「もっと安く、もっといい家を」。ひとつの信念が変えた建築の常識【新潟県新潟市】

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エクセルホーム有限会社 代表取締役

Makoto Kotera
古寺 誠氏

100年以上も続く表具店から建築・不動産へと事業転換した新潟のエクセルホーム有限会社。コロナ禍に大きな転機を得たと話す代表の古寺 誠(こてら まこと)さんは事業転換時に不慣れな仕事を体当たりでこなしてきたと話します。転換時の思い、会社のピンチ、全国展開を目標としている土地活用パッケージなど、さまざまな側面のお話を伺いました。

100年企業からの転身。「もっといい家を」の原点

御社の成り立ちを教えてください。

そもそもは祖父の代から100年以上も続く、建具・襖・障子・網戸などの新調・張り替えを行う古寺表具店を営んでいました。そこに不動産部門を作って、しばらく並行していたのですが、今から30年ほど前に建築と不動産だけでやっていくことを決め、事業を整理して今にいたるという感じです。

大きく舵を切るきっかけは何だったのですか?

表具店には内装業的な側面もあり、ハウスメーカーの下請けをしていました。1年間で70棟も担当すると、メーカーサイドのいろいろな実情が見えてきます。そこで生まれたのが、「もっと安くいい家を作れるのではないか?」という疑問。そんな会話を兄としている中で、僕が建築士の資格を取得したことがきっかけですね。

内装を担当するのと、実際に家を建てるのではだいぶ違いがあり、当時戸惑いや苦労も多かったのでは?

すべてが独学だったのでわからないことは周囲の諸先輩方に聞いて、それを実践・改善していくことの繰り返しでした。人が10年かかって覚えるところを1〜2年で頭と体にたたき込む。そんな感じでした。

ピンチからヒットへ。土地活用の確立と拡大

建築の仕事はすぐに軌道に乗りましたか?

始めた当初は、まだギリギリバブルが弾ける前で、営業が下手でもなんとか仕事があるという状態でした。しかし、バブル後はなかなか厳しくなり、アパートへのポスティングや新聞折り込み、ハウジング専門誌への出稿を行うことで、ポツリポツリとご依頼をいただいていました。そこから新型コロナウイルスの影響で一気に流れが変わったのです。

コロナ禍となり、どのような変化があったのですか?

新築の申込みがほぼなくなってしまいました。2024年の上半期くらいまでは何をしても売り上げにつながらない。そんな時期が続きました。
そんな中で注目が集まっていたのが、空いている土地に戸建ての賃貸住宅を作り、貸し出す土地活用。弊社の今の主力となる商品でした。

土地活用のパッケージはコロナ禍に思いついたアイデアなのですか?

いえいえ、ずっと以前からありましたが、偶然が重なって日の目を見ることになったんです。実は、東京の不動産会社から「新潟にある空き地に建物を建てたいと考えている投資家がいる。見積もりがほしい」というメールが来たんです。メールに返信をしたら、返事が来て、最終的に請け負うことに。これが新潟市内の一等地の土地活用でした。
その投資家さんからこの事例を聞いた別の投資家さんを紹介いただき、今度は別の場所で土地活用。「メールをもし見過ごしていたら?」「メールに返信していなかったら?」「そもそも僕のところにメールをしていなかったら?」本当にタイミングってすごいなって思いましたね。

なぜこの仕組みが選ばれるのか。支持される理由と強み

土地活用のパッケージは新潟県内のみで展開されているのですか?

いえ、新潟のみならず、福島県、千葉県、山形県、三重県、愛媛県、香川県と全国各地で賃貸住宅をつくっています。この土地活用、空き地対策が喜ばれている最大の理由は入居率の高さにあります。それぞれが戸建てになっていることでプライベートが保たれていることやペットとの同居が可能なこと、Wi-Fiが使い放題で、一般の一戸建て住宅と同じくらいの広さの浴槽などが高く評価され、どこの物件も満室率95〜100%とほぼ空き部屋なしの状況がずっと続いています。

ほかに、このパッケージのどういった点がよかったと思われますか?

商品自体の魅力もありますが、現在の時代背景も大きく影響していると思います。不景気でなかなか自分の持ち家を建てるのが難しくなってきています。だからこそ、土地もなかなか売れなくなってきている。そんな悪循環に、満室率の高い賃貸という商品がマッチしたのではないでしょうか。

パッケージには表具店時代の経験は生きていますか?

もちろん建築業の経験が生きているのは当然ですが、表具店で内装をしていたことも生きています。僕が足で稼いだ仕入れルートがパッケージのキーになっています。同じことをほかの会社さんでやろうとしたらおそらく一棟1,000万円ほどするはずです。それが弊社だと750万円で建てられる。共同で木材などを購入できる独自ルールを確立していることで大きくコストをカットできるわけです。エクセルホーム創業時の思い、「もっと安くいい家を」を体現化している商品だと思います。

人を生かす経営。ご縁と信頼を軸に

御社の事業内容を教えてください。

土地活用の事業がほぼウエイトを占めています。ほか、新築・リフォーム、不動産分譲に戸建て販売です。
ありがたいことに土地活用に関しては何から何まで弊社に一任していただけることがほとんど。一方で新築やリフォームなどは膝を交えて、密な打ち合わせが必要です。適材適所、必要なところに人材を割く形で僕を含めて6人で今は仕事に臨んでいます。大工さんなどはすべて業務委託という形で外部に出しています。

業務委託にしている理由は?

少しでも商品を安く提供するためです。スタッフ数が増えると固定費がかかるじゃないですか。それだったら設計士だって、大工さんだって、職人さんだってさすらいの方に依頼したほうがいいと思っています。現に今一緒にお仕事している大工さんは神奈川の方。新潟の現場が終わったら沖縄に行き、そのあとは鶴岡…と、全国を回っているそうです。弊社だけではなく、こういったスタイルを取る会社さんが増えてきているのだと思いますよ。

古寺さんがお仕事をされるうえで大切にしていることを教えてください。

とにかく人のご縁です。新築やリフォームの依頼でいらっしゃる方にはとにかくお会いしてご要望をひたすら聞く。ヒアリングを受けて、弊社でできることを提案する。何がどこまでいくらで実現可能なのかをお伝えしています。
さきほどの投資家の方にこんなことを言われたことがあります。「古寺さんは人と会ってその真摯な対応で徳を積んできたんだ」と。やはり人と人の出会いがあって、つながっていくことで生まれるものはいっぱいあると思います。ビジネスの世界でいえば、売り手がいて買い手がいて借り手がいる。誰かが得するのではなくて、三方良しじゃないとダメだと常に思っています。普段のところを評価していただいたような気がしてうれしかったですね。

次なる展望。「古寺ホーム」と全国戦略

今後の目標を教えてください。

土地活用のパッケージをより広い地域に、全国に広げていきたいというのが目標です。そのためにエクセルホームの代理店をつくっていこうと今は考えています。某大手住宅メーカーのように発展できるようにという意味合いも込めて、今年中に社名を「古寺ホーム」と変更しようとしています。全国にいるであろう家を建てられない方々に、戸建てに住む楽しさを提供していきたいですね。

どういった方とお仕事をご一緒したいとお考えですか?

自責の経営者ですね。すべては自己責任だと公言しているような方と三方良しな関係性を保ちながら、人のためになるお仕事をしていきたいです。

取材日:2025年7月15日

エクセルホーム有限会社

  • 代表者名:古寺 誠
  • 設立年月:1990年3月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:建築・空間デザイン・土地活用
  • 所在地:〒950-1214 新潟県新潟市南区上下諏訪木854−7
  • URL:https://excel-h.jp/
  • お問い合わせ先:025-372-4736
  • Email:info@excel-h.jp

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

コジマタケヒロ

コジマタケヒロ

大学時代からライターとして文筆。大学卒業後は、新潟県内でエリア情報誌を発行する出版社に就職。編集に従事し、エリア情報誌の編集長や各種ムック本制作を担当する。2019年よりフリーランスに。出版社時代から得意ジャンルとしている日本酒や地域のグルメ情報を中心に新聞やウェブ媒体に執筆している。※この記事を書いた人にお仕事をお願いしたい場合には、サイトボタンより直接クリエイターズステーション編集部にご連絡ください。

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