1553年の文献「参詣道中日記」に初登場する「せとのそめいい」ですが、もち米を蒸したものをクチナシの実で黄色く染めてすりつぶし、小判型に薄く延ばして干して乾かした携帯食です。
くちなしの汁を混ぜ合わせた染飯は、足腰の疲れをとる食べ物として東海道を通る旅人に大変人気があったそうです。
特に、西に大井川、東に宇津ノ谷峠(うつのやとうげ)という難所を控えた藤枝宿では、気力や体力を癒してくれるため、ぜひとも必要なものだったようです。
その「染飯」の歴史を展示している、千貫堤・瀬戸染飯伝承館を訪ねました。
かつて大井川の氾濫(はんらん)を防ぐために作られた堤防の上ある建物の中には、当時の様子が模型などで分かりやすく展示されていました。
当時はこのような竹の経木に包んで売っていたようです。
版木(スタンプ)の種類も、お店ごとに違っており、それぞれ味も違ったんだろうなと想像しました。
どうしても食べたくなり、伝承館のスタッフの方にお話を聞くと、現代にも「染飯」を食べられるところを教えてくれました。静岡県藤枝市にある「喜久屋」さんというお弁当屋さんが、現代に合うように、おにぎりとして受け継いでいるようです。
早速訪ねてみると、本当に売っていてうれしくなりました。
当時の干し飯と形は変わっていますが、あの織田信長の記「信長公記(1582年)」に信長一行が藤枝を通過した際、「瀬戸の染飯とて皆道に人の知る所あり」と書かれている歴史的な食べ物を実食してみました。
味はもち米を蒸した甘い味で、見た目の黄色のクセはありませんでした。
450年前の味なのかと思うと、とても感慨深いものでした。
何も知らないで食べるのと、歴史を知った上で食べるのでは、味は一緒かもしれませんがずいぶんと感じ方が違うと思いました。
現代に生きる人が伝承・継承していかなければ、途絶えてしまうと感じたのでこれを機に、静岡県藤枝市の魅力を探っていこうという気持ちにさせてくれました。
情報
千貫堤・瀬戸染飯伝承館
住所:〒426-0035静岡県藤枝市下青島1006-3
喜久屋
住所:〒426-0034静岡県藤枝市駅前1丁目6-19