
A JAPAN合同会社 代表社員
Ryohei Inuishi
犬石 諒平氏
仙台に拠点を構えるA JAPAN(エージャパン)合同会社。代表の犬石 諒平(いぬいし りょうへい)さんは、友人の結婚式をきっかけに映像の魅力に目覚め、仕事を通して技術を磨き、映像制作会社を立ち上げました。現在では、企業向けの映像制作やライブ配信、国際映画祭出展映画の制作、地上波テレビ番組制作、映像スクール講師など、幅広い仕事を請け負っています。そんな犬石さんに、仕事にかける思いや今後の展望についてお伺いしました。
友人に頼まれた結婚式の余興動画が始まり
これまでのキャリアについて教えてください。
2012年に大学を卒業して山形県の製造業の会社に就職し、営業職をしていました。4年ほど勤めた後に転職し、大学職員として現在の拠点である仙台市で働き始めました。会社を立ち上げるまでは、映像制作の仕事は本業のかたわら、本業との2軸で取り組んでいました。
どういったきっかけで映像制作を始めたのですか?
きっかけは、2014年に友人から結婚式の動画の制作を依頼されたことです。当時から結婚式の余興として動画を流すのが普通のことで2012年に行った自分の結婚式でも自作の動画を流していたので、友人からは「動画を作れる人」として認識されるようになっていたのだと思います。依頼を受けて制作した動画を披露宴で上映すると、会場全体がスタンディングオベーションになり、新郎新婦は号泣していました。人のために動画を作ったのは初めてでしたが、動画には“人の心を動かす力”があることを強く感じ、それに味をしめてしまった(笑)というのが率直なところです。
経験の積み重ねが確実に技術を磨くことに
どのように編集技術を磨いていったのですか。
20代後半は友人の結婚式ラッシュで、毎年1、2本は結婚式用の動画を作っていました。完全に独学でしたが、経験を積み重ねる中で少しずつ腕も上がっていきました。
転機は2019年、大学から東京の機関に出向して東京で勤務していた時のことです。人脈を広げようと参加した交流会で、千葉テレビの番組オーナーになっている方と出会いました。試しに結婚式映像を見せたら、「編集が上手い」と評価してもらい、そのまま番組制作に関わることになったんです。そこから仕事として映像制作に携わるようになりました。
最初に任されたのはその番組の100回記念の特番でした。経験も浅く必死でしたが、全力で取り組みました。2020年からは共同プロデューサーという立場で、3カ月に一度、その番組の30分枠をまるっと企画から編集まで担当しました。1人では到底できないので、東京・千葉・福岡の仲間を集め、私がまとめ役になって制作するチームを作りました。本業もあったので、相当大変な思いをして制作していました!
プライベートの苦境を乗り越えて、独立
独立に踏み切ったきっかけを教えてください。
映像制作を本業のかたわらに始めたそもそもの理由は、当時の妻が病気がちのため、1馬力の給与では貯金がままならなく、収入を増やしたかったことです。しかし、思うように売り上げが上がらず、150万円くらい機材や動画スクールなどに先行投資をしていた分を中々回収できず、徐々に家庭不和に。そして2020年、とても“ドラマティックな離婚”をし、当時は子供と引き離されたショックでうつ状態になってしまいました。その状況を乗り越え、売り上げが上がっていき、今後の人生に思いを馳せた時、高校生の頃に自分が「社長になる」と言っていたことを思い出しました。昔から団体行動が苦手だったというのもあり、自分の人生の舵を自分の決断と、自分の好きな仲間と一緒に切り開いてみたい、そんなステージに挑戦したいという思いが、売り上げの上昇とともに再び芽生えてきました。
そして、2024年の3月に大学を退職し、資金調達の面を考えて3カ月後に法人化しました。
「エモい」から「カタい」まで幅広い映像制作実績
現在はどのような事業を展開されていますか?
映像関連の事業が中心です。企業のプロモーション用の動画や、教育機関や公的な団体から依頼を受けてセミナーなどの動画も制作しています。クリエイティブで「エモい」動画から、教材用の「カタい」動画まで、多くの制作実績があります。
国際映画祭に出展する映画の制作も行っているほか、スポーツの試合や学会などのライブ配信も行っています。制作した映画をインドのジャイプール国際映画祭に出品したところ、審査員特別賞をいただくことができました。今は自分で脚本を書いてみたりもしていて、これからどんどんWorld Wideに自分の活動範囲を広げていきたいと思っています。
そのほか、映像スクール講師や、学生時代に身につけた英語力を生かして、小説や製品マニュアルなどの翻訳事業も行っています。
「あなたがいなければできなかった」と言われる仕事で得た、お客さまからのスタンディングオベーション

これまで手掛けた中で、印象に残っている事例はありますか?
2023年に保育士の方々が所属する学会の全国規模の集会でライブ配信を手掛けたお仕事ですね。当時勤めていた大学に、学会から会場として大学の施設を使わせてもらいたいという問い合わせがありました。打ち合わせを進める中で、コロナ禍でオンラインとのハイブリッド開催をするとのことでしたが、業者からの見積が高額で困っているとのことでした。そこで、テスト配信に同席させてもらうと、もっとシンプルにコストカットして実現できることが分かり、クライアントとしては、大学施設にも配信にも詳しい私に頼むしかないとなり、逆にお受けしない方が失礼な状況でしたね(笑)。
ご依頼いただけることになりましたが、そこから開催まで大変な毎日でした。学会の方はイベント開催に慣れていらっしゃらなかったので、配信や映像に関する事だけでなく、本当にさまざまなことで私を頼りにしてくださり、最終的にクライアントの運営側の役員みたいな感じで会議に呼ばれたりまでしていましたね(笑)。そのほか、「看板屋さんの伝手はないですか」などと「犬石さんなら何でもできるだろう、知っているだろう」と思われていたと思います。できることは対応させていただき、やれることはやり切りました。
全日程が終わった際に、スタッフにスポットライトが当たり、「犬石さんがいなければこの会は成立しませんでした」とご紹介していただきました。ここでも会場全体からスタンディングオベーションをいただいて、印象深かったですね。
「良い意味で手加減できない」お客さまに寄り添い、全力でかっこいいものを
御社の強みを教えてください。
個人事業主として事業を始めた際に、「『A』JAPAN(カッコエージャパン)」という屋号にしました。読み方のとおり「かっこええ」、「かっこいい」という意味もありますが、この「『』(かぎかっこ)」は、カメラのピントを表しています。Aは英語の冠詞の”a”で、aの後ろにはあらゆる言葉が続く。それと同じように、案件ごとの本質にしっかりピントを合わせる、という意味が込められています。もう一つの意味として、離婚して離れて暮らすことになってしまった子どもたちに、「パパのような大人になりたい」と思ってもらえるよう、かっこいい大人でありたい、そして、かっこいい大人を増やしていきたい、という思いも込められています。
そのためにも、お客さまに寄り添って柔軟に対応するようにしています。課題や目標の設定、仕様、予算と、あらゆるものを考慮したうえでかっこいいものを作ります。常に全力で、採算を度外視して取り組んでしまうこともあり、良い意味で手加減できません(笑)。
求めるものは他者に貢献する「ギバー」の精神

一緒に働くクリエイターにはどんなことを求めますか?
技術的な面は仕事をしていれば必然的に向上していくので、そこまで求めません。大事なのはお互いに気持ち良く働けるマインドを持っているかどうかです。お客さまファーストで考え、自分の利益を優先するテイカーではなく、他者に貢献するギバーの精神でやっていける方ですね。そういった方であれば、同じ方向を向いて仕事ができると思います。
クリエイターには幅広い知識とスキルが必要。そのためには「やるしかない」
クリエイターに向けたメッセージをお願いします。
幅広くスキルと知識を身につけた方が人材としては貴重です。ただ映像制作スキルがあるだけではなく、例えば財務や税務、補助金などに関する知識もあれば、お客さまに対してそうした部分も含んだ提案ができます。言われたとおり作るのではなく、こちらから問題発見をやっていけるクリエイターでないと、お客さまを本当に喜ばせることはできないと思います。配信に関して言えば、カメラを扱える人はいますが、そこから各機材の配線や音、画の組合せ、合成はどのようにして、ミキサーをどうつないでといった全部の構成が分かる人材はなかなかいないんです。スキルと知識同士をかけ合わせることができれば、引く手あまたになると思いますよ。
もう一つ伝えたいのは、「やるしかない」ということですね。“やればできる、Yes or はい”ということです。目の前のことや人に一つ一つ、向き合い続けて、行動を続けるしかない。その積み重ねが、未来の自分を助けてくれます。
もちろん、自分の向き、不向きはやっている中で見極める必要はあります。でも、辛い時も大変な時も行動を続ける。それさえ続けていければ、チャンスは必ず寄ってくると、自分の体感を踏まえても確信しています。私のようなクリエイターは、まさに今の時代の流れの中で生まれたんだと思います。これから起業に踏み切りたい、映像制作の世界に飛び込んでみたい、という人にはきっとさまざま共感できる経験をしてきたと思うので、SNSなどで気軽に声をかけてくださいね。
取材日:2025年9月11日
A JAPAN合同会社
- 代表社員:犬石 諒平
- 設立年月:2024年7月
- 事業内容:映像制作、映像企画、コンサルティング、スチール撮影、プロモーションコンサルティング、翻訳
- 所在地:〒989-3123 宮城県仙台市青葉区錦ケ丘3丁目8番地の22
- URL:https://kakko-a-japan.com/
- お問い合わせ先:お問合せフォーム
この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。




