ホテルマンから一転フローリストの世界へ。情熱と遊び心で、花と異素材のアート作品を生み出す【東京都大田区】

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株式会社道道 代表取締役

Yukari Fukuhara
福原 由香里氏

花を通して、世界観とストーリーで見る人々の心を動かす空間演出やイベントを行う株式会社道道。代表取締役の福原 由香里(ふくはら ゆかり)さんは、接客業のホテルマンから花に関わる仕事を行うフローリストに転身し、日本とヨーロッパの老舗花店で修行をしたという異色の経歴の持ち主です。花と異素材を組み合わせたアート作品で見る人を楽しませようと日々奮闘する福原さんに、これまでの経緯や現在の活動、今後の展望などについてお話をうかがいました。

ホテルの従業員時代に魅了された装花。その後フローリストの世界へ

立ち上げまでのキャリアを教えてください。

もともとは、東京ディズニーランドの隣に位置するオフィシャルホテルで接客業をしていました。そのホテルでは結婚式が多かったこともあり、ブーケや会場を飾るたくさんの美しい装花に触れたほか、それらをうれしそうに写真に収める人たちの姿を見て、「想い」を「形」で表すことのすばらしさを知りました。
それから花に関する修行をするため、東京で100年を超える老舗生花店に転職。30歳を迎える前にワーキングホリデーを利用してヨーロッパに渡り、イギリス、フランス、ドイツで同じく歴史のある老舗花店などで働きました。
帰国後は東京都大田区にある観賞用の花きを扱う中央卸売市場の大田市場で働きました。その後、花屋をいくつか経験した後の2020年に「花と笑いとサプライズ」をモットーに、前身となる「dodotokyo」を創業し、2022年に株式会社道道を設立することとなりました。
会社名を「道道」としたのは、私は「剣道」に、花屋修行時代に同僚だった共同創業者の西尾は「弓道」に打ち込んでいた経験があり、どちらにも共通する武道の精神を大切にしたいと考えたからです。

ヨーロッパ滞在中に経験した花の文化は、日本とはかなり違うものでしたか?

そうですね。ヨーロッパでは「花」は日常生活の一部。野菜と同じように生活必需品になっています。普段から自宅に花を飾り、友だちの家に遊びにいくときに花を持って行くのも当たり前なので、花屋に行く頻度は日本に比べてとても多いと思いました。また、バレンタインデーなど特別な日には、恋人同士の間だけではなく、会社で従業員に花を配ることなどもあって、購入する量も多くて驚きました。
一方、日本は欧州に比べて種類が豊富で枝ものが多く、花にも四季の移り変わりがあるのが特徴です。また日本では、装飾する際にストーリーを考えたり、それに特別の意味を持たせたりすることがあります。会場全体だけでなく、テーブルごとに配慮して行うような手間暇を惜しまず取り組む文化やおもてなしの精神がフラワーアートにも反映されていると、ヨーロッパの人にはとても驚かれました。ヨーロッパから帰国したのも、それらの特徴にひかれたからで「花を極めるなら日本で」という想いがあったからでした。
日本でも冠婚葬祭以外に、生活の中でもっと「花」を楽しむ文化が広まるように、これからも活動をしていきたいと考えています。

花と異素材を使ったフラワーアート制作。根底で支えているのは武道の精神

start flowers

現在の活動について教えてください。

花と異素材を組み合わせた空間演出をメインに活動しています。基本的には企業さまからのご依頼で作品を作ることが多く、イベントやウェディングはもちろんのこと、オフィスアートやワークショップにも対応しています。案件によっては生花だけでなく、造花、ドライフラワーも使うことがあります。
そのほか、日本の伝統文化・職人文化をとくに若い人にもアピールするため、しめ縄や門松をアレンジした作品を職人と協力して新商品を開発したり、花と着物が融合したファッションショーなどのイベントを定期的に開催したりしています。

「遊び心」を感じる作品が多いですが、アイデアはどのように生まれているのでしょうか?

クライアントさまへの丁寧なヒアリングの中からアイデアが生まれることがよくあります。作品の制作過程においては、既成概念や先入観(花は下から生えるなど)をできるだけ持たず、自由な発想で作品のイメージを考えるよう心がけています。
また、普段ホームセンターや雑貨店など身近な場所で発想が湧く場合もありますし、その場所にはどんな雰囲気の作品が合うのかプライベートで出かける際、どんな大きさのものをどこに設置できるかなど、日頃から常にアイデアを考える練習をしています。
長く展示される場合などには、作品に季節に応じて変化をつけられるよう、飾りの一部の付け替えができるものを提案することもあり、状況に応じて最適と思われるものを考えています。

企業案件だけでなく、地域貢献活動にも積極的に取り組んでいますね。

現在アトリエを構えている京浜島は、花の取り扱いが日本最大級の大田市場に近い上に、工業地帯で周りに住民がいないため、切削、溶接、塗装作業などものづくりを行う職人にとっては最適な場所です。
さらにdodotokyoアトリエ建物のオーナーには「ものづくりをする人にはぜひ来てほしい。花や植物を活かして新しいことに挑戦し、常にクリエイトしているdodotokyoを応援します」と言っていただきました。
京浜島は工業地帯で産業廃棄物処理企業も多く立地し、少し殺風景なイメージを持つ人も多くいます。このようなイメージを変えるため、私たちは装飾の素材として廃棄物などを使用してアップサイクルアートを制作することで、捨てられてしまうものに新たな価値を生み出しています。これは、普段から花と異素材を組み合わせていたアート作品空間装飾を手掛けている私たちにとって、たいへん意義深いことです。
この地に集まる廃棄物や地域特有の素材を再利用して、京浜島を花とアートであふれる美しい島にしようと、「KEIHIN Flower-Art Walk Fes 2025」を企画しました。企業様の敷地内に花や植物と異素材を取り入れたお庭を設置し、京浜島内を歩けばたくさんの花に出会えるというこの企画は、別名「京浜島道庭計画」とも呼んでいて、地元京浜島の企業様と協力して進めています。地元の関係者や企業様からは京浜島の活性化のための「島おこし」にもつなげたいと期待されているところです。2025年11月1日に公開となる予定です。

創業したお二人が培ってきた武道の精神は、何かに生かされていますか?

常にお客さまや花に対して、正面から全力で向き合い、やり始めたことは最後まであきらめない姿勢は、武道から学んだと思います。
また、アート作品は一人の力ではどうにもならないものばかり。剣道の団体戦で培った、チームワークを大切にする経験が今でも生かされています。

「花」をベースにやりたいことが盛り沢山。たくさんの人によろこんでほしい

一緒に働くクリエイターに対して求めることはありますか?

とにかく楽しみながら取り組んでほしいということです。アイデアも広がり、いいものを作ることにつながると思います。
またバックグラウンドが違うクリエイターさんとも協力して作品を作るので、自分だけでは気が付かなかったようなアドバイスをもらえることがあります。そういった自分とは異なる意見を取り入れながら、刺激し合える関係性を作れる方がいいですね。

読者のクリエイターに対して一言メッセージをおねがいします。

生花や植物を使ったクリエイト作品が意外と少ないことに最近気が付きました。とくに男性のクリエイターは花にあまり興味がなく、よく知らない方もいるようですが、花や植物の持つ可能性は無限大です。クリエイターといっても幅広いとは思いますが、まずは花や植物に少しでも興味を持ってほしいと思っています。
花はどんなものとも組み合わせができる素材なので、新しいものをコラボして生み出してみたいクリエイターの方がいましたらぜひご連絡ください。

今後の展望についてお聞かせください。

「花」に特化した「花のホテル」「花の学校」「フローリストが作るウェディング」「道庭活動全国展開」など、やりたいことは盛り沢山です。特に、現在京浜島で行っている「道庭計画」は地域素材を使って「島おこし」につなげられる活動でもあるため、いろいろな方から注目を集めているところです。
いつかは、クライアントさまからの依頼ではない自作のアート作品を制作し、写真集も出したいと考えています。花を通したあらゆる活動を通じて多くの方によろこんでいただきたい、それが私たちの夢です。

取材日:2024年8月25日

株式会社道道

  • 代表者名:福原 由香里
  • 設立年月:2022年9月
  • 事業内容:装飾用フラワーアートの企画・制作
  • 所在地:〒143-0003 東京都大田区京浜島2-13-11
  • URL:https://dodotokyo.com/
  • お問い合わせ先:090-4755-2666

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

愛智なおゆき

愛智なおゆき

ローカルの魅力を再発見する活動に興味を持ちハツレポーターとして参加。2023年末まではエンジニアとして電気機器メーカーにて技術開発業務を担当。最近の関心事は「現代社会の行く末」。ローカリティ!では「ここにしかないもの」、「どんな人にもあるストーリー」の魅力を伝えられたらうれしいです。

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