ローカリティ!時代の開拓者たち

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人の心をデジタルでつなぐ。MIXIが挑むコミュニケーション「Me Time」を「We Time」に。「誰かと驚き、楽しみ、語り合う」【東京都渋谷区】

6 min
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取締役 上級執行役員 CFO 島村恒平さん

SNS「mixi」、スマートフォンゲーム「モンスターストライク」、子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」。多くの人が一度は見たり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。

これらにスポーツ事業などを加えた株式会社MIXIの事業は、一見すると幅広く、共通点が見えにくいかもしれません。しかし、その根底には「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」「『心もつながる』場と機会の創造。」という一貫した軸があります。

取締役 上級執行役員 CFO(最高財務責任者)の島村恒平(しまむら・こうへい)さんは、経営企画、経営管理、M&A、人事、人的資本経営を通じて、MIXIの事業と組織を支えてきました。デジタル技術やAIが進化し、人が個の世界に閉じこもりやすくなる時代に、MIXIはどのように「心もつながる」場をつくろうとしているのでしょうか。島村さんの歩みとともに、MIXIが挑むコミュニケーションの未来を聞きました。

多様な事業を貫く、コミュニケーション創出の軸

MIXIの事業は大きく三つの領域に分かれています。一つ目は「モンスターストライク」を中心としたデジタルエンターテインメント領域。次に、千葉ジェッツやFC東京などのスポーツチーム運営、公営競技に関わるスポーツ領域。さらに、「家族アルバムみてね」を中心としたライフスタイル領域です。

ゲーム、スポーツ、家族向けサービス。一見すると共通点が見えにくい事業かもしれません。しかし島村さんは、三つの事業領域の根底には一貫した軸があると語ります。

「家族や友人など人とのコミュニケーションを豊かにしていく共通点を持っている事業を展開しています。たとえば『みてね』は写真をきっかけに祖父母や親族との会話が生まれます。スポーツ観戦も、家族や友人と一緒に応援し、喜びや悔しさを分かち合えます。『モンスト』は友達同士が4人ぐらいで居酒屋や喫茶店で、ああでもないこうでもないって盛り上がる設計がされています。私たちは一人で遊ぶものはつくらないんです」

MIXIは、一人で完結する体験ではなく、誰かと一緒に楽しむことで価値が高まる体験をつくってきました。その考え方は、Purpose「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」、Mission「『心もつながる』場と機会の創造。」にも表れています。

ミッション達成に向けた意思決定の軸を示すMIXI WAYには「ユーザーサプライズファースト」を掲げ、Valuesとして「発明・夢中・誠実」を大切にしています。

多様に見える事業は、いずれも「人と人の心がつながる場」をつくるための取り組みなのです。

世界を見つめる視点から、MIXIの幹をつくる仕事へ

島村さんの原点は、学生時代にあります。大学2年生の時、アメリカ同時多発テロ事件、9.11が起きました。島村さんにとって、この出来事は世界の仕組みと自身がやりたい仕事を考えるきっかけになったと言います。

「世の中の悲惨な状況をきちんと明示することで、世界を変えるような仕事がしたいと思って、メディア系の企業に進もうと考えました」

入社したのは有線放送サービスを提供する株式会社USEN(現U-NEXT HOLDINGS)。
しかし配属されたのは、希望とは異なる経営企画の部署でした。最初は戸惑いもありましたが、会社の仕組みを学ぶうちに、経営を支える仕事に面白さを感じるようになります。

その後、いくつかの職歴を経て、島村さんは2016年にMIXIに入社します。

当時のMIXIは、「モンスト」が大ヒットを遂げ、それまでのSNS「mixi」の会社から大きな転換期を迎えていました。

「会社の幹になるような考え方を、仲間と一緒につくっていけるんじゃないかなという感覚がありました」

MIXIの幹をつくる。その思いは、まず経営管理の仕組みづくりへと向かっていきました。

MIXIらしい事業を生むために、経営判断の土台をつくる

MIXIに入社してから、島村さんがまず取り組んだのは、経営管理の仕組みづくりでした。当時、会社全体の数字や各事業のKPI、つまり目標に近づいているかを見るための指標は経営幹部に報告されていたものの、事業の状態や目指す方向について、共通の前提をもって議論する仕組みが十分ではありませんでした。

「『稼ぎ頭』になる事業の資金をどこに投資し、どこを育てるのか。赤字をどこまで許容し、会社全体としてどのシナリオを描くのか。それを共有しなければ、個々の事業が思い思いの計画を立てるだけになってしまいます。そこで、事業ごとの利益、KPI、予算、稟議の仕組みを整え、幹部が同じ数字を見て議論できる状態をつくりました」

数字は、単なる管理の道具ではありません。どの事業に期待し、どこに投資し、どの未来を目指すのかを共有するための言語なのです。島村さんは、MIXIが新しい事業を生み続けるために経営判断の前提をそろえていきました。

後年、MIXIがコーポレートブランドのリニューアルを行い、現在のパーパスやミッションを言語化していった際島村さんは、会社の軸が「コミュニケーション」にあると腹落ちしたといいます。

「『人とのコミュニケーションを大事にするために存在している』というところから、会社として表すべき価値観をパーパスやミッションとして言語化できた時に、つくりたいものができたと思いました」

経営管理の仕組みを整え、会社の軸を言語化する。両方が、MIXIの幹をつくるために重要な仕事でした。

人への投資でMIXIらしい事業を生む

取締役として人事領域も担当する島村さんが、現在向き合っているテーマの一つが人的資本です。

「我々のようなソフトウェアの会社だと、物の資産があまりない。『人か金』しかないんです」

ソフトウェアやサービスを生み出す会社では、「人」が価値を生み出す源泉になります。CFOとして財務を担う一方、人事も担当する島村さんは、人への投資をどのように事業成長や企業価値につなげていくのかを重要なテーマとして取り組んでいます。 

近年、企業には財務情報だけでなく、サステナビリティや人的資本についての開示も求められるようになりました。島村さんは、人事にも外部に説明する視点が必要になっていると話します。

「『社員の給料を10万円増やしました、営業利益はいくら増えますか』という問いに、人事は答えなきゃいけない」

人への投資と利益が単純に結びつくわけではありません。島村さんは、人事戦略を経営や財務とつなげ、人的資本のKPIとして捉え直していきました。

「コミュニケーションを豊かにするサービスを生んでなんぼなんです。それを生める人たちがきちんと育っているかがKPIになっています」

MIXIらしいサービスを生み出せる人材を育て、彼らが挑戦し続けられる環境をつくることです。その挑戦が新しい事業を生み、次の成長につながっていきます。人的資本を財務や事業創出につなげる取り組みは、MIXIが未来の事業を生み出し続けるための土台になっているのです。

数字の先にある人の意思は、未来の事業を動かす

MIXIらしいサービスを生み出すには、一人ひとりが自分の意思をもって考えることが欠かせません。島村さんが数字を分析する時にも、大切にしているのはその奥にある人の意思です。

「数字を単に見るんじゃなくて、その背景にあるものを読み取る力は大事だと思っています」

数字の背景には、現場の判断や挑戦、そこに込められた意思があります。数字は結果です。その奥には必ず「なぜそうしたのか」「何を目指したのか」という人の意思があります。

こうした仕事観の根底にあるのが、島村さんの座右の銘です。

「我思う、ゆえに我あり」

哲学者デカルトの言葉は、島村さんにとって仕事をするうえでの姿勢そのものです。自分はどう考え、何を目指すのか。その意思がなければ、数字を分析しても、次の判断にはつながりません。

「意思をもたないとだめだなと思うんです。こうやりたい、こうやるべきだという意思があって、初めて数字の分析にも意味が出てくるんです」

AIが進化し、仕事の一部が自動化されていく時代だからこそ、意思をもつことが必要になる。島村さんはそう考えています。

「『AIではこういう結果が出ているけど、私はこう思っています』と言えたら、仕事ができています。状況判断する力と、意思をもつ力は絶対に養ってほしいです」

MIXIが届ける幸せな驚きは、人と人の心を動かす

MIXI WAYに掲げられている「ユーザーサプライズファースト」は、MIXIの価値観を語るうえで欠かせない言葉です。一般的には「ユーザーファースト」という言葉があります。ユーザーを第一に考える姿勢です。しかしMIXIが大切にしているのは、その一歩先です。

「ユーザーを第一に考えることも大事ですが、うちは想定を超えて驚かせるところまでやらないとコミュニケーションは動かないと考えています。ユーザーを動かすには幸せな驚きがなきゃだめだよね、というのが我々の考え方です」

何もないところから、コミュニケーションは生まれにくい。感動や驚きがあるから、人は誰かに話したくなる。心が動くから、会話が生まれる。島村さんは、そこにMIXIの思想を見ています。

一方で、テクノロジーの進化は、人を孤独にする可能性もあります。夫婦が同じ部屋にいながら、それぞれ別々に動画を見る。SNSでは相手の顔が見えにくくなり、誹謗中傷が激しくなる。AIが漫画やドラマを大量につくるようになれば、コンテンツそのものは増えても、人との共通の話題になりにくくなるかもしれません。

「『パーソナライズ』が進む社会に対して、MIXIは『ソーシャライズ』の価値を大切にしたい。一人で完結する『Me Time』ではなく、誰かと過ごす『We Time』にこそ、価値があると考えてます。MIXIが存在することで、どんなにテクノロジーが進んでも、人とのコミュニケーションがある世界になると思います」

デジタルで、人の心はつながるのか。

MIXIの答えは、デジタルを通じてユーザーに幸せな驚きを届け、人と人の心が動く場をつくり続けることです。 

次の世代が夢を持てる社会。誰かと驚き、楽しみ、語り合える未来を実現する

島村さんが見つめている未来は、MIXIの成長だけではありません。

もちろん、MIXIをより大きくし、世界中で人のコミュニケーションを豊かにするサービスを複数展開していきたいという思いはあります。しかし、その先には、次の世代が夢を持てる社会を残したいという思いがあります。

「後輩たちが夢をもって挑戦できるような下地を残しておきたいと思っています」

資本市場はアメリカに集中し、AIや巨大テック企業の存在感はますます大きくなっている。日本に生まれた子どもたちや後輩たちが、未来に期待をもてる社会をどう残していくのか。

注目しているのは、漫画やアニメ、コンテンツという日本の強みです。その力を生かし、新しい産業をつくっていくことが必要だと島村さんは考えています。

「日本に生まれてきて申し訳ないな、と思いたくない。子どもや後輩が期待を持てる日本を残したいです」

MIXIが挑むのは、テクノロジーが進んでも人とのコミュニケーションが失われない世界。誰かと驚き、楽しみ、語り合える体験。次の世代が、未来に夢を持てる社会。その実現に向けて、MIXIはこれからも「心もつながる」場と機会をつくり続けていきます。

もっとも印象に残った言葉:
「『パーソナライズ』が進む社会に対して、MIXIは『ソーシャライズ』の価値を大切にしたい。一人で完結する『Me Time』ではなく、誰かと過ごす『We Time』にこそ、価値があると考えてます。MIXIが存在することで、どんなにテクノロジーが進んでも、人とのコミュニケーションがある世界になるんじゃないかと思います」

聞き手:丸山夏名美 書き手:天野崇子
※写真はすべて2026年6月15日丸山夏名美撮影

企業情報

会社名:株式会社MIXI
取材対象者:取締役 上級執行役員 CFO 島村恒平さん
設立年月日:1999年6月3日
Purpose:豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。
Mission:「心もつながる」場と機会の創造。
MIXI WAY:ユーザーサプライズファースト
Values:発明・夢中・誠実
事業内容:スポーツ、ライフスタイル、デジタルエンターテインメント、投資
所在地:東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア36F
URL:https://mixi.co.jp/

天野崇子

天野崇子

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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