールなど
所在地:東京都新宿区西新宿二丁目4番1号 新宿NSビル
URL:https://www.sumitomo-rd.co.jp/






