県庁所在地である福島市。その中心部にあるJR福島駅は街の顔とも言える存在だが、ここ数年、大型商業施設の相次ぐ撤退により駅周辺地域に陰りが出てきている。そこで先月開催された市内在住外国語ガイドと市職員の意見交換会を通じて、進行中の福島駅東口再開発の取り組みとその課題を紹介したい。
目次
福島駅という街 – 東西で異なる表情、共通の課題
県北に位置する福島市は、仙台駅から東北新幹線で約25分という好アクセスに加え、飯坂や土湯などの温泉地や磐梯朝日国立公園の一部である吾妻山などの自然にも恵まれた観光都市でもある。駅東側には映画館のある複合商業施設や飲食店などが集積し、一方、西側には閑静な住宅街が広がっている。東西で異なる表情を持つ福島駅周辺だが、共通の課題を抱えていた。
分断された東西 – 再開発が目指す一体化
駅東西を行き来する歩行者にとって地下通路は便利である。しかし、この通路はもともとJRが工事用として40年以上前に建設したものであり、天井が低く水路があるなどの構造上の問題から「暗い・怖い・圧迫感がある」と市民からの不満の声が多かった。また、近年では西口・東口双方で大型商業施設の撤退が相次ぎ、中心市街地の賑わいが大幅に減少するという深刻な課題に直面している。特に昨年5月には西口の象徴的存在であったイトーヨーカドー福島店が閉店し、地域住民の生活利便性にも影響を及ぼした。こうした課題に対応するため市は昨年秋、東西交流を促進し地域全体の発展を図るための一環としてJR福島駅コンコースを直接通行可能にする社会実験を実施した。
東口再開発 – 変遷と苦悩、そして新たなコンセプト
福島駅東口では、「福島駅東口地区第一種市街地再開発事業」(通称:東口再開発)が進行中である。この事業は5年前に閉店した老舗デパート跡地を中心に、商業施設やオフィス、公共施設を含む再開発を通じて、中心市街地の活性化と交流拠点の整備を目指す計画であった。しかし、原材料費や人件費の高騰、新型コロナ禍の影響など複数の要因により、計画は何度も大幅な変更を余儀なくされた。特に、当初予定していたグレードの高いシティホテルの誘致断念は大きな痛手となった。
これを受け、昨年6月の市議会で縮小案が可決され、コンベンションホールを中核とした複合ビルへの変更に見直された。新たに「FUKUSHIMA EGG」というコンセプトを掲げ、未来への可能性を象徴し、人々が集い成長する場を目指している。
市民の声 – 期待と不安、そして行政の模索
事業に対する市民の意見は多岐にわたる。会場参加者からは「観光客が楽しめる施設や体験型観光の充実をどう考えるのか」「高単価の宿泊客を呼び込み、福島市の通過点化を解消することが地域活性化につながるのではないか」「福島ならではのオンリーワンを強調するために具体的な施策をどう進めるのか」といった声が挙がった。また一方で、行政側にも苦悩がある。計画の変更を余儀なくされた背景には、社会情勢の変化や経済状況の悪化など、行政の力では制御できない要因が絡んでいる。計画の見直しや市民との対話を重ねる姿勢は、再開発をより良い形で実現しようとする意欲の表れだが帰着点は遠そうだ。
将来への展望とは?
福島駅東口再開発は、単なるインフラ整備にとどまらず、市全体の未来を形作る重要な施策である。広義で仙台商圏にも入ってしまう福島市特有の地域性もあるが、地方都市が直面する人口減少や中心市街地の衰退といった共通課題を再認識する契機となるだろう。再開発は地域住民の生活や文化、将来を見据えた事業であり、東西一体となった再開発が福島の未来に与える影響は、行政と市民の協力、そして我々一人ひとりの意識にかかっている。今後の再開発の動向に注目していきたい。
参考資料:うえいく? ~えきなか通る!社会実験~(福島市役所)、令和3年度 福島県市町村民経済計算の概要(福島県)、東口再開発の見直し方針(福島市,福島駅東口地区市街地再開発組合)