
5月は「夏も近づく八十八夜〜♪」と茶摘み歌の一節が思い出される季節。立春から数えて88日目のことを八十八夜と表します。この日に摘まれた新茶を飲むと健康になるといわれ、縁起の良いものとされてきました。
2025年5月1日(木)はこの八十八夜にあたり、それならば!と八女市の「茶の文化館」で、5月1日に茶摘み体験があると聞き、参加してきました。

お茶の摘み方、八十八夜に摘まれた新茶はどんなものなのか、教えてくださったのは、茶の文化館の古賀 佳代(こが・かよ)さんです。
文化館の脇の石段をのぼると、「やぶきた」「さえみどり」などの品種がある茶畑です。高さは大人の腰あたりまであります。ここで30分ほどお茶を摘んで、手もみしてお茶にします。
自分で摘んだばかりのお茶を飲める、なんというぜいたくな産地直送の体験でしょう!

今年芽が出た「新芽」だけを摘んでいきます。
新芽は去年の固い葉っぱの脇から出てきた柔らかい葉っぱです。両方触ってみると柔らかさが全く違いました。新芽はみずみずしく柔らかいです。一方、去年の葉っぱは乾燥したような硬さでした。

摘む量はだいたい100g。カゴの赤い線の下までいっぱいにするくらいの量です。

思ったよりいっぱい摘むんだな、というのが正直な感想でした。それよりたくさん摘んだとしても、家に持ち帰ってOKです。
目次
新芽の摘み方は2種類「一針二葉」と「しごき摘み」
まず一種類目は「一針二葉」(芯が一本と葉が二枚)という摘み方です。品評会に出す出品茶を摘む時の丁寧な摘み方です。すごく小さいのでたまるのに時間がかかりますがいちばん丁寧な摘み方です。

二種類目は「しごき摘み」。枝を持って下からプチプチと親指と人差し指で挟んで、引き上げながら摘みます。こちらは一度にたくさんの量が摘めます。

いざ、初めての茶摘み体験
さっそく教わった摘み方を実践します。まずは「一針二葉」。
その柔らかな新芽を潰さないように、慎重に摘んでいきます。どちらが新芽で、どちらが去年の葉っぱなのか、見極めながら摘んでいきます。やはり慎重になる分、どうしても摘むスピードは遅くなり、なかなか籠の中はいっぱいになりませんでした。
そこで「しごき摘み」も試してみます。確かにこちらの方がたくさん摘めます。
どちらも試してみながら摘むのですが、最初は楽しくて、手も口も動くのですが、だんだんと集中していきます、自分の心の中でどの新芽を摘もうか会話するので、口数が減っていきました。なんだか気持ちを解放するデトックスのような癒しの時間になっている感覚がありました。
ベテランのお茶摘みのおばあちゃんたちは、口も手もどちらも動かしながら素早く量を沢山摘むそうで、さすがだと思いました。

意外と力仕事!手もみ体験で自分だけのお茶にする
まずは、摘んできたお茶の葉100gを量ります。

次に皿ごとラップにくるんで、2分30秒電子レンジで蒸します。

なんだか料理をしているような気分になってきました。ラップを取ったらかなりしわくちゃになりました。
発酵を止めるため、昔は釜で炒って熱を加えていました。車で走ると村中お茶の香りがしたそうです。今は蒸気で蒸すやり方が主流だそうです。

マスク越しでもお茶のいい香りがただよってきました。
粗熱が取れたら、全体を4つ〜5つに分けただんご状にして、お茶の成分が染み出すように、ぎゅぎゅっと回転させながら手もみしていきます。

葉っぱが少しずつよじれていきます。ここでお茶の出方が変わると言われるほど、大事な工程だそうです。子供と大人で同じことをやっても力具合で変わります。昔、この技術は主に男性が担う仕事だったそうです。
次はほぐしの工程です。ポイントは全体をほぐしておくこと。ダマがなくなるように開いて、しっかりと乾燥させます。この後また電子レンジで40秒蒸します。
次の揉み方は形を整えていく工程です。

今度は手を前後に揉んでいくやり方です。お茶の葉を手の中でくるんくるんと大きく回転させます。細く長くよれた形にしていきます。先ほどよりやや力を抜くのがポイントです。
全体をまたほどいて、もう一度回転させていきます。
再びほどいたら電子レンジで40秒加熱します。

もう一度前後に揉んで、ほどくを繰り返します。

全体の見た目が減っていき、少しずつお茶っ葉に近づいていきます。
またまたほぐして、電子レンジで40秒蒸します。

繰り返すうちにお茶の成分が手のひらに染み込みました。
最後は手先でパラパラにより細かくしていきます。ダマが残ると他のお茶をカビさせてしまうので、しっかりとほぐしていきます。

最終的にはこんなにネジネジによれ、見た目も黒っぽいお茶っ葉になりました。
今度は2分30秒電子レンジで乾燥させていきます。これを薄く広げて上からおさえて砕いていきます。このまま一口食べてみましたが、やはりお茶の味でした。
完全に冷えたら袋に入れていき、パウチしてもらうと完成です。

世界でひとつだけのお茶の完成
極上のお茶をお茶の天ぷらと味わう

家に帰って自分で摘んだお茶を堪能しました。一煎目は混ざりけがないような、澄んだ味でとてもおいしいお茶になりました。
余った葉っぱは「お茶の天ぷら」にしました。塩気を加えた片栗粉にしっかりとまぶして、油で揚げたので、お茶よりも日本酒が欲しくなりました。お酒のアテとしても最高です。
八十八夜の茶摘み体験はとても貴重でした。ちなみにお茶という字には「八十八」が隠れているのをご存知でしたか?
情報
【お茶の文化館】
住所:〒834-0201 福岡県八女市星野村10816-5
開館時間:10:00~17:00(体験工房の最終受付15:30)
休館日: 火曜日(祝日、5月、夏休み期間中は開館)
入館料 :無料
駐車場 :30台
お問い合わせ:TEL:0943-52-3003/FAX:0943-52-3002