
長崎県壱岐市で長年続く料理教室が、新たな名前になりました。もともとは「男子厨房に入ろう」という名称でしたが、男女共同参画の視点から「より良し厨房に入ろう」へと変更。島の言葉で仲良くを意味する「より良し」には、性別を超えて誰もが料理を楽しめる場にしたいという思いが込められ、考え方の変化に伴い、名前を変更することになりました。男子厨房に入るべからず→男子入ろう→より良し入ろう

長崎県壱岐市で料理教室「より良し厨房に入ろう」が2025年10月に開催されました。主催は壱岐人権擁護委員協議会。今年で14回目を迎えるこの料理教室は、かつて「男子厨房に入ろう」という名前で開催されていましたが、昨年度から名称を変更。背景には「男女共同参画」の視点があります。
「男子厨房に入ろう」という言葉には、男性は普段料理をしないものという無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)が含まれているのでは……。そんな気づきがきっかけだったといいます。
古くから「男子厨房に入るべからず」、男性は台所に立つべきではないということわざがあります。時代が代わり、それを揶揄(やゆ)して「男子厨房に入ろう」といわれるようになっていました。1990年創刊のグルメ雑誌『dancyu』が「男子厨房に入ろう」を元にネーミングしたと、いわれています。
しかし今は、「より良し厨房に入ろう」の時代。壱岐島の言葉で“仲良く”を意味する「より良し」には、「男性も女性も、誰もが料理を楽しめる場にしたい」という思いが込められています。九州の離島という、昔ながらの文化が残る環境の中でこうした意識改革が進むのは画期的な一歩と言えます。
老若男女助け合い、楽しい時間

今年度の教室にはおよそ20人が参加し、やや男性が多め。ヘルスメイトと呼ばれる食生活改善推進委員らが講師を務め、「煮込みハンバーグ」と「手作りドレッシングのサラダ」を作りました。
レシピはあっても、切り方や混ぜ方は自由。参加者たちは「こっちの方がやりやすいよ」「それ入れすぎじゃない?」と笑い合いながら作業を進めます。20代の独身男性参加者は「普段から料理はしますが、みんなでやるのは楽しい。みじん切りのコツも教えてもらいました」と話しました。
壱岐人権擁護委員協議会会長は「壱岐には単身赴任で来ている方も多い。自炊を身につけて健康に過ごしてもらえたら」と語ります。小さな島で、男女の枠を超えて笑い声が響くより良しな厨房の風景がみられました。
写真は筆者撮影及び主催者より提供 2025年10月23日




