自称日本一小さいコーヒースタンドの、コーヒーにかける大きな挑戦【福岡県北九州市】

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北九州市小倉駅から歩いて5分、わずか2.9平方メートルの小さな空間に立つコーヒースタンド。
そこには、コーヒーを通して人と人をつなぐという大きな思いと挑戦が詰まっていました。私はその場所で、「日常に寄り添ってくれる」コーヒースタンドに出会いました。

小倉駅から徒歩5分、「ちゅうぎん通り」にあるLights Coffee(ライツコーヒー)を訪れたきっかけは、インスタグラムで流れてきた一つの投稿でした。店主の中村 友哉(なかむら・ ともや)さんが楽しそうにお客様と会話しながらコーヒーを注ぎ、「今日はどんな絵を描こうか」とラテアートに向き合う姿。その空気感に強く引かれ、実際に足を運んでみたいと思いました。

現地に着いてまず驚いたのは、その広さです。思わず通り過ぎそうになったそのお店は、敷地面積がわずか2.9。平方メートル。一坪にも満たない空間に、エスプレッソマシンや道具がぎゅっと詰め込まれています。「自称日本一小さいコーヒースタンド」という言葉は決して大げさではありません。しかしその小ささとは裏腹に、そこに流れる時間はとても豊かなのです。

開業に向けて

中村さんは開業前から、店づくりの様子を発信していました。DIYで少しずつ形になっていくテイクアウト専門・立ち飲みのコーヒースタンド。そこには「これから挑戦する」という決意表明のような投稿と、コーヒーへの愛情があふれていました。

かつては、酸味のあるコーヒーが苦手だったといいます。ですがある日、おいしい酸味のコーヒーに出会ったことで、その印象は一変しました。ネガティブだったものがポジティブへと変わった、その瞬間の体験が今の原点になっているそうです。

「この体験をお客様にも伝えるのが面白いと思ったんです。コーヒーを飲みながら人と会話する時間が楽しくて、そんな時間を提供できるお店になればいいなと思いました」

そう語る中村さんは、会社員時代には日々を心から楽しいと感じることは少なかったそうです。しかし今は、訪れるお客様に恵まれ、毎日が充実していると笑顔を見せています。時には人生相談を受けることもあるそうですが、「自分なりに経験してきたことが、誰かの役に立つならうれしい」と話してくれました。

また、以前通っていたコーヒー店での体験も大きな学びになっています。お客様との距離感や関わり方は、そうした積み重ねの中で形づくられてきたものでした。

日常使いしてほしいお店

抹茶ラテを作っていただきました

中村さんが語ってくれた言葉の中で、特に心に残ったのが「友達みたいな感覚で寄ってほしい」という一言です。店を22時まで開けている理由も、「日常の空白を埋める場所でありたい」という思いからきたもの。お酒を飲まない人にとって、気軽に気持ちを吐き出せる場は意外と少ないのです。その役割を、この場所ではコーヒーが担っているようでした。

さらにこうも話してくれました。家でも職場でも愚痴を言えずに、気持ちを抱え込んでしまうことは誰にでもある。だからこそ、「今日大変やった」「今日頑張った」といった言葉を、コーヒーを飲みながらふっとこぼせる場所でありたいのだと。

その言葉からは、この小さなコーヒースタンドが、単なる飲食の場ではなく、人の心にそっと寄り添う存在でありたいという強い思いがあふれています。

「コミュニケーションツールとしてのコーヒー」——。
その言葉のとおり、ここでのコーヒーは単なる飲み物ではありません。店主とお客様、そしてお客様同士をゆるやかにつなぐ、あたたかな架け橋になっていました。

実際に取材中お客様が来店され、その意味がよくわかりました。お客様は注文をしながら「今日は何にしようかな」と悩み、近況をぽつりと話す。注文を待つ間にもお客様が話を投げかけ、中村さんが答える——そんな言葉のラリーが自然と続くような空間でした。

味にも強いこだわりがあります。「気軽に寄れるけど、気軽に飲めない味」。小倉の街には大手コーヒーチェーン店、コンビニエンスストアのコーヒー、その他多くのコーヒー店がひしめいています。その中で、一口で違いが分かりやすく伝わる味を目指しているそうです。その言葉どおり、私が飲んだ一杯のコールドブリューは、これまでの“酸味=苦手”という印象を覆す、フルーティーな一杯でとても面白い体験ができました。

カップに印字された「Seize the Day」という言葉も記憶に刺さっています。「今を生きろ」という意味を持つこの言葉は、悩んだり先の不安を考えたり、過去悔やんだこともあるけど、今できることをやるしかない。

これはお客様へのメッセージであると同時に、中村さん自身への言葉でもあるそうです。後日、私が持ち帰ったカップを捨てずに切り取って手帳に貼ったのも、この言葉が心に刺さっているからかもしれません。

また、印象的だったのは、初代コーヒーマシンの“卒業”の話です。「共に頑張ってきた仲間が店舗を卒業します」という投稿。単なる機械ではなく、共に店を支えてきた存在として語られていました。現在は半年待ちで手に入れた2代目マシンが活躍していますが、初代はイベント用として大切に使われています。

一人で切り盛りしているが、決して孤独ではない。道具もお客様も含めて「チーム」として向き合っている姿勢に、中村さんの人柄が表れていると感じました。

次なる挑戦

中村さんは現状に満足していません。将来的には、このスタンドを若い人に任せ、自身はカフェに近いコーヒーショップを持ちたいと考えています。

さらに、この場所はコーヒーショップをやりたい若い世代に「挑戦のきっかけ」として活用してほしいとも話しています。お店を運営するのは大変だけど、コンパクトだからこそ学べることがある。ここで経験を積み、次のステップへ進む人が増えればいい——そんな思いが込められていました。

暑い日も、雨の日も、雪の日も。この小さな空間で一杯のコーヒーを入れ続ける。その積み重ねの先に、大きな未来が広がっているように感じました。

この場所は、ただコーヒーを飲む場所ではない。日常の中にそっと寄り添い、また前に進む力をくれる「止まり木」のような場所でした。

※写真は全て筆者撮影

情報所在地/〒802-0006 福岡県北九州市小倉北区魚町1丁目1-3
開店時間/不定休→Instagramハイライトのカレンダーへ
(月〜木) 14:00-22:00
(金・祝前日) 14:00-23:00
(土・日・祝日) 13:00-23:00
インスタグラム:https://www.instagram.com/lights.coffee/

久田一彰

久田一彰

福岡県福岡市出身。
取材を通じて、そこにあるヒト・モノの魅力・ストーリーをお伝えします。

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