
兵庫県神崎郡神河町(かみかわちょう)の砥峰(とのみね)高原は、標高800〜900メートルに位置する90ヘクタールのススキ草原です。
映画「ノルウェイの森」のロケ地にも使用され、多くの方が訪れるようになりました。
氷河期が終わる約2万年前、この辺りの地面は昼にとけて、夜に凍るを繰り返しました。その結果、地表の土が少しずつ流れ、波打つような“周氷河地形”ができました。
草原を歩いていると自然の「波」に包まれる感じがするので、「大地が呼吸する丘」ともいわれるようになりました。

砥峰高原の下の地層は約2億年前の花こう岩や変成岩でできていて、恐竜が生きていたころの岩盤が眠っています。掘り進めば化石が発掘できるかもしれません…。
しかし長い年月の風化と浸食によって、上層部は軟弱で樹木は大きく根を張れず、ススキの草原となりました。砥峰高原の広い草原は、自然の力だけでできたわけではありません。
砥峰高原は火山の跡ではなく、古くから人が「山焼き」※をして守ってきた草原です。
軟弱な地盤に加え「山焼き」によって樹木が生えにくくなり、ススキが主役の風景が保たれています。

地質的には、浅い土壌と緩やかな傾斜が草原維持にぴったりな条件です。
すなわち「火山ではない“人の手で作られた高原”」「燃やして守る自然」ともいえる文化的景観なのです。
谷あいには、花こう岩の割れ目を通って湧き出る水によって、小さな湿地や沢がつくられています。
この緩やかな地形が水を長く留まらせているため、ススキや花々が育つことができています。
まさに「岩のすき間のしずくが育む湿原」ともいえます。



砥峰高原は、家族連れから年配の方まで楽しめる周遊道が整備されています。周遊道は舗装されていませんので、歩きやすい靴でお越しなることをおススメします。
またお越しの際は、この美しい景観や施設の保全のために「協力金500円」のご協力をお願いいたします。
※「山焼き」は現在地区の方々のみで行われ、公開はされていません




