ムカつくことを「むかつく半島」に叫ぼう!使われていない棚田を映えスポットに変えた地元住民の挑戦【山口県長門市】

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棚田の花段(著者撮影 2023年4月)

「日本の棚田百選」(1999年農水省が発表)に選ばれた山口県長門市東後畑(ひがしうしろばた)棚田のすぐ近くに、何やら可愛いスポットが!車を止めるとそこは、「棚田の花段」でした。ハンモックやブランコ、「むかつく半島でむかつくことを叫びましょう」と書いてある看板などもあり、手作り感にほっこりした気持ちに。

そう、ここは向津具(むかつく)半島に位置した「棚田の花段」なのです。洒落のきいた「むかつくことを叫びましょう」の看板に、気になる気持ちを抑えきれず、「棚田の花段」を運営・管理しているNPO法人ゆや棚田景観保存会のメンバーの和田あいこさん・チヤさんに思いを聞いてみました。

「ときめく棚田大作戦」耕作放棄地を自然と共に人が賑わう元気な場所へ

「2019年秋に山口県長門市で全国棚田サミットが開催されました。サミット開催の前に、耕作放棄地で長年使われていなかった棚田を、保存会のメンバーで開墾することからスタートしました」と和田さん。

開墾前の棚田(棚田の花段HPより 2019年)

長門市油谷(ゆや)向津具半島一帯は、昭和50年代末までは約25,000枚の棚田に埋め尽くされていました。しかし近年は、時代の流れや米生産の技術的発展等に伴い、棚田での生産労働に対する対価が見合わなくなり、高齢化、後継者不足、過疎化などといった要因も重なり、耕作放棄地が年々と増え続け、かつての美しい里山の風景が荒廃の一途をたどってしまったそう。

「全国棚田サミットにあわせて、棚田を活用し、自然と共に人が賑わう元気な地域を創出する為に、2019年に耕作放棄地の開墾を開始。棚田を通じて様々な事業化を図る棚田再生プロジェクト『ときめく棚田大作戦』が始まりました」

むかつく半島でムカつくことを自由に叫べる「むかつくお叫び台」、五感に訴え印象に残す手作りのしかけ

棚田には、ブランコやハンモック、クスっと笑える看板やお叫び台などがたくさん!

筆者の私が訪れる度に増えており、映(ば)える写真で面白写真選手権が開催できそうです。

むかつくを叫ぶお叫び台(棚田の花段公式facebookより 2022年4月)

「使われていない棚田を開墾しただけでは、人はなかなか来てくれないので、旅して思い出に残る・写真にも撮りたくなるように、五感に訴え印象に残すしかけを考えています。そういうのがないと続かない。保存会のメンバーで全て、手作り・人力でやっています」

夕陽とお叫び台(NPO法人ゆや棚田景観保存会より提供)

「棚田×ハーブ」棚田の土壌が香り豊かなハーブを生む

現在、棚田再生の第一歩として、蒸留酒(ジン)の材料となるハーブが植えられています。

「ジン作りのためハーブを探している人がいたので、「棚田に植えてみる?」と、そこからハーブ栽培がスタートしました。海から棚田に吹き込む霧や風に含まれるミネラルと鉄分を多く含む赤土の土壌のため、棚田で育つハーブは香りよく高品質に無理なく育ちます。この取り組みは、かかわるほどすごいものを発掘できるのが面白いです。保存会で土台づくりをコツコツしています」

開梱後、ハーブを植えた棚田(NPO法人ゆや棚田景観保存会より提供)

記者の私はたまたま、近くのスーパーで出会ったジン『青舞(オーブ)』を購入して帰っていたのですが、のちにそれが棚田の花段で栽培されているハーブを原材料にして作られていると取材時に知ってびっくり!

ジンを注いだグラスに口をつけると、ボタニカルな香りがふわ~と広がり、一気に長門市の風景まで記憶が呼び戻される感覚がします。写真だけではなく、旅の思い出の匂い・味を家に帰ってからも楽しめるのは嬉しい。

お米よりも手間がかからずに栽培が可能で、食べて美味しい、飲んで幸せ、香って幸せ!なんていいとこ取りなんでしょう!

ジン『青舞(オーブ)』(著者撮影  2023年6月)

次なる作戦は「ドッグプラン!?」非日常をわんちゃんと楽しむ

「2023年夏にはドッグプランを作る予定です。ドッグラン、わんちゃんジェラート、わんちゃんアロマなど非日常をわんちゃんとともに楽しめることを構想中です。クラウドファンディングなどを通じて認知を広げていく予定です」

むかつく -探さないといけないジェラート店( NPO法人ゆや棚田景観保存会より提供)

訪れる度に素敵な棚田が増えていきそう!ここからの展開に目が離せません。最後にひと言ずつ、今後の目標について聞いてみました。

棚田と手作りのブランコ(棚田の花段公式face bookより 2023年5月)

チヤさんは「私は、自然と人の繋がりを取り戻したいという思いがあります。人それぞれの『好き』を形にすることを実現しながら、自然との繋がりを取り戻したい。それについて何かしらの一端を担いたいですね」

和田さんは「2019年から継続した活動により、『こんな素敵な場所になるんだ!』と実際に目で見て分かりやすくなったことがきっかけで、どんどん仲間が増えています。多事業へ展開をしていくのが今の目標です。棚田を資源として、いろんな人がいろんなことに挑戦する場になってほしい。ときめきを生み出す棚田をどんどん作っていきたいし、いろんな人と一緒に繋がって、棚田が育ち、人が育ち、ひとが集まり、、、絵本のような半島・棚田にしたい!」とそれぞれ語ってくれました。

満開の菜の花(棚田の花段公式face bookより 2023年4月)

お二人のお話を聞いて、私も棚田のボランティアにもぜひ参加してみたい!と強く思いました。労働後の景色はより身体に染み渡りそうです。

むかつく半島は全然ムカつかない、人も自然もとても素敵な半島でした。山口県に旅行に行った際にはぜひ、足を運んでみてくださいね。

左よりNPO法人ゆや棚田景観保存会のメンバーの伊藤さん、和田さん、チヤさん(2023年6月 取材時撮影)

情報

【棚田の花】

住所:〒759-47111 山口県長門市油谷後畑1766
HP:http://yuya-tanada.com/ (長門棚田物語 https://www.nagatotanada.com/ )
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100064716913482
Instagram:https://www.instagram.com/tanadanohanadan/

杉本咲樹

杉本咲樹

神奈川県茅ヶ崎市

編集部記者

神奈川県茅ヶ崎市在住。1歳児の母。
現在は宿の立ち上げ・運営をしながら、ゆるく湘南ライフを楽しんでいます。日本はヒッチハイクで、海外はコロコロパッカーとして30カ国程度旅した経験もあり、ローカルな魅力が大好きです。

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