枝の雪解け、晴れ空にアメ色が映える。400年続く冬の風物詩「大館アメッコ市2024」の賑わいに迫る【秋田県大館市】

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大館市観光交流施設「秋田犬の里」の前にある忠犬ハチ公像と飾りアメ

秋田県大館市の冬行事、「大館アメッコ市」。2024年は2月10日と11日に開催され、来場者数は2日間で8万3千人(主催者発表)。秋田県内外から多くの人が、会場の「おおまちハチ公通り」に押し寄せました。

同年1月、秋田駅中央改札口で高さ3mを超える「ジャンボ枝アメ」が人目を惹きました。自由に取って食べることができる黄色やピンク色のアメはだんだん少なくなり、最後にはきれいになくなっていました。

幼心に筆者が覚えているのは、雪の中の寒さとアメがついた枝、そして時々歯にくっつく優しい甘さのアメ。筆者が40年ぶりにアメッコ市に行って感じた「大館というところ」へご案内します。(取材・執筆 田畑詞子)

◆アメは不思議と、元気の力に

赤みのあるミズキの枝にアメを付け、稲穂代わりに神前に供えたことから始まったとされる「アメッコ市」の起源は天正16年まで遡り、400年の歴史を誇る民俗行事です。お供えしたアメを食べて邪気を払ったそうで、その後「アメッコを食べると風邪を引かない」と言われるようになりました。筆者はかつて、大館のアメを食べると、風邪を引いていても不思議と元気が出てくるように感じたものでした。

開催2日目、朝9時にアメの即売会が始まります。大館駅から徒歩で会場に向かった筆者は、一級河川である「長木川(ながきがわ)」の橋の上で「枝アメ」を手にする人に出会いました。朝6時に秋田市の家を出て車で来たというご夫婦が、早々に買い求めた「枝アメ」を車にいったん置いてからまた会場に向かうとのこと。

しまった。枝アメが欲しいなら、朝早いほうがよいのだとそのときはじめて知りました。

◆まずは神前で、無病息災を願う

袋に入れて神前に供えられたアメ。御札の裏には、アメッコ市の由来が書いてある

10時半。通りには即売会のアメを買い求めた人や、露店の飲食を楽しむ人でいっぱいです。

行く手にある鳥居が目に止まり、行列に並び祈願を待ちます。雪のない穏やかな寒さは、珍しく陽射しが差し込み、ミズキに飾ったアメの色が美しく映えます。

自分の順番が来て、この一年を健康に過ごすことができますように、と二礼二拍手一礼。そして、お供えのアメの袋をいただきます。早速封を開け、ひとつ口に入れると、その味と舌触りが懐かしく感じられました。

◆一斗缶仕込みの「からみアメ」はいかが?

棒に絡めたアメを口に入れてもらう子ども。大人も同じように、口を開ける

アメッコ市で人気のある「からみアメ」のふるまい。2回あるふるまいのうち、1回目は並んでいる人がとても多かったので諦め、1杯500円の地元産「中山そば」を注文して食べ始めた筆者。すると、近くに座るカップルが、からみアメの話をしていたので、一緒にいた女性に聞いてみると、「柔らかいべっこうあめのようで美味しい。行列でも思ったより長い時間並ばなくて済むから、終了時刻の少し前に行っても大丈夫」といわれつつも、開始10分前に並んだ筆者。

マスクを外し、アメを絡めた棒を口に入れてもらうと、ひんやりした柔らかい甘さがすーっと溶けていきます。材料は米アメと麦芽アメだそうで、昔ながらの味を知り、なんだか「大館っ子」の気分が湧いてきました。

「からみアメ」の行列は思っているより進行が早いので、行列ができていても諦めず並ぶことをおすすめします。

◆待ちの秋田犬、その素顔に出会う

こざくらちゃんの後ろ姿。人間の年齢だと7歳で、周りの人やパレード仲間が気になるよう

2023年に生誕100年を迎えた秋田犬「忠犬ハチ公」の故郷・大館。筆者は、個性豊かな秋田犬10頭による「秋田犬パレード」の待機場所に居合わせました。

出番30分前、近くの人たちの注目を浴びる「こざくらちゃん(赤毛・7ヶ月)」「杏子(あんず)ちゃん(白毛・5歳)」は、大館観光交流施設「秋田犬の里」の展示室でお目見えすることもあって、スマホのカメラが自分に向くのも慣れっこです。パレードの先頭、「法姫(はつひめ)」は7歳。人間の年齢だとだいたい54歳で、最終回の出番直前をじっと冷静に待っています。

30分間に及ぶ「秋田犬パレード」は、リハーサルなしのぶっつけ本番です。2024年は1日目に2回あったが、2日目は1回限り。一列に並んで行進する秋田犬たちは、意外とすぐに通り過ぎてしまうので、このように彼らと一緒に近くでパレードの出番を待ってみると、秋田犬たちの思わぬ素顔をのぞけるかもしれません。

◆賑わいを支えた、ボランティアスタッフの力

露店が軒を連ねる「おおまちハチ公通り」の人出の多さ、あちこちに見える人の行列の他に目に止まったのが、「護美(ごみ)ステーション」。飲食した後のゴミを捨てるためのエリアで、数年前から設置しています。また、ゴミ拾いスタッフの労力で、会場周りは散らかる様子なく、アメッコ市は終盤に近づいていました。

2024年は12団体が活動に携わり、その多くは学生さんやシニア層などによるボランティアだそうです。筆者は会場でボランティアの方々の休憩室を見かけ、忙しい中ひと息つく人の様子がうかがえました。

一日で4万人に及ぶ人出となったアメッコ市は、ボランティアスタッフによる多大な尽力が、その賑わいを支えているのです。

◆アメ売りの店を増やし、祭りを維持する

アメッコ市終了近く、祈願に並んでいた兄弟2人。突然、ミズキをもらえて驚き嬉しい

「一般社団法人大館市観光協会」の畠山喜満(はたけやま・よしみつ)さんに、アメッコ市の開催を維持していくための課題を聞きました。

「2024年のアメッコ市は80ある露店のうちアメ売りの店は14店だったが、25年前の平成11年には76店あった。かつて、アメッコ市のためだけにアメを作る農家さんがいたが、高齢化を伴い、年々アメの販売者が少なくなっているのが現状。今後も祭りを維持するために、アメ売りの店を増やすことが必要」

通りを歩いていると、お昼過ぎには売り切れと書いた札がつく店もありました。これからも、現地に来た人たちにはぜひ、大館名物のアメッコをお土産に買って帰ってほしいと思います。

また、大館市観光案内所で旅行客の応対を行う畠山さんは「今までになかった魅力あるイベントを作っていくことも必要」と、さらに続けてこう言います。

「何かをやるとなったら、それを情報発信し、実際に来て、思い出を作ってもらい、また来てもらう時には、もてなしたい」

筆者は秋田市移住者だが、父方の祖母が大館市に住んでいたので、大館には馴染みがあり、心理的な関係人口といえます。訪れた土地に愛着が湧き、一度行っただけでは物足りなさを感じる。見たもの、食べた味、出会った人との関わりが、次につながります。

そして、その人の心のなかに「大館というところ」の印象が深く残り、未来もまた、旅してほしいと筆者は願います。

【サポートスタッフの関わりしろ】

・アメッコ市当日の会場場設営
・当日の来場者の案内や誘導
・その他、当日の実行委員会のサポート
・SNSなどを通じた祭りのPR活動支援

【連絡先】

大館アメッコ市実行委員会事務局
0186-42-4360
公式Facebookページ
https://www.facebook.com/odate.amekko/?ref=hl
担当:畠山喜満 y-hatakeyama@mx32.tiki.ne.jp

田畑詞子

田畑詞子

秋田県秋田市

第1期ハツレポーター

1978年秋田県生まれ。清泉女子大学文学部英語英文学科卒。東京で就職後、いったん帰秋。2017年、横浜在住時にライター養成講座に通い、その後地元秋田でWeb記事の取材・執筆活動に携わるようになる。
日々の暮らしをブログに綴ったり、親しい仲間や縁遠くなった友人へ手書きのZINEを書いて送ったりと、書くことが好き。エッセイや小説へも関心がある。

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