八女津媛神社は、信仰の起源を連想させる場所だった【福岡県八女市】

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「八女」という地名の起源は古く、奈良時代の720年(養老4年)に完成したといわれる『日本書紀』にその名前を見ることができる。

「景行天皇が、7月7日八女県(やめのあがた)に着かれ、藤山を越えて南の粟先(あわのさき)をご覧になった。

『この山の峰々は大変美しい。きっと名のある神がいらっしゃるのだろう』

一緒にお供をしていた水沼県主猿大海(みずぬまのあがたぬしさるおみ)は、『女神がいらっしゃいます。名前を八女津媛(やめつひめ)とおっしゃいまして、常に山の中にいらっしゃいます』と答えた」

※参考資料:『日本書紀』(上)全現代語訳 宇治谷 孟(講談社学術文庫)より巻第7 景行天皇 秋7月7日の段

これが八女の地名の起源である。そしてこの八女津媛を祭神とした神社の創建は719年(養老3年)といわれている。

八女の起源である八女津媛神社へ

八女を取材するにあたり、行っておきたい場所のひとつが「八女津媛神社」である。日本書紀にも出てくるという、なんとも歴史ある神社である。

創建は719年(養老3年)ともいわれ、1300年以上の歴史がある。それほど昔から人々の心のより所となり、深く愛され、神事として5年に1度の八女津媛神社の浮立(ふりゅう)が続いている。

神社へは車で行くことができ、駐車場もある。途中の道からは大きな木や鳥居も見える。

駐車場から歩いていき、すぐに森の中へ。やがて歩いていくと神社の横へ出る。

境内には、八女津媛が顔を洗ったであろうといわれている「媛しずく」や夫婦岩、そして八女津媛の像もあった。

窟(いわや)からしたたる水は、雨が降り大地に染み込み、時間をかけてろ過されているみたいだ。滝のように出るのではなく、少しずつしたたるので、一滴一滴に命が生み出されているように感じた。

窟(いわや)から絶えず滴が落ち、生命力に満ちあふれていた
別名「美人の水」とも
八女津媛と夫婦岩 神々しい写真が撮れた

寄り添いたくなる神の窟(いわや)

「媛しずく」を遠目から見ると、写真の様子から分かる通り、すぐ上には無数の石や岩で構成された窟(いわや)がある。

上にこれだけの石や岩があると、圧迫感や押しつぶされてしまいそうな気にもなるのだが、ここではそう感じなかった。

空気が澄んでいて、静かな中に緊張感がある。かといって怖いという感覚ではなく、自ずとそばによってひざをつき祈りたくなる感覚。信仰というものがこういった場所から始まり、やがて広がっていき、聖地になるんじゃないかという思いにもなった。

そして、ここと同じような空気を感じたのが、宮崎県高千穂の天岩戸神社にある「天安河原宮」。かつて日本神話の中で天照大神が「天岩戸」に隠れた時、八百万の神々が相談したといわれた場所。

その空気感がそっくりだった。

後になって知ったが、八女市にも「日向神峡」があり、ここの景色が素晴らしく神々が寄った場所もある。

神がいるという共通点、宮崎の日向と八女市の日向という地名の共通点、そしてこの空気感。偶然とは思えず、太古より人はこういうところを、心のより所にしているのではないだろうか。

雰囲気はここにこないと分からないが、確かに神聖な気持ちになる

窟の一角には少し崩れた場所があり、お地蔵さまが安置されていた。誰かが置いていったのかもしれないが、手を合わせたくなる気持ちも分かる。

女神湧水と権現杉

正面の鳥居から参拝すると、脇には「女神湧水」が流れている。

湧水をくめるように柄杓が置いてあります

これまで一度も水が枯れた事はなく、また大雨でも水は濁ったことがないといいます。

そして、「ごんげんさん」と親しまれ、八女市の指定天然記念物(かつての矢部村文化財指定天然記念物)で推定樹齢640年を誇る「権現杉」が見守るようにそびえ立っていました。

見守ってくれている存在です
1981年(昭和56)年でこの大きさ
高すぎて先が見えません

八女の起源を知って思ったこと

八女の起源であろうこの地を訪れて、信仰の起源を垣間見たことや、神話に一部に触れられたことで思ったことがある。私にとってただの取材ではなく、現代において、人間本来の自然に対する畏敬(いけい)の念を感じられたことは大きな意味になったと思う。

*写真は全て筆者撮影

情報

八女津媛神社
住所:福岡県八女市矢部村北矢部4014番地(神窟)
交通:堀川バス 石川内バス停下車 1.3キロメートル
*バスは本数が少ないので注意
アクセス:八女ICから国道442号線を車で約60分

久田一彰

久田一彰

福岡県福岡市出身。
取材を通じて、そこにあるヒト・モノの魅力・ストーリーをお伝えします。

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