好きを続けて自分らしく!秋田のキャサリンが12年大切にしてきた、人と人とのつながり【秋田県秋田市】

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その日で終わるはずだった、とりあえずの仮装。

2013年に100円ショップで買った金髪のかつらをかぶった。周囲から「意外と似合う」「面白い」などの反応があり、その見た目から「秋田出身18歳の帰国子女キャサリン」と名付けられた。

着始めて10年以上になる半袖セーラー服と麦わら帽子の彼女に、出会ったことはなくても知っているという人は、ここ秋田に多かれ少なかれいる。

仮装していても自分を飾らず自然体だから、現地に行くといつのまにかそこに溶け込む女子高校生キャサリン。

「キャサリン」として秋田で活動して12年目に突入した彼が大切にしている、人と人とのつながりの実際に迫った。

金髪のキャサリン、誕生秘話

「仮装してその辺をうろちょろしていて」といわれた2013年9月28日・29日、能代市(のしろし)で開催された大規模野外イベントでのこと。

運営スタッフとして場を盛上げる役目だった彼は、取り急ぎ、100円ショップで買った金髪のかつらをかぶった。彼はイベント運営スタッフから「意外と似合う」・「面白い」などの声を受けたという。

「キャサリンじゃ〜ん?」「そうだねぇ!」キャサリン誕生のきっかけは、意外なことに周りの人たちの反応だった。周りとの会話の中で自然と生まれたのが「キャサリン」なのだ。

ヒゲダンスで場が盛り上がる

彼の活動の原点は、キャサリン誕生から2年ほど前にさかのぼる。それは2011年に秋田市大町で初めて開催されたオールジャンルダンスイベントだ。

主催者スタッフとしてイベントの立ち上げに関わり、イベントをゼロから作る大変さと楽しさを感じ、深い感動を得た彼はその後、「イベントに出演してみたいけど踊りは下手。踊れないけれど、イベントに出たい」と思い悩んだ。

ふと「ヒゲダンスならできるかも?」と思い付き、翌2012年に知り合いとコンビを組み、昔、大人気だったドリフターズのヒゲダンスの定番であるヒゲと衣裳を身につけヒゲダンスを披露した。

ヒゲダンスが流行した1970年代を知る観客層はそれを懐かしみ、若い世代の人たちは興味津々で彼の登場に反応した。

「踊りは下手でも場が盛り上がった」と話す彼は、いくつかのイベントでヒゲダンスを披露するようになった。その後彼は「キャサリン」として秋田県各地のイベントに出向くようになり、その数は年間100件に及ぶまでになった。

その日で終わるはずの「キャサリン」が10年以上続いている、その原動力はヒゲダンスにあるといっても過言ではない。

周りのダメ出しがあって今がある

周りから言われたダメ出しを味方につけてキャサリンとしての自身を磨いてきた。

今でも油断するとガニ股になってしまうこともあるから、仮装時の意識の切り替えも必要。

すね毛は処理して、化粧は知り合いに頼みつつ半年で覚え、今は自分でメイクを施している。

以前から彼を知っている筆者だが、元々目鼻立ちがはっきりしているので化粧が似合う。しかも、化粧直しはしないそうだが、それがかえって自然な雰囲気を感じさせる。

「やっていることはシンプル。この格好でうろちょろしているだけ」と彼は言うが、それだけでいつのまにか行った場所に溶け込んでしまうのが、何とも不思議だ。

踊るキャサリン、お盆は超多忙

2024年8月19日、一日市盆踊りで浴衣を着て踊るキャサリン

キャサリンは、秋田県八郎潟町(はちろうがたまち)の「一日市(ひといち)盆踊り」に5〜6年前から参加している。

400年以上の歴史がある一日市盆踊りは、仮装して踊る「競演会」があることが、他の盆踊りにはない特徴だ。

キャサリンは地元町民にとって特に珍しい存在でもなく、周りから「また来年もよろしくね」と声をかけられた。今年2024年は、8月18日〜20日の3日間と前夜祭を含めた4日間、秋田市内から約40km離れた八郎潟町を往復した。

しかも、今年は本番に向けて町の盆踊り講習会にも参加して本格的に踊りに磨きをかけて臨んだ。

さらに8月21日には、秋田県鹿角市十和田(かづのしとわだ)の「毛馬内(けまない)盆踊り」で、着物姿で参加した。

キャサリンのタフでフットワークの軽さに驚くが、秋田県の色々なところに「行くと元気をもらえるから疲れない」とは、凄い。

自分は渦。動き回り、人を巻き込む

キキになったキャサリン 2024年6月3日、秋田県児童会館で開催された「秋田シティブラスバンド定期演奏会」にて

「自分は渦だもんね。常にぐるぐるまわり続けているエネルギーだから、周りの人に波及する」とキャサリンは言う。

キャサリンの姿を見た人からは色々な反応がある。キャサリンに近づく人、写真を撮る人、気になってチラチラ見る人など。

出会った人とは、一歩進んだつながりも生まれる。例えば、秋田市内の飲食イベントに出店していた県南在住の店主と知り合いになり、さらにその知り合いも集まる会にキャサリンが参加すればそこは「キャサリン会」となる。

この交流会は、キャサリンが秋田市内の飲食イベントで知り合った店主が住む、由利本荘市(ゆりほんじょうし)で開催されるはずだった「第38回菖蒲カーニバル」が大雨被害で中止となったことがあり、キャサリンが声かけをし実現した。

「キャサリン会」は7〜8年ほど続いていて、昼はランチ会、夜は飲み会でこれまで本荘市、にかほ市、八郎潟町などで開かれてきた。渦のようなキャサリンにはどんどん人がひきつけられていく。

キャサリンの活動は、SNS発信が2割ほど。8割はアナログの行動で、このように人とリアルにつながる。

声をかけると、関心に変わる

「秋田は山や海などの自然が美しいのはもちろんだけど、何よりも人が魅力。秋田には優しくて心が温かい人が多い」と彼は言う。

「イベントに行って楽しかったね、とただ帰るだけじゃなく、その気持ちを主催者やスタッフの人にひとことでいいから声をかけしてほしい。花火がきれいだったら『よかったよ!』とか、行った先でおいしいものを食べたら『おいしかったよ』だけでもいい。

全く言葉がなければ無関心。だから、そういうひとことがあればお互い関心に変わるし、それが人とつながるということだから」

好きなことを続けて、自分らしく!

「仮装している自分が黒歴史となるだろうか?自分の人生が終わる時、なんでこんなことをしてたんだ?と思うのか、それとも、これがあったから今の自分がいると思うかは、渦に巻き込まれた人のつながりの歴史が証明してくれる」とキャサリン。

キャサリンは2018年から占いを学び始め、2023年にルノルマンカードという占いの技法に出会い、現在独学中で今後は本格的な占いを武器に活動するという。

「好きなことを好きなようにやり続けると自分らしくいられるよね」

2024年10月は秋田県内某所のハロウィンイベントに参加予定とのこと。

キャサリンの今後の活動が楽しみだ。

2024年8月25日、さくら内科糖尿病クリニックで開催された「第4回けあマルシェさくら」占いコーナーにて(右は筆者)

情報

☆キャサリン公式インスタグラムアカウント
@catherine.akita
秋田県各地で撮影された1000以上の写真投稿「キャサリン日記」を閲覧できる。

田畑詞子

田畑詞子

秋田県秋田市

第1期ハツレポーター

1978年秋田県生まれ。清泉女子大学文学部英語英文学科卒。東京で就職後、いったん帰秋。2017年、横浜在住時にライター養成講座に通い、その後地元秋田でWeb記事の取材・執筆活動に携わるようになる。
日々の暮らしをブログに綴ったり、親しい仲間や縁遠くなった友人へ手書きのZINEを書いて送ったりと、書くことが好き。エッセイや小説へも関心がある。

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