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“虎の王国”へ向かう旅のはじまり
インド北西部ラジャスタン州にあるランタンボール国立公園は、アジアでも特に虎の遭遇率が高い場所として知られている。年末年始の旅先として、自然と冒険の両方を求める若い旅人には、この上ない目的地といえる存在である。観光地ジャイプルから車で数時間というアクセスの良さも手伝い、手軽に「野生の世界」に踏み込める場所として人気を集めている。
公園に入ると、乾いた風が吹き抜ける広大な大地、古代の樹木、岩肌が削られた荒野が広がり、旅人の心を一瞬で非日常へと引き込む。ここは単なる国立公園ではなく、歴史と自然が溶け合う“冒険の舞台”である。


かつて虎が“城の守護者”だった時代
ランタンボールには、他の国立公園とは一線を画す背景がある。それは、公園内にそびえ立つ巨大なランタンボール城の存在である。この城は10世紀頃に建てられ、かつて王国を守るための要塞(ようさい)として機能していた。
当時、城周辺には戦略的理由から虎が多く生息する環境が残され、結果として虎が“天然の守護者”として城の周囲を守る役割を果たしていたと伝えられる。城壁の外に広がる森で虎が行き交う姿は、まさに“王国を守る影の戦士”のようであり、現在もその名残を強く感じさせる。
ランタンボール城の遺跡は公園の高台に位置し、動物たちを観察するジープサファリツアー(以下サファリ)の途中で目にすることができる。古びた石造りの砦(とりで)、苔むした階段、鳥の鳴き声が響く空間は、滅びた王国の物語を静かに語り、旅人の想像力を強く刺激する。


高確率で虎に出会える場所としての魅力
ランタンボール国立公園が特に人気を集める理由は“虎との遭遇率の高さ”である。インド国内の多くの国立公園では、虎は生息していても姿を見られないことが多い。しかしランタンボールでは、草原と岩場が適度に開けており、視界が広く、虎が行動しやすい環境が整っている。
サファリに参加すると、ジープから数メートル先を悠然と歩く虎に出会えることも珍しくない。木陰で休む姿、狩りの前に静かに息を潜める姿、子どもを連れて歩く母虎など、まさに“野生の王者”の姿を目の前で確認できる。どの瞬間も緊張と興奮が入り混じり、自然の迫力を全身で感じる体験となる。


サファリで感じる自然の美と緊張感
ランタンボールのサファリは早朝のツアーが中心である。冷え込みが厳しいため、出発前に宿泊先で毛布を借りて身体をしっかり温めておきたい。
朝焼けの中を走り、ひんやりとした空気を切り裂きながら森へ入っていく感覚は、インドでしか味わえない特別な時間である。光が差し込むと、クジャクの羽根、シカ鹿の群れ、ワニが静かに身を潜める湖など、多様な生態系が姿を現す。
自然の中で虎を待つ時間には独特の緊張感がある。ガイドが静かに耳を澄まし、シカの警戒鳴きや鳥の騒ぎなどから虎の接近を読み取る瞬間は、まるで映画のワンシーンのようである。
筆者は虎ではなくレオパードに遭遇することができた。サファリジープに広がる歓声と静寂が入り混じるあの高揚感は、生涯忘れられない記憶となっている。
サファリ体験に加え、歴史遺跡と自然が共存していることが、この公園を特別なものにしている。虎を探しながら古代遺跡を眺める体験は、世界でも珍しいものである。
ジャイプルやデリーからのアクセスも比較的良く、初めてインドを訪れる旅人でも挑戦しやすいことから、年末年始の冒険の地として強くおすすめしたい。
デリーからランタンボールへの行き方
1. 列車
- 所要時間:約4.5時間
- デリー → サワイマドプル駅
- 駅から公園ゲートまで車で約20分
→ サファリ目的の旅人の定番ルートである。
2. 車
- 所要時間:約6〜7時間
- デリー → ジャイプル → ランタンボール
→ ジャイプルのホテルには日帰りツアーが多数用意されている。




ツアーガイドが発見した虎の足跡
※写真は全て筆者が撮影( 2025.01.05)
参考:





