毎月22日「にゃんにゃんの日」に猫の健康祈願と供養祭。「忠義な猫」の聖地から広がる輪【秋田県横手市】

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秋田県横手市浅舞地区には明治時代に地主の伊勢多右衛門(たえもん)に飼われ、ネズミ退治で活躍し地域の住民たちに愛された「忠猫(ちゅうびょう)」の伝説が残ります。

住民たちに愛されたネコの功績を伝えるため、「忠義な猫の会」が2016年に「忠義な猫の資料館」を開館しました。そんな「忠義な猫の資料館」が2024年6月に「忠猫神社」としてリニューアルしました。

「忠猫神社」では毎月22日に「にゃんにゃんの日」と称して、猫の健康祈願と供養祭が執り行われています。

忠猫神社が今後どのような発展をしていくのかを、発起人のひとりであり、浅舞八幡神社の宮司でもある本多和芳(ほんだ かずよし)さんにお話を伺いました。

「忠義な猫の会」の成り立ち

「忠義な猫の会」はその前身となる「『忠義な猫』でまちおこし推進委員会」が2011年に設立されたことから始まりました。

設立のきっかけとなったのは、2010年11月8日に秋田魁新報に掲載された「忠猫の碑 公園と米を守った猫」という題の記事でした。

その記事によると、1895(明治28)年5月3日に浅舞の地域で生まれた子猫は、縁があって同年の8月10日に地主の伊勢多右衛門の家で飼われることになりました。その猫は、県社八幡神社境内の修理と隣接地を整備していた際に、野ネズミやヘビを退治し工事の進行を助け、また、木材をかじり米蔵を荒らす大量のネズミを退治し、地域の貴重な救済用米を守ったそうです。

その猫が13歳で死んだ時に建てられたのが「忠猫の碑」。

この記事に目を留めた有志が「忠猫の碑」の存在を多くの人に知ってもらおうと設立されたのが「『忠義な猫』でまちおこし推進委員会」です。

その後、組織は「忠義な猫の会」と名前を改め、活動の幅をさらに広げていきました。

地元でも知られざる存在だった「忠猫の碑」

もともと「忠猫の碑」は浅舞公園の中にあり雨風にさらされた状態で、その存在は地元でもほとんど知る人はいなかったそうです。

浅舞公園に隣接する浅舞八幡神社の宮司の本多さんも、その碑を幼いころから目にしていたもののまったく知らずに過ごしていたそうです。

しかし、会の設立から、地元の新聞やさまざまなメディアで「忠義な猫」が取り上げられるようになったことで会の活動も徐々に広がっていきました。

そして、2016年にはクラウドファンディングに挑戦し目標額をクリア。空き家となっていた建物を会が買い取り、そこを「忠義な猫の資料館」とし、「忠猫の碑」を資料館に移動させ安置し、ご神体とすることになりました。

忠猫神社が建立

「忠義な猫の資料館」ができて8年がたったころ、資料館としての維持管理や企画展や神事などのイベントで経済効果がどれほどあるのか、今後どのようにしていくのかということを「忠義な猫の会」のメンバーで話し合いの場を持ちました。その結果、近年は猫を飼育する愛猫家が増えてきたという背景をふまえ、新たに目先を変え「忠猫神社」として建立することに方向性が定まりました。

「忠義な猫の資料館」当時の内装

「忠猫神社」の内装

「忠義な猫の会」の発起人のひとりであり、浅舞八幡神社の宮司である本多和芳さん

現在、忠猫神社では「招福猫サブレ」や「ペットお守り」などの多くのグッズを販売しています。

また神社内には「虹の橋ポスト」が設置されており、亡くなった愛猫への思いをつづり、無料のはがきを投かんしてもらう取り組みを行っています。

そうしたことで、愛猫家などから徐々に認知され、忠義な猫を町の観光資源として生かす取り組みが少しずつ進んでいます。

招福猫サブレ
招福猫サブレ
招福猫サブレを販売する「加賀屋」

神社の隣には学習塾が併設

神社の隣では、地域の子どもたちの教育の場として有効活用してほしいという意味をこめてスペースを貸し出しています。塾長は管理人として、施設の説明と忠義な猫の歴史も伝え、地域の子どもたちにも認知を広めています。

学習塾内部

健康祈願と供養祭は「22(にゃんにゃん)の日」に行われる

資料館であった当時から、猫に関する祈願祭は浅舞公園のあやめまつり(毎年6月下旬頃開催)に合わせて行っていましたが、神社に生まれ変わってからは毎月22日を「にゃんにゃんの日」として猫の健康祈願と供養祭を執り行い、その日限定の御朱印を授与しています。

また、供養の際には宮司が虹の橋ポストに投かんされたはがきにつづられた飼い主の気持ちをご神体に奉告します。

亡くなった愛猫への思いがつづられたはがきとご神体

もっともっと「忠義な猫」をPRしたい!

以前、山形県高畠町の「犬の宮・猫の宮」や、かつて養蚕(ようさん)の町として栄えた宮城県丸森町にある、「まるもりの猫神さま」と合同で東北猫サミットを実現しようとしていましたが、残念なことにコロナ禍と重なったことと、発案者の堀田副会長が亡くなってしまったこともあり計画自体が立ち消えになってしまいました。

そこで、もっと知名度を上げるために「猫好きで知られる動物写真家の岩合光昭(いわごう・みつあき)さんや内館牧子(うちだて・まきこ)さん、横手市出身のタレントの壇蜜(だんみつ)さんなどの有名人たちの協力を仰いで忠猫神社をPRしてもらうことも施策の一つと考えている」と本多さん。

また、「忠義な猫の会」では、新たな会員も募集しています。事業計画の協議やイベント会場の設営、あと片付けなどに関わっていただける方を大歓迎しています。

さらに、イベント実施時に臨時で協力してくださる「外部協力者」、子どもたちに忠猫の物語を伝える紙芝居の読み聞かせを行うボランティアの語りべなども募集しています。

忠義な猫の紙芝居

全国でも珍しい、忠義な猫を祭った「忠猫神社」。その魅力を未来につなぐための活動をしてみませんか?

地域の文化を支えながら、猫を愛する世界中の人々とつながる機会がここにあります。

関わりしろ

毎月22日「にゃんにゃんの日」の祈願祭を訪れ、愛猫の健康祈願や供養祭に参加する。「虹の橋ポスト」にはがきを投かんし、亡くなった愛猫に思いを届ける。

「忠義な猫の会」の会員として事業計画の協議やイベント会場の設営、後片付けなどに参加する。

「外部協力者」としてイベント実施時に臨時で(紙芝居などの語りべやイベントスタッフなど)協力する。

お問い合わせ

忠猫神社

住所:〒013-0105 秋田県横手市平鹿町浅舞蒋沼135
TEL:0182-24-1606(FAX同番)
携帯:090-7662-1619
公式サイトURL https://asamai-hachiman.jp/piety-cat/
営業時間 午前10時~午後4時
アクセス
バス:横手・本荘線浅舞覚町で下車し徒歩約5分

※写真は全て筆者撮影

「あきたの物語(https://kankei.a-iju.jp/)」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

亀田健太

亀田健太

1995年生まれ。生まれも育ちも秋田育ちで、大学時代に観光学科に所属してました。ローカリティ!の一員として秋田の魅力を発信していきます。

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