新しい番組を作るための「無いもの探し」が楽しい。ものづくりの魅力に導かれ、番組制作会社を創業【東京都中央区】

4 min 7 views
カテゴリー:

株式会社ユニット 代表取締役

Hiroaki Nagai
永井 宏明氏

テレビやYouTube、インターネット配信動画などの番組制作を展開している東京の株式会社ユニット。以前は大手テレビ局で働いていた創業者の永井 宏明(ながい ひろあき)さんは、“新しい番組づくりを続けたい”と、この会社を立ち上げました。数々の人気番組を世に生み出し続けている永井さん。新しい企画を考える秘訣や今後の展望などについてお話を伺いました。

広告代理店勤務時代に担当した新商品開発の「ものづくり」がきっかけ。番組制作の世界へ

立ち上げまでのキャリアを教えてください。

大学を卒業する時点で興味があった仕事は、マーケティングに関わることか、テレビ番組の制作でした。最終的には広告代理店に入社することになり、新商品キャンペーンなどの広告の企画や制作などをしていたのですが、あるときにコンビニ飲料の開発を担当することになりました。そこで取り組んだ新商品開発、いわゆる「ものづくり」の仕事がとても楽しかった。それをきっかけに、クライアントビジネスの広告を続けるよりも“その経験を生かして元々興味があったテレビ番組を作る仕事ができないか”と考えるようになりました。
それからテレビ番組の制作会社に転職し、その後テレビ局(株式会社テレビ東京)に移って番組制作を担当することになりました。

テレビ東京では楽しく番組制作を進めることができ、居心地もとても良かったです。しかし、当時は 48歳だったのですが、そのくらいの年齢あるいはもっと早い時期から、番組制作の現場は後進に任せ、ある程度の年齢になったベテラン勢は管理職になるのが通例だったのです。改めて “自分は何をしていきたいのか”をいろいろと考えました。その結果、「やはりこのまま番組制作を続けたい」。それが自分にとっては一番楽しい時間の使い方だという結論に達し、株式会社ユニットを創業しました。

新しい番組の企画をゼロから考える楽しさ。「無いもの探し」もその一つ

現在の事業内容と御社の強みについて教えてください。

テレビやYouTube、インターネット配信動画など、動画全般の番組制作を行っています。企画から撮影、編集まで番組制作全体を手掛けていますよ。
弊社の強みとしては、ゼロから新しい企画を考えて番組制作ができるところ。その一点に尽きると思います。

永井さんがこれまで企画・制作してこられた番組は「空から日本を見てみよう」「TVチャンピオン」など新たなジャンルを切り開く革新的な番組が多いように思いますが、新しい番組のアイデアはどのように生まれているのでしょうか?

決まりきったやり方があるわけではありませんが、今世の中で何が起きていて世間の人々は何に関心があるのかは、常に追っています。一方で、今何が忘れ去られているのか、つまり「無いもの探し」や「有りそうで無いもの」を考えるところからアイデアを広げていくことも多々あります。例えば書店でどんなジャンルの書籍が今店頭に並んでいないのかを見に行くことがあります。
それ以外にも、例えば社会問題を扱う場合には、真正面から討論番組として取り上げるよりも、あえてドラマ番組のようなフィクションの中で扱い、さまざまな角度でその問題に切り込む方が新たな気付きや前向きな解決の可能性を感じることができる場合があります。
日頃から新しい企画やアイデアを考えることがもはや生活の一部になっています。自宅で晩酌をしながら新しいアイデアを考えるのが好きで、思いついたときにはメモするようにしています。翌朝冷静になってメモを見返し、ボツにすることも多いですが(笑)。

NHK「未来予測反省会」10/7(火)23:00~(NHK総合) 【9週連続オンエア】!

番組制作を実施する際に大切にしていることは何でしょうか?

番組制作には、企画、演出、出演者、予算など、非常にたくさんの因子があるのですが、それらが独立変数でもなかったりするので結構複雑です。その上、偶然性で決まることもあるのでなかなか条件が揃わず難しいところがあるのですが一つ言えるのは、番組を評価する指標が少し変わってきたという点。一昔前は基本的には「視聴率」が唯一の評価軸でしたが、今は視聴率以外にも、SNS投稿、配信での反響も評価されるようになってきています。見ている人の人数が少なかったとしても、その番組が深く心に刺さった人が多ければSNSなどで話題となり脚光を浴びるようになる。「人数」と視聴した人への影響の「深さ」の掛け算で世の中での注目度や認知度が判断されるようになってきたので、どれだけ深く人に驚きや感動を与えられるかという点も大切にしています。

これまでで一番思い出に残っているコンテンツは何でしょうか?

やはりテレビ東京時代に制作した番組「空から日本を見てみよう」でしょうか。当時やりたいことを好きなだけやらせてもらいました。音楽選びやテロップ(動画上につける文字情報)の設定、番組の構成などもやりながら考えていて、とにかく面白いと思うものをある意味やりたい放題でやっていたので、番組作りがとても楽しかったですね。

AIがさらに進化し普及した後に価値を生むのは、より「人間的」なもの

近年AIなどを含め映像技術が飛躍的に進歩していますが、今後の映像コンテンツの世界はどのようになっていくとお考えでしょうか?

AIが作れるもの、AIの方が得意なことはAIに任せればいいですし、実際にそうなっていくのだと思います。そうなると結局、AIができないことを人間がいかにできるかが問われる時代になる。だから技術が飛躍的に進歩しても、さらにその先の理想に近づけるために、アナログ的なことを含めて人間はさらにいいものを作ろうと考える。将来はより人間的なものが価値を生むようになっていくのではないでしょうか。

今後作りたいコンテンツや展望などあれば教えてください。

近々のことでいうと、NHKで放送されている特別番組「未来予測反省会」です。これは「過去にあった予測を今振り返って反省する」というコンセプトの番組なのですが、現在はその制作に取り掛かっているので、まずはこれを突き詰めて成功させたいと思っています。
あとは既に定期的に制作している番組で改良したい点があるものを改良していく予定です。
少し先のこととしては、新しいYouTubeのチャンネルも作ってみたいですね。また、将来的なこととして、放送局以外でも映像コンテンツ作りができるような仕組みやプラットフォーム作りができたらいいなと思っています。将来さらに自由度が高いところで、いろいろなクリエイターが集まって映像コンテンツ作りができる環境を作る方法はないだろうかと考えています。

一緒に働くクリエイターに対して求めることはありますか?

シンプルに「やる気」と「勉強」それだけですね。新しいものを作りたい、今までにないことをやってみたいという気持ちと、実現するための方法を自ら学んでいく姿勢。そういう人がいれば、業界全体にとっても喜ばしいことなのでぜひ応援したいと思います。

最後に読者の方に何か伝えたいことはありますか?

エンターテインメント業界の中でも、まんが、アニメ、ゲームなどは今も日本が国際競争力を保持している分野の一つだと思います。でもそれに限らず、もっと増やしていくことはできないだろうか。制作に利用できるツールがどんどん進化する中で、取り組みの幅が広がっていると感じるので、未来の可能性を考えていきましょうとお伝えしたいです。
言語を越えたところでも人の心を動かすようなすばらしいコンテンツを作ることはできないかなど、将来を担う若い世代の新たな取り組みにもすごく期待をしているところです。

取材日:2025年7月7日 

株式会社ユニット

  • 代表者名:永井 宏明
  • 設立年月:2012年7月
  • 資本金:600万円
  • 事業内容:テレビ、インターネット等で配信される映像番組の企画・制作
  • 所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座8-10-7 東成ビル9F
  • URL:http://unit.jp/
  • お問い合わせ先:03-6280-6971

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

カテゴリー:
愛智なおゆき

愛智なおゆき

ローカルの魅力を再発見する活動に興味を持ちハツレポーターとして参加。2023年末まではエンジニアとして電気機器メーカーにて技術開発業務を担当。最近の関心事は「現代社会の行く末」。ローカリティ!では「ここにしかないもの」、「どんな人にもあるストーリー」の魅力を伝えられたらうれしいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です