
日本でも最近アカウントの乗っ取りが急増しているようです。
以前からSNS上ではよく見られていた現象でしたが、近年は金融機関やさまざまな企業からの個人情報流出もたいへん増えている状況なので、ユーザーが知らない間に何らかの犯罪に悪用される可能性が高まっています。
特に海外の一部の犯罪組織やサイバー攻撃グループが、ネットワークを介して先進技術を狙う動きが活発になっています。かつて「産業スパイ」と呼ばれていた行為も、今ではオンラインで行われることが多くなっています。
もともと、治安が他国と比較して良好だった我が国では、個人のみならず企業もそれらへのセキュリティー対策にあまり熱心でない傾向があり、欧米先進国と比べると人々の認識的にもシステム的にも手薄な部分が目立ちます。
例えば銀行のキャッシュカードの暗証番号に関しても、筆者が7年ほど住んでいた欧州ではインターネットが一般化するはるか以前の1980年代から6ケタを採用している銀行もありましたが、日本では今でも4ケタが一般的です。
欧米先進国でもハッキング被害は後を絶ちませんから、比較的情報保護が手薄な日本がここにきてターゲットになってしまうのもうなずけます。
3ヶ月ほど前、筆者もAppleのアカウントがとても変わった手口で乗っ取りにあってしまいました。
iPhoneをBluetoothでワイヤレスのスピーカーにつないでラジコというアプリを使いインターネット
ラジオを聴いていた際、突然音が出なくなりました。
iPhoneを手に取ると、画面がiOSアップデート時の黒地にAppleのロゴが出て、その下にインストール進行状況を示す横棒が表示されました。
筆者はiOSのアップデートは自動で行えない設定にしているので首をかしげました。
さらに不可解だったのは、通常のiOSアップデートでしたらWi-Fiがある環境でさえ最低でも10分くらいは開始から完了までかかります。ところがそのときはわずか5秒か10秒でダウンロードが完了し、再起動に入りました。
ところがです、再起動から復帰すると、驚くことにiPhoneは完全に初期化され、いわゆる工場出荷時の状態と化していました。
定期的にiCloudにバックアップは取ってありましたし、再設定すれば大丈夫だろうと最初は慌てることもありませんでした。
再設定中には当然、契約しているAppleアカウントへのログインが求められますが、忘れるはずがないパスワードが何度打ち込んでもエラーが出てしまいます。
設定を確認すると、なんと登録した電話番号がまったく身に覚えがない番号に書き換えられていることに気づきました。ほんの数十秒の間に不正操作が行われたのです。
それからが大変でした。
電話機能どころか、iPhoneはすっかり単なる箱と化してしまったので、仕事になりません。
iMacを含むすべてのアップル製品が使いものにならなくなってしまいました。
アカウントに入る手段を断たれたわけですから。
当然、アカウントに登録していたクレジットカードはすべて停止、再発行を依頼しなければなりませんでした。
アカウントの復旧への道がまた大仕事でした。
メーカーのサポート窓口に毎日のように連絡し、店舗にも何度も足を運びながら手続きしました。最終的に完全に復旧するまで2ヶ月近くかかりました。
サポートによると、今回のような電話番号を乗っ取るというケースは日本国内ではまだ事例が少ないとのことでした。
ラジオを聴く以外の操作を何もしていないので、いきなりハッキングされたわけですから恐怖を覚えました。セキュリティソフトを導入していましたが、今回のケースでは防げませんでした。今後同じ手口が増える可能性もあると感じたため、皆様への注意喚起として共有します。
なお、Apple製品を購入する際の販売証明書は必ず保管することをおすすめします。これがないとサポート対応が制限される場合があるからです。また、Apple IDの二要素認証を有効にする、パスワードを使い回さない、怪しい挙動があればすぐにAppleサポートへ相談するなどの対策が有効です。