〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
晴れの多い穏やかな気候の瀬戸内海に浮かぶ、香川県小豆島(しょうどしま)。ここは、皆さんご存知、国産オリーブの聖地です。1908年、日本が国策としてオリーブ栽培を推進した際、香川県・三重県・鹿児島県の3県で試験栽培をしたところ、オリーブの本場である地中海と似た気候の瀬戸内・香川県だけが成功しました。それ以来、100年以上にわたり、小豆島ではオリーブの栽培やオリーブオイルの製造が盛んに行われています。
そんな小豆島の南東部、内海湾(うちのみわん)から少し山の方へ車を走らせたところに、空井農園(そらいのうえん)があります。創業者である空井和夫(そらい・かずお)さん(76歳)が、定年退職を機にご両親のオリーブ畑を引き継ぎ、奥様のひとみさん(70歳)とともに空井農園を営んでいるそうです。
実際に販売所へお邪魔して空井ご夫妻にお話を伺うと、もう、お二人とも口を開いた瞬間からオリーブへの愛の言葉が止まらない止まらない! 子どもの頃からオリーブに囲まれた環境で生活してきたこと、日々オリーブを食べて元気いっぱい未だに現役であること、苗木から手塩にかけて育ててきたオリーブが様々なお客様とのご縁を繋いでくれたこと、などなど……。瀬戸内海へ降り注ぐ太陽の恵みのように、お二人のオリーブへの熱い想いが一言一言に込められていました。そして実際に、その愛を注がれて出来上がるオリーブオイルたちは、世界基準で高評価を集めています。
「目に見えるおいしさ」、空井農園のオリーブオイルの実力
小豆島のオリーブ農家は、土地柄どうしても小規模になりがちで、畑も山の斜面にあることが多いため、大型の機械を使うことができず、大体の作業が手仕事になってしまいます。ですが、これが小豆島オリーブが高品質と言われるひとつの理由。特に摘果の工程を手摘みで行うことで、実を傷つけることなく、熟れ方を確認しながら均質な状態で実を集めることができます。
オリーブも他の農作物と同様に、実の熟れ具合によって風味が全く異なるため、用途ごとに熟成度が0から7までの8段階に分けられるほど。空井農園では、比較的早熟な段階で摘果します。それにより、熟成度が高い他社のオリーブオイルよりも、えぐみが少なくリンゴのようにフルーティーな風味に仕上がるのです。
加えて、オリーブオイルのおいしさを一番左右するのが、酸度。オイルの酸化具合を測るもので、数値が低ければ低いほど良いとされています。「オリーブは摘んだ瞬間から酸化していくんです。だからうちも、摘んだその日に加工せないかんと思って、フンパツしてイタリアの搾油機を買いました」と話すのは和夫さん。
丁寧に手摘みした均質な実を、新鮮なうちに自社で絞り、ボトリングする。シンプルなことですが、多くの小規模農園は自社に搾油機がなく、自治体が持つ加工場で順番待ちをしなければならないという事情を聞くと、空井農園の持つアドバンテージが分かります。そしてそれは、ご覧の表のように、はっきりと数値にも表れています。
さらにその上、空井農園のオリーブオイルは、国内にとどまらず、世界各地のオリーブオイル品評会でも、好成績を修め続けています。ひとみさんがうれしそうに語るには、「これ、私たちがやりだしたことじゃないんですよ。2013年頃、とあるお客さんが『出しといたで!』言うて、最初に出品してくれたんです」とのこと。お客様の心を動かすだけでなく、世間の評価までも動かし、今も輝かしい記録を保持し続けているという、空井農園のオリーブオイルの「目に見えるおいしさ」。受賞歴は枚挙に暇がありませんので、ぜひ販売所やHP等でご覧になってください。
未来に紡ぎ続けたいオリーブのご縁
取材中、「オリーブがかわいくてかわいくて仕方ない」や「植えたオリーブが全部枯れたりしたこともあったけど、失敗じゃない、すべて経験なんです」といった、数々の名言を聞かせてくださったご夫妻。そんなお二人がいつも大切にしているのは、オリーブが紡いでくれたご縁です。
過去にとある著名なバンドマンの方から、オリーブ農園を始めるにあたって師事させてほしいと、空井農園さんのもとに連絡が入りました。彼はとあるインタビューで、空井農園のオリーブオイルを食べて衝撃を受け、空井さんに連絡したと語っています。
「その方は本当に丁寧な方で、普通なら出会えないような方だけど、こうして今もお付き合いがあります。全部全部、オリーブのおかげです。オリーブがあったから本当にたくさんの人に出会えました」と、噛み締めるように語るひとみさん。「だからこれからも、息子も含めてこのオリーブを守っていきたい。次はどんな出会いがあるか楽しみです」と、言葉が続きます。
世界にも認められる空井農園のオリーブオイルは、空井一家の研究熱心さと深い愛を受けて磨かれ続け、これからもおいしい感動のご縁を紡ぎ続けていくことでしょう。