
ワントーンデザイン株式会社 代表取締役
Kensuke Suzuki
鈴木 健介氏
名古屋に拠点を構えるワントーンデザイン株式会社は、クリエイティブに集中できる新たなオフィス空間を整え、顧客のグラフィックデザインやWeb、アートディレクションを手がけています。代表の鈴木 健介(すずき けんすけ)さんは、グラフィックデザイナーとして多彩な広告プロジェクトを経験し、所属していた会社の解散を機に独立。デザインの世界に入ったいきさつや若手時代のできごと、会社としての強み、仕事にかける思いなどを話していただきました。
勉強も運動も苦手。だけど図工は得意だった
どのような学生時代を過ごされましたか?
勉強も運動も苦手な子どもだったのですが、図工だけはずっと得意でした。高校は工業系に進んだのですが、相変わらず勉強には身が入りませんでした。卒業後も「デザインの専門学校なら2年間楽しめそうかな」とフワッとした気持ちで進学したんです。
デザインの専門学校はいかがでしたか?
デザイン業界にもデジタル化の波が押し寄せている時代だったのですが、入った学校が古い体質のままで…写植の授業やカラス口(製図用具)などの練習を熱心にするんです。「これはちょっと違うかも…」と危機感を覚えたので、Macを買ってDTP(パソコンによる印刷物のデータ作成)を独学で習得していきました。
独学で学んだスキルが通用せず、苦しいスタートの社会人生活
社会人になってからのキャリアも教えてください。
印刷会社の制作チームに入りました。しかし学生時代に身につけた知識や技術では実務にまったく太刀打ちできず、はじめはとても悔しい思いをしましたね。徐々に仕事にも慣れていきましたが、2年経ってもずっとチラシ制作のオペレーター的なポジションだったので、広告代理店の仕事を手がける広告制作会社に転職しました。そこでは分譲マンションの広告などを2年ほど経験し、少人数のデザイン会社に転職して12年ほどキャリアを積みました。
転職し、デザイナーとして躍進する
2度目の転職先では長く経験を積まれたのですね。
その会社では大判ポスターなどの広告的な仕事もたくさんできましたし、厳しい社長に技術的にも精神的にも鍛えていただきました(笑)。今まで経験したことがない仕事に向き合って、悩んで、それを乗り越えて成長していくというプロセスや、仕事を通じて「誰かの役に立っている」ことが実感できた職場でした。当時は追いつめられて大変だったけれど、今では感謝しています。
そこから独立されたきっかけは?
社長の引退を機に、会社が解散したんです。それを機にまったくのゼロから自分の腕を試してみる道を選びました。そこから2年半ほどのフリーランス期間を経て2024年に法人化し、ワントーンデザインを立ち上げました。
独立や起業をしたいという思いが元々あったのでしょうか?
独立したいというよりも、組織が向いていなかったというのが正解なのかもしれません。自分のアイデアで、物事を進めていきたいという思いが強いのだと思います。
独立後も順調に仕事が入り、法人化やオフィス移転を果たす
自分だけの力で独立というのは、大変だったのでは?
それが、本当に運が良かったというか…仕事で関わってきた人たちが気にかけてくれて取引先や案件を紹介してくれて、立ち上げて2〜3カ月目くらいからはコンスタントに仕事が入っていったんです。
「ちょっと時間ができたらこんなことをしよう」と考えていることもいろいろあるのですが、ずっと忙しい日々が続いています。でも、売り上げは年々上昇して念願のオフィス移転も果たすことができました!

新オフィスは名古屋駅にほど近いマンションの一室ですね。
仕事をする環境ってすごく大事だなって感じていて、思い切って分譲を購入したんです。間取り変更のリフォームも入れて、スタッフと一緒に快適な環境で仕事に向き合っています。アクセスも良好ですし、エントランスで打ち合わせも行えるので、とても気に入っています。
フリーランスから法人化したことで何か違いはありましたか?
法人化したことで、やらなければいけない事務作業が増えた感じはあります。自分の給与も法人から支払われるという形になるので、なんだか不思議な気分ですね。スタッフのマネジメントも行う必要があります。
デザインの力で誰かの役に立ち続けたい
御社が手がけられている事業について教えてください。
ワントーンデザインでは、グラフィックデザイン、Webデザイン、アートディレクションの3本柱で事業を進めています。直接のクライアントは少なめで、広告代理店や広告制作会社と協業させていただくことが多いです。手がけている仕事のジャンルもデザインのトーンも本当にさまざまですね。
ワントーンデザインの強みはどのようなところにありますか?
おそらくですが「仕事のしやすさ」が一番の強みだと思います。相談いただいた仕事は極力断らないですし、できるかぎりフレキシブルに対応しています。プロジェクトの大小に関わらず目の前の仕事にしっかり向き合い、プラスアルファの提案も積極的に行う姿勢が次の仕事につながっている気がしています。
そもそも「誰かの役に立っている」と実感できるのがすごくうれしいですし、代理店の方から「鈴木さんとは仕事がしやすい」と言っていただけると励みになります。“また一緒に仕事がしたい!”と思っていただけるよう、力を尽くしています。
ワントーンデザインの社名の由来も教えてください。
会社員時代は仕事の物量が多すぎて、何もかもが煩雑だったんですね。だから、せっかく独立するならひとつひとつの仕事に丁寧に向き合いたいと感じ、社名に「ONE」を入れました。
「TONE」には「音色・調子」といった意味があるのですが、その方にとっての「一番いい音色を届けたい」という思いがあってワントーンデザインにしました。
ロゴマークは、システマチックな雰囲気を出したくてこのデザインにしました。尊敬するアートディレクターの佐藤可士和さんのように、自然界では存在しない垂直水平のエレメントを使っています。名刺のデザインも1種類である必要はないと考え、半透明のものをはじめさまざまなデザインで作っているんです。

コミュニティ化を進め、仲間と深く太い付き合いを
これから、どのような会社に成長させていきたいですか?
仕事には人のつながりが重要だということを、あらためて感じています。ワントーンデザインと仕事をご一緒する方々と互いに協力し、成長していける関係性を構築していきたいです。新たなビジネス拠点ができたので、この先はコミュニティー化をさらに進め、深く太い付き合いをしていきたいですね。
そして、お客さまにとって「一番にお願いしたい会社」になりたいと願っています。法人化後にスタッフを増やしたのも、チームにすることによってデザイン品質をより高くするためです。
一緒に働くスタッフに求めることは?
僕自身が組織が苦手だったという経験があるので、とにかく縛り付けず、のびのびと成長してほしいと願っています。
性格はやはり素直な方がいいですね。クリエイティブ業界をはじめさまざまなコミュニティーに顔を出すのが好きなので、一緒に参加して成長できる方を望んでいます。
20代で磨いたデザインと社会人生活のスキルは“貯金”になる
最後に、世の中のクリエイターにアドバイスをお願いします。
デザインの仕事は“サービス業”だと僕は考えています。そのため、デザインの目的は、いい商品やいい接客を通じてお客さまに喜んでもらうことが基本。作ったデザインに赤を入れられることもあるかもしれませんが、柔軟に受け入れることが“次も選ばれるクリエイター”になる第一歩だと思います。
また、若手時代にデザイナーとしてのスキルを獲得しておくこともとても大切です。僕の場合は、すごくたくさんの物量をこなさなければならないポジションを経験したおかげで、Illustratorの腕とスピードの両方を上げることができました。スピードが速くなれば他者が2案作る時間で3案、4案とアイデアを形にすることができます。20代の頃に磨いたデザインのスキルと社会人生活のスキルは貯金となって、きっと未来に生きてきます。30代になってからベースを作るのはとても難しいので、20代の若いうちに多くの経験を積んで高みをめざしてください!
取材日:2025年4月11日
ワントーンデザイン株式会社
- 代表者名:鈴木 健介
- 設立年月:2024年7月
- 資本金:100万円
- 事業内容:グラフィックデザイン/Webデザイン/アートディレクション
- 所在地:〒450-0003 愛知県名古屋市中村区名駅南2丁目7番8号NAGOYAtheTOWER2311号
- お問い合わせ先:090-3939-5324
この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。