
デジタル技術が地域の未来を切りひらく——。歴史と伝統が息づく福島県会津若松市で「デジタル未来アート展」が開催された。スマートシティ化を推進するこの街が、デジタルの力でどのような未来を描こうとしているのか紹介したい。

2月に観測史上最多の積雪を記録した福島県会津若松市で3月、「デジタル未来アート展」が開催された。本イベントは、デジタル技術を活用した新たな遊び場の提供や、スマートシティを支える次世代人材の育成を目的に、地元企業や教育機関と連携して実施されている。
会津若松市は福島県西部に位置し、新選組・土方歳三が傷を癒やした東山温泉や、日本屈指の透明度を誇る猪苗代湖に囲まれた人口約11万人の城下町だ。かつて交通の要衝として栄え、江戸時代には会津藩が置かれた歴史と文化の薫る街で、年間230万人以上の観光客が訪れる。
人口減少や若者の流出という課題に対応するため、市は平成25年からICT(情報通信技術)を活用した街づくりを推進。この伝統ある街は、最先端のデジタル技術を駆使した「スマートシティ」への発展を目指している。特に、積雪が多く冬場の遊び場が限られるという地域課題を解決するため、デジタル技術を生かした新たなエンターテインメントを創出し、子どもたちの学びの機会を広げ、地域経済の活性化を図っている。

「デジタル未来アート展」は、こうしたスマートシティ構想の一環として、デジタルアートを体験できるイベントだ。なかでも人気を集めたのが、会津若松市のシンボル・鶴ヶ城を舞台にした「バーチャル鶴ヶ城マラソン」。参加者は手足にセンサーを装着し、画面上のアバターを操作してレースを競う。ゲーム感覚で体を動かしながらデジタル技術を体験できる点が魅力で、大人も子どもも夢中になり歓声を上げていた。
さらに、プログラミングコンテスト「あいづプロコン2024」の応募作品展示では、小中高生が創意工夫を凝らしたプログラムを披露。加えて、ロボットプログラミングや電子工作のワークショップも開催され、参加者は楽しみながら最新技術に触れる貴重な機会を得た。

これらのイベントは、子どもたちのICTへの理解と関心を深めるだけでなく、スマートシティを支えるデジタル人材の育成にもつながる。昨年の来場者アンケートでは、子どもの84%が「コンピューターの勉強をしたくなった」と回答し、次回の開催を望む声は100%に達した。これは、デジタル技術が単なる娯楽ではなく、未来のキャリアや地域活性化に結びつく可能性を示している。

「デジタル未来アート展」は、地域課題の解決とデジタル人材の育成を両立する先進的な取り組みだ。現在、令和6年度までは国の交付金を活用して運営されているが、令和7年度以降の継続には課題が残る。交付金終了の可能性を踏まえ、持続可能な運営体制の確立が求められている。今後も会津若松市がデジタル技術を生かし、新たな価値を創造し続けることに期待したい。
参考資料:デジタル未来アート事業(福島県会津若松市企業版ふるさと納税プロジェクト)、会津若松市の現住人口(会津若松市役所情報統計課)