0円で日本中に「優しさ」と「無駄をなくす大きな輪」を広げる活動「0円ぐるり」【秋田県秋田市】

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NPO法人「秋田育さぽドリームエンジェル」代表糸井ミユキさん

あきたの物語」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。

秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

”あきたの物語”プロジェクト〜秋田市雄和「0円ぐるり」現地サポートスタッフ募集〜

※イベントの成功に記念写真をパチリ

金銭のやり取りをせず、物々交換で全国を巡る「0円ぐるり」という活動をはじめたNPO法人「秋田育さぽドリームエンジェル」(以下、ドリームエンジェルという)という団体があります。

「0円ぐるり」というのは、「まだ使えるけど捨てるにはもったいない、うちでは必要なくなったけど使ってくれる誰かがいてくれたら・・」

そんな気持ちを形にし、持ってきた物の数だけ持って帰ることができるという簡単なルールで物々交換をする交換会のことです。

このたび全国の同じ気持ちを持って活動する仲間の輪がつながり、キャラバンカーが関西、関東、東北、北陸を雑貨や洋服のリユース品を積んで行脚しました。 0円ぐるりののぼり旗は、みんなの気持ちと共に、今も全国を回っております。

※千葉から「0円ぐるり」の会場に到着したキャラバンカー

捨てずに無料で交換!こんな取り組みがあるなんてすごくいい!

「ドリームエンジェル」が活動の拠点としている、2016年3月に閉校となった秋田市雄和(ゆうわ)の旧川添(かわぞえ)小学校が今回の会場。2023年7月9日の全国キャラバンの当日。雨の中にもかかわらず多くの人が会場に足を運びました。

千葉から到着したワゴン車から、各地から届けられたリユース品が会場に並べられると、みんなが和やかに会話をしながら自分が持ってきたものを並べたり、それぞれが手にとって品定めをし始めます。

5歳の娘を連れて訪れたという近くに住む男性は、「子供が小さいうちは洋服などが成長するにつれすぐ使えなくなるし、次に使うものがすぐ必要になる。それを捨てずに無料で交換できるなんてすごくいいですね」と話しながら会場を見渡します。

会場の各ブースでもリユース品が大活躍

体育館を使ったブースでは、使わなくなったプラレールのレールやミニ四駆のコースなどが集められました。

今回ボランティアで参加した、航空自衛隊連合准曹(じゅんそう)会秋田支部准曹会のメンバーが、動かないプラレールの修繕やレールの設置などを担当。自宅ではなかなかできない、たくさんのレールを組み合わせた広い場所での壮大なコースで好みの電車を走らせることができて、子供たちだけではなく大人までもがはしゃぎ、大きな歓声があがりました。

※航空自衛隊連合准曹会秋田支部准曹会のメンバー

ほかには、ドローンの体験ブースや、お絵描きワークショップ、ハンドメイド作品の体験会や販売ブース、占いなどのブース、それぞれが代表である糸井ミユキさんのこれまでの活動のつながりの中から賛同してくれた人が集まっています。

来場した小さい子供から大人までが楽しみ、閉校した校舎に賑わいがよみがえりました。

※ドローン体験ブース
※ハンドメイド作品の展示販売
※かわいいハンドメイド作品は子供たちにも大人気でした

使い終わったものが新しい人の手に渡り、また大切に使ってもらうサイクルで、未来に良い環境をつなぐ

2023年度の環境省の調査によると、日本人は1日1人当たり890gものゴミを排出しているそうです。

さまざまなものが気軽に買える昨今、中古品売買の市場なども賑わいを見せる一方で、廃棄されるゴミも社会問題としてあげられます。

「0円ぐるり」では優しさの輪を広げることで、無駄に出るゴミを減らし、100年後の未来の子供たちにもよい環境を残すという理念のもとに活動をしています。

人と人とを糸でつないだら、大きな輪になり全国へ広がった

代表の糸井さんは、自身の結婚・子育てなどの経験を生かし、これまでさまざまな活動を自ら作り出し、その活動を通して人の輪をつないできました。

とにかく好奇心旺盛で目立ちたがりの学生時代を過ごしたという糸井さんは、バスガイドを経験したのち大型ダンプのドライバーとして働いた経験があるそうです。また、その一方で結婚、夫の転勤にともない沖縄へ移住した経験もあります。

そんな糸井さんは、仕事や住む環境などが変わるたびに職場や地域に溶け込めないと感じるときがあったそうです。

「沖縄から、再び夫の赴任先である秋田の雄和という土地に戻ってきた時、生まれた土地でも親戚でもないのに、ここの地元の人が本当に優しく受け入れてくれたんです。そんなありがたい環境があることをたくさんの人に伝えたい。そんな恩返しの気持ちから、秋田県に移住してきた方や、初めての子育てをする方たちが気軽に集まれる場所を作りたいと、洋服や雑貨のリユースなどの小さな活動を始めたのが最初のきっかけだったんです」

※イベントを統括する代表の糸井ミユキさん

糸井さんは活動のために仲間で集まるうちいろいろなアイデアが浮かび、ハンドメイド作品のワークショップの開催をはじめとして、小さい子供がいて参加が難しい人のために託児のシステムを設けたり、はたまた夫の実家である栗農家の栗が廃棄されそうだと聞けば、おいしく食べてくれる人を探してつなげたり、果ては自身で栗の生産農家を継いで事業にしてしまうなど、次から次へと、とにかくパワフルに活動の輪を広げてきました。

※糸井さん(写真中央)が自ら手がける、栗を使ったスイーツ店「スレッドチェスナット」の販売風景

「最初は点と点だったものを糸でつなげていくようなイメージ、今はそれが大きな輪となって広がってきました」。糸井さんがつなげて、地域に投げた輪は波紋のように広がり、今や全国規模の大きな輪となっています。

もらったご恩は倍返し。リユースした校舎を使って「ありがとう、楽しかった」といってもらえる場所をつくる

糸井さんがパワフルにさまざまな活動を続けるなかで、今回の会場である旧川添小学校に出会ったのは約4年前。

自宅に大量に保管されていた活動のなかで集まったリユース品を置く場所にもなるし、たくさんの人との交流の場所にもなる!と、かなり大きな決断ではあったけれど、得る物も大きいと閉校した校舎の施設利用を決めたそうです。

※糸井さんを支えてくれている地元の方々。「ミユキちゃんがいるからこそこんな活動ができる」と会場の整理を手伝ってくれています。

「雄和という土地の人たちへの恩返しを込めて、閉校になった校舎がリユースされて、キラキラと輝いているところを見てもらいたい。訪れた人や手伝ってくれる人がここに集まって、みんなが『ありがとう楽しかった』といって友達になるような場所になればいいですね」と、糸井さんの恩返しはとどまるところを知りません。

こんな場所があることを知ってもらいたい、そして足を運んでもらいたい 

※イベント当日も見えた飛行機の大きなおなか。

今回の全国キャラバンの会場となった旧川添小学校は、現在「秋田市雄和川添ドリームサロン」として月に一回、第1日曜日に会場を解放して「0円ぐるり」のイベントを開催しています。

秋田空港からほど近い場所で、飛行機のおなかが大きく見える雄和地区。飛行機で秋田を訪れたらまずは一番最初に来てほしい、と糸井さんは話します。

毎月開催されている「0円ぐるり」のポスター

                    

「この活動を広げていくなかで最大のネックとなっているのは人材を確保することなんです」

地元の人材だけだと、どうしてもマンパワーが少なすぎるので、現在「ドリームエンジェル」ではこの取り組みに関わって下さる関係人口を募集しています。  

「秋田の魅力はどこへ行っても温泉がたくさんあることと、自然が豊かで安心して子育てがしやすいこと」。糸井さんの仲間の転勤族はその魅力が忘れられず、願いを出して3回にわたって秋田に転勤してきた方もいるとか。

そんな魅力的な秋田に関わるきっかけ作りとして、糸井さんが紡いだ日本中に「優しさ」と「無駄をなくす大きな輪」を広げる「0円ぐるり」の関係人口として関わってみませんか?

未来に続く大きな輪となって、100年後の子供たちにも大きなプレゼントができるかもしれません。

”あきたの物語”プロジェクト〜秋田市雄和「0円ぐるり」現地サポートスタッフ募集〜

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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