ツバメの巣をスズメが乗っ取る!?最近増えてる野鳥の住宅難民化。現代のスズメのお宿事情【秋田県大仙市】

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ツバメのヒナが巣から落ちている!

※2024年5月18日筆者母撮影

2024年5月18日の夜、シャッターを閉めようとした店先にツバメのヒナが落ちていて保護したと筆者の母から連絡が入った。

翌日ツバメの様子を見に実家を訪れたところ、命はあるものの、エサを食べるほどの元気はなく衰弱しているようだった。このまま何も食べなかったら死んでしまうかもしれないと思い、薄めた砂糖水を与えるなどネットで調べた応急処置をした後、巣へ戻そうと試みた。

ツバメの巣を頻繁に訪れているのはスズメ?

※画像はイメージです(写真ACより)

巣を見に行ったところ、すでに死んでいるヒナが2羽巣の下に落ちているのを見つけた。

巣の中をのぞくと他にヒナが2羽いるようだ。親が近くに来ているので、保護したヒナを一旦巣に戻して様子を見る。再度保護する必要も考え、ミールワームなど餌になりそうなものを買いそろえて1時間後に戻ると、またさらに1羽のヒナが落とされて死んでいた。

どうやら巣の中に頻繁に訪れているのはツバメではなくスズメのようだった。ツバメの親が巣に近づこうとするが怖がっているのかすぐ離れてしまう。スズメによる巣の乗っ取りか?

「ツバメの巣をスズメが乗っ取る」というキーワードで検索したところ、実はここ10数年で増えている事例であることがわかった。

怪我を負っても生き残った1羽

※保護した2羽のツバメのヒナ※2024年5月19日撮影

このままこの巣に入れていたら危険であることがわかったので、巣にいた2羽を保護した。筆者がいなかった1時間の間にヒナたちはスズメに頭をつつかれて血が出るほどのケガを負っていた。

ツバメの保護について詳しく書かれているサイトを参考にし、自宅に連れ帰った。

翌朝、残念ながら2羽のうちの1羽は死んでしまったが、残りの1羽は頭にケガがあるものの、自ら口を開けて元気にエサをねだるくらいに回復した。

※日に日に元気を取り戻したツバメのヒナ 2024年5月24日撮影

現代のスズメのお宿事情

スズメに乗っ取られたツバメの巣がある場所は、秋田県大仙市協和境の大仙市協和支所近くの電器店。駅も近いことから、田舎といえども時間帯によってはいくらか人通りや車通りもある場所だ。この場所で店を構えてから60年以上毎年ツバメが訪れている。

ツバメは、ヘビなどの外敵が少なく人が頻繁に出入りする一戸建ての住宅や一戸建ての住宅兼商店に巣を組むことが多い。逆にスズメは人目につきにくい屋根の隙間や建物の間、換気扇などに巣を組むことが多いそうだ。最近の住宅はそういった屋根の隙間や建物の間というものが少なく、その結果スズメが住宅難に陥りツバメの巣を乗っ取る事例が増えているのだそうだ。

ツバメも同様で、最近の住宅の構造や外壁には巣が組みにくく、昔ながらの家や商店も減っているなどの事情から住宅難に陥っているそうだ。いずれにせよ人の暮らしと密接にかかわってきた野鳥たちは人間の暮らしの変化にともなって影響を受けていることを知った。

スズメが巣をあきらめた

※2024年5月20日撮影
※2024年5月20日撮影

ヒナを保護した後、空になった巣を巡ってスズメとツバメが争っていたが、ヒナを戻す必要があるため、スズメには申し訳ないがシャッターを低くおろし、キラキラのモールなどで飾りつけをし、スズメが入ってこれないように細工をした。数日してスズメはその巣をあきらめ別の場所へ移動した。

あとは元気に回復したツバメのヒナを戻して無事に巣立つように見守るだけだ。

落ちているヒナを見つけても拾ってはいけない

※頭にケガを負ったものの元気に回復!2024年5月24日撮影

ツバメの育て方について調べるうち、野鳥を飼うことは法律で禁止されていることを知った。秋田県生活環境部自然保護課に連絡したところ、「なるべく早く自然に帰すように」と注意を受けた。

「人間に保護されたとしても、自然で生き残ることができるのはかなりの低い確率。保護して人間が手をかけるのは自然の摂理に反すること、また自然に帰して命を落としたとて、それも自然の摂理」とのことだった。かわいそうだと気軽に保護はせず、できるだけ自然のままにしておくべきであることを理解した。

ヒナを拾ったり、ヒナを保護することには大きな責任がある。もし知らずに拾ってしまったら、お住まいの管轄で相談できるところを探すなどして適切な方法を調べて対処してほしい。

この季節、元気に飛び回る姿や賑やかなさえずりで生命力を感じさせてくれる野鳥たち。彼らは必死で生きているのだ。

※写真は全て筆者撮影

情報(参考にさせていただいたサイト)

つばめの飼育日誌

ちょんの字の主張

すずめっ子クラブ

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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