屋久島の8つの集落で行われているツアー「里めぐり」。里の文化や歴史を伝えて、観光業を発展させつつ環境も守ることを目標にしたツアーだ。
今回は、そのうちのひとつ、一湊(いっそう)という地区の里めぐりツアーの魅力に迫る。
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里めぐりツアーの語り部は屋久島生まれ屋久島育ち!
案内してくださる語り部の方は、かねなか商店代表の中島一孝(なかしま・かずたか)さん。屋久島で生まれ育ち、一湊地区の移り変わりを見てきた。質問にも喜んで答えてくれる明るく気さくな方だ。
もともと地元のハイキングマップを作るための準備をしていたところ、ちょうど里めぐりツアーの話があったため、語り部として活動に参加することを決めたそうだ。
サバ節製造が盛んな港町「一湊」
一湊は漁港として栄えた港町で、最盛期は3000人近く住民がいたそうだ。そのころから有名だったのが、サバ漁、そしてサバ節だ。橋の上から一望すると、片側に工場のような建物が5棟ほど並んでいる。
明治時代からサバ節工場で出火し、何度も町が燃えてしまったそうだ。そのため、工場のみを昭和3年に川の向かいに移動させた歴史があるそうだ。
そんなサバ節の製造は、「捨てるのは煙くらい」と言われるほど余すことなくサバの身を使用している。身はもちろんだが、煮詰めるときに出る煮汁はサバ煎じに、骨はくだいてふりかけに混ぜられて活用されているそうで、あまるのは煙くらいらしい。「でも、環境省の『かおり風景100選』にサバ節の香りが載っているから最近は煙まであまらないんじゃないかと思う」と中島さんは語っていました。
地域の食材を使った贅沢ランチ
このツアーでも特に、町中で両側にガジュマルの木が並んでいる通りが印象的だった。何気なく歩いていた道路を「ここはもともと川だった。あの少し盛り上がっているところに橋があったんだ」と説明されただけで驚きだったが、昔は両側の木の上を少年たちが渡って遊んでいた、と聞くと、流れる川とその上で枝をつたってはしゃぐ子供たちが目の前に現れるようで、当時の暮らしに対して、憧れを感じさせてくれた場所だった。
さらに、休日限定、5名以上の団体のみ(要予約)、公民館で地域の食材を使ったランチをいただくことができる。時期によって変わるメニューは、冬の時期だと湯豆腐や、サバやトビウオのすり身を使ったつけあげ、野菜の天ぷらといった、素朴だが懐かしさを感じる品がいっぱいのご馳走だ。とても美味しかった。サバ味噌とご飯の相性は最高で、たまらずおかわりまでしてしまった。
ツアーで感じた「地域の魅力は無限大」
今後は「誰が語り部を担当するのですか」という質問に、「現在の語り部が70歳代後半の人が多くなってきてるので、定年になったばかりの人とかに声をかけたり、外部からの移住者でも大丈夫なので、新しい語り部を探して行きたいと思います。」と中島さんは話す。
また、「聞き手からぐっと興味を持って聞いてくれると楽しい」とやりがいについても話していました。
私は、島で生まれ育ったが他の集落とあまり関わりがなく、初めて里めぐりに参加するまでその地域にどんな特色があるのか知らなかった。だが、今回のツアーで地域の魅力の可能性が無限であることに気付かされた。
菅野凜太郎さんの投稿