読者の皆様は「コンセイエ」という言葉をご存知だろうか?それはフランス語で「助言をする人」を意味し、お客さまの要望に応じて的確なアドバイスをして販売するプロフェッショナルである。そんな人物がこの「かめや」にはいる。それが亀谷行子(かめや・いくこ)さんなのだ。1998年に秋田県で初めて認定されて以来、コンセイエとして現在まで活動されている亀谷さんに今回取材を伺ってみた。
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およそ3500本と800種のワインが目白押し!!
大仙市刈和野の旧国道13号(県道10号)線沿いにあるワインの店「かめや」。中へ入ってみると店内全体がワインセラーのようになっており、薄茶色のレンガの壁と各所に雑貨や世界各国のミニチュア国旗が置かれ、店内に流れているクラシック音楽が心地いい雰囲気を醸し出している。店内の3分の2ほどをフランスやイタリアなどのプレートがついた木組みのワイン棚が占めている。並ぶワインはざっと80種類、3500本の上品なワインのお店だ。
素敵な笑顔の女主人が込めたワインへの「情熱」
店主の亀谷行子さんは物腰柔らかで笑顔が素敵な「おしゃれな女主人」といった印象を受けた。戦前から三代続く酒屋「かめや」が「ワインテラス かめや」になったのは97年11月。会社勤めのご主人に代わって、店を切り盛りしていた行子さんの一大決心だった。「改装して開店した時は、まさに背水の陣でした。売り上げが落ちたらもう死ぬしかない。それぐらい必死でした」と語った。
改装の理由はその頃近所にできたディスカウント店の影響を受け、売り上げも厳しくなった事。なんとか生き残りをかけようと行子さんが「好きなワインで挑戦してみたい」と経営方針を転換し、98年11月にリニューアルオープンした。そして「背水の陣」は成功した。当時、赤ワインをきっかけとしたワインブームが追い風となり、各地から多数の常連客が来るようになった。
行子さんのワイン好きは本物で、90年にはメルシャンワインの「ワインコム」というアドバイザーを取得し、97年にワインアドバイザーの基本技術講習会を受けて、県内にはたった10人しかない「一般社団法人日本ソムリエ協会」の会員になった。さらに98年に県内で初めて「コンセイエ」の認定試験に合格している。前述の通り、「コンセイエ」とはフランス政府の外郭団体・フランス食品振興会が始めたワインの販売員認定制度で、小売店で消費者のワイン選びをアドバイスしたり、店舗全体の販売戦略を練ったりするワイン販売の総合アドバイザーである。
平たく言えば小売店版「ソムリエ」であり、ワインに関する知識に加え酒店経営への理解なども必要であるため、当時で日本全国の合格者は150人ほどしかおらず、東北にはまだ6人しかいなかった。
「ワインの魅力ですか?そうですね、中身が濃いという事かしら。ロマンが限りなくあるという事かしら。1本のビンを見ていてもそのワインの生まれた故郷の歴史や地理、ブドウの品種など、とても話題が多いんです」。とにかく「味は自分で確かめてみないと気が済まない」ほどのワイン通なのだ。
実際、店内には世界各国のワインがびっしりと並べられており、素人でも興味が持てるようにビンの一つひとつに「フルーティーな味わいが楽しめます」「コクのある滑らかな本格派のワイン」「チェリーのような甘さ」とわかりやすい説明があり、それらを読むだけでどんな味なのかを容易に想像できる。さらに凝った説明になると「まるで花畑に足を踏み入れたように豊かに広がる華やかな香りとほのかにコクのある風味」「思わず踊りたくなるほど料理と良く合う」と素晴らしい名文も楽しめる。
ワインの仕入れは東京の輸入業者からで、一人でも多くのワインファンを増やしていきたいと1本400円の品から5、6万円の高級品まで幅広く取り揃えている。また外国のワインだけでなく、あのYOSHIKIがプロデュースしているワインも販売されており、コンセイエの名がだてではない事が伺えた。
ワインの達人から直々にレクチャーを受ける
取材を一通り終え、筆者も何かおいしいワインを1本買っていく事にした。売り場を回り、イタリアのワイン「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」を選んでみた。
行子さんいわく「モンテプルチアーノはイタリア中部、アブルッツォ州や同じくアドリア海沿岸の北西にあるマルケ州、“イタリアのへそ”と呼ばれているウンブリア州などで生産されているワインで、黒ブドウの品種が使われていて、タンニンが豊富でフルーティな味わいが特徴です。その一方で酸味はあまりありません。さっぱりとした味わいで、イタリアの家庭の多くでデイリーワインとして常備されているだけあって、大抵のイタリア料理やスイーツにマッチすると思います」と語った。値段もおよそ1,500円とコスパも抜群だったので購入する事にした。後日、筆者の自宅で実際にパスタと一緒に味わってみると、これまた非常においしい。確かにフルーティな味わいで重厚感はあるものの、飲み心地はさっぱりしていた。単体だけでもおいしいが、なんといってもご飯や果物ともマッチするのがたまらなく良い。
行子さんは「初めてという人にはとりあえず1,500円ぐらいのワインを勧めてみます。それを飲んでみてワインのおいしさ、コクの深さがわかってもらえたら良いと思います」とも、語っていた。
刈和野には全国のワイン好きが集まる憩いの場がある!!
今年も11月21日にボジョレー・ヌーボーが解禁されるが、この店でさっそく予約をしてみた。やはりワインの説明があるのとないのとでは天と地ほどの差がある。一流のプロが説明するからこそ説得力があり、「ワインが欲しくなってくる」と購買意欲が湧いてくるというものだ。刈和野は俳優・柳葉敏郎の出身地であることや伝統行事の大綱引きだけでなく、このワインテラスも魅力の一部であると断言しよう。全国のワイン通は一度、ここへ足を運んでみてはいかがだろうか?
情報
ワインテラス かめや
住所:秋田県大仙市字刈和野365
TEL:0187-75-1124
FAX:0187-75-2124
e-mail:kamail@mvc.biglobe.ne.jp
公式facebook:https://www.facebook.com/wineterraceKameya/
営業時間:9:00〜20:00
定休日:不定
アクセス:JR刈和野駅出口から徒歩約9分