あなたに伝えたい、これからのこと

10年後の「私」へ

詞子さん、お元気にしていますか?
秋田の街は今、どんなかんじですか?
日赤跡地の商用ビルはたくさんの人でにぎわっていますか?
もしかして、秋田じゃなく、東京かニューヨークに住んでいたりするのかな?

さて、今日、32歳の私があなたに手紙を書いているのには訳があります。

平成23年3月11日(金)午後2時46分、東北にマグニチュード9.0の地震が発生し、それに伴う大津波のため、想像を絶するほどの大きな被害により、多くの人々の命が失われました。また、福島の原子力発電所の原子炉(建屋)が爆発し、周辺住民は避難生活を余儀なく強いられています。最終的に、死者は数万人に及ぶものとみられます…。

そのような悲惨な状況の中で、あなたが今ここにいることは、奇跡的なことなのです。あたたかいごはんを食べ、あたたかいお風呂に入り、あたたかい布団で眠ることができるのは、とても感謝しなければならないことなのです。あなたが今、もし壁にぶち当たっているとしたら、それはなんてことはありません。あなたは「夢追い人」として選ばれた人なのだから、今、自分が置かれた状況をありのままに受け入れながら生きていけばよいのです。どうぞ、おからだにはお気をつけて…。

平成23年3月15日(火)正午 32歳の詞子より ※一部()で補足

10年前の自分から届いた手紙へのメッセージ

これは、10年前の私が、10年後の私に宛てて書いた手紙です。手書きした2枚の便箋を封筒に入れ、「10年アルバム」の最後のページのポケットにしまっていました。

そして、震災から10年という日が訪れ、意を決して開封することにしました。今ここで、10年前の私に返事を書きたいと思います。

あの日から10年なんて、あっという間です。当時の私は同じ東北にいて、無力感だけを抱いていましたね。

それでも、私の小さな力が大きな力になる出来事がありました。

震災発生から1か月半後、私を含めた17人の野菜ソムリエたちで力を合わせ、水菜を混ぜたキャベツの千切り、きゅうり、ミニトマト、パプリカの野菜の詰め合わせを500食分作り、応援メッセージを添えて被災地に送ったのです。「生の野菜サラダが食べたい」という現地からの声を受けて作った、すぐに食べられる新鮮なそのサラダは、たくさんの人に喜んでもらえたのではないかと信じています。

それから6年経ち、秋田を離れましたが、今またこうしてここ秋田で温かいご飯を食べ、お風呂に入り、暖かい布団で眠ることができています。

ところで、そんな今の私が「選ばれた人」だと聞いて驚いています。どうして選ばれたのでしょう? いくらでも深く考えることはできそうですが、どんな困難にも打ち克つ心の準備ができているからかなぁと思っています。秋田に住みながら心でつながった仲間がいる。同じようでもみんな、ひとりひとりが違う。そしてあなたが期待していたように、個が輝く時代になったんです。まさに自分をありのままに受け入れながら生きていけるのです。これからも相手を想い、受容しながら自身の人生を最期まで活かし尽くしたいと思っています。

そして今、その「夢追い人」は仲間とともに、こうありたいと思う未来の実現に向けて着々と歩み始めています。2030年という、そう遠くはない次世代。想像を超えたさらなる10年後のすべては、私たちのこれからにかかっています。

被災による多くの犠牲者や避難生活をされている方々の希望を背負いながら、一緒に進んで行きましょう!

最後に、あなたからの手紙が10年後の自分の気持ちを新たにさせてくれました。ありがとう、また会う日まで。

令和2年3月11日(木) 42歳の詞子より

田畑詞子

秋田県秋田市/第1期ハツレポーター

秋田出身。2001年清泉女子大学文学部英語英文学科卒業。東京、横浜から2度のUターンを経た後、現在は地元秋田で新しい発酵文化を創るために活動中。一般社団法人日本スイーツ協会スイーツコンシェルジュ、記事の取材・執筆に携わる。希望は泡立て器とペンで生きること。これからは「ことばの森」を育てたい。