
深呼吸や、自分が「コレ」と信じて行う行為で、気持ちが落ち着いたり、前向きな力が湧いてきたりすることがあります。
戦闘や逃走モードである交感神経優位の状態から、まったりリラックスの副交感神経優位となり、脳内でエンドルフィン(内因性モルヒネ)という物質があふれ外部との一体感や多幸感に包まれることがあります。それは「ハイ」といわれる状態だそうです。
なかでも、アルコールや薬物などによらない、呼吸法や運動や食事といった肉体の動きや、日常にある自然由来によるものは「ナチュラルハイ」と呼ばれてます。
自分に合ったナチュラルハイを見つけ、日常生活に活用すれば、自己を知り心を豊かにすることができるのではないかと考えました。
そこで、私の知人で「編み物」をナチュラルハイとして実践されている人の事例をご紹介します。
目次
ナチュラルハイとは
数あるナチュラルハイの中でも一般的に知られているものにランナーズハイがあります。肉体と精神の酷使が極限に達した時、その苦しさを和らげるために脳内で自家製の麻薬が放出されているため、たとえ筋肉に痛みがあったとしても、痛みを感じることなく、ひたすら幸福感や万能感で満たされながら走り続けることができるわけです。このように肉体を酷使するスポーツ全般では色々なハイを体験することができます。
そのほかでは唐辛子を使った激辛料理を食べた時、舌の痛覚を刺激したことで、引き起こるものがあるようですし、泣いたり笑ったりしてもハイになれます。また周囲との一体感からくる「感覚共振ハイ」などは、ライブ会場や宗教的儀式などで発動します。
このように思いのほか私たちの日常生活の中には、このナチュラルハイがあふれ潜んでいるわけです。
中には知らず知らずのうちに日常の行動そのものを、このハイに支配されたりしている人も少なくないのではと思います。
ですから自分に合ったハイを改めて確認することは、生活を主体的に豊かに生きる上でも意外に大切なことではないでしょうか。
またその人の趣向やライフスタイルも反映されるため、その人がどんなナチュラルハイが好きなのかは、その人の人となりを見る上でも大いに参考になります。
「ナチュラルハイ」が生きる上での活力の源に
このナチュラルハイは人によっては生きる上での活力の源になっている人もいます。
長年に渡って私の仕事の上で取材対象者の紹介やネタの提供など協力して頂いている、都内の豊島区に住む松島喜代美さん(70)もそんなナチュラルハイを生きる活力にしている女性です。
彼女は現在、 心臓を動かす動脈の先天的な異常による病気である「右冠動脈肺動脈起始症」と、何らかの原因で網膜に関わる血管が詰まることで視力が低下する「網膜静脈閉塞症」や、背骨の中の腰椎(腰の骨)が前後にずれて神経を圧迫する「腰椎すべり症」などを患っており、その患部の脊柱は金具により定着しています。 そのため通院しながら、自宅で日常生活を送りながらリハビリなどに励んでいます。でもお会いするといつも元気で明るくて、そんな病気を患っているなんて思えないほど元気な方です。
そんな彼女の元気の元であり、生活の張り合いとなっているのが、毛糸の手編みにより色んとな作品を作ることなのでした。まさに「手編みハイ」。
「手編みをしているときは、腰の痛みや体のだるさも忘れて集中できるんです」
現在その作り出す手編みの品々はテッシュBOXやショールにマスクと様々ですが、一部販売もしているというから、まさに趣味と実益をかねているといえます。ご自宅の部屋には、のれんにクッションカバーと、そんな彼女が編んだ品々であふれかえっています。
時に症状が重たいときもあるといい、そんな時は早く手編みをすることと、その手編み製品を待っている知り合いの顔を思い浮かべることを、張り合いにして乗り切っているんだとか。


立花的ナチュラルハイ
ちなみに私のハイはなにかというと、まずは公園や街路樹などの葉っぱの鑑賞です。
それも新しいツルツルの木の枝の先に生える幼い葉っぱ。そのやわらかい質感やテカテカ具合を鑑賞することです。見入っているとその可愛さにいつのまにか気持ちよくなっているわけです。題して「リーフハイ」。

また思春期以来ハマっているのが、公園の芝生やベンチに寝転がって、ひたすら青空を集中して見続けるという「ブルースカイハイ」。

そして食事に関するものもあります。おいしいものを食べると、よくほっぺが落ちるなんて昔から言われていますが、18歳のころに本当にそれを体験したことがありました。
それは滋賀県の某所で食べた手打ちうどんでした。あれは確かきつねうどんでした。そのうどんのコシの具合が讃岐のそれのように硬からず、大阪の手こねうどんよりはコシがあってちょうど良い硬さで、そのあまりの舌触りの心地よさに、ほっぺの筋肉が弛緩してしまい、ニタニタが止まらなかったのでした。
今思えばその時はあきらかにハイになっていたと言えます。これなどは「うどんハイ」とでも名づけたいと思います。
ナチュラルハイがもたらすもの
さてここで、私が考えるナチュラルハイの効用についてあげるとざっとこんな感じでしょうか。
①瞬間リラックスできてストレスが解消される。
②周りや自然との一体感を味わえる。
③後からじわじわ感謝する気持ちがおこる。
④自分のことが好きになれる。
⑤子どもに戻れる。
⑥人に教えたくなるし、そんな話題に共感してくれる人を、見つけることができる。
あなたのハイはどんなハイ?
松島さんにとっての「ハイ」は心から好きな行動。困難な状況のなかでも自分らしさを取り戻し、生きる力をつなぎとめる大切な営みなのだと思います。好きなことに心を向ける時間は、単なる気分転換ではなく、その人を支える確かな力になるのです。松島さんの姿から、そんなことを感じました。
一方私の「ハイ」は、日常にあるシンプルな物事や自然を鑑賞し、そこから心地よさや多幸感を得ているという傾向があることに気付きました。
自分は果たしてどんな人間なのか、なにを好み何に興味があるのか? そんなことを考えるうちに、自分とは何者かなんて、自分のナチュラルハイ傾向を見てみることで、改めて自分自身を考えるきっかけになるのではとも思えてきました。
みなさんも自分は何ハイなのか考えてみてはいかがですか? 「えっ!? そんな暇じゃない」って。なるほど、ハイ失礼しました。
【2026年4月7日 編集部追記】
3月8日に公開した本記事について、掲載基準の確認のため一時非公開としていました。ローカリティ!掲載基準に基づき、追加取材を行い内容を再編集のうえ、再公開しました。
参考文献:「ナチュラルハイ」上野圭一 六興出版





