
いつも見慣れた場所に、見慣れない木の柱と小さな望遠鏡が立っていました。
「いつかこれを設置しようと思っちょったんよ」
そう話してくれたのは、見知った地元の方。
2025年9月6日、山口県周南市(しゅうなんし)の北部、鹿野(かの)地域の観光スポット「ライオン岩」のビュースポットを訪れました。
山の岩肌がまるでライオンの横顔のように見えることから、その名がついた場所です。
その日、ライオン岩のビュースポットそばを通りかかると、木の柱に小さな望遠鏡が取り付けられているのが目に入りました。
望遠鏡は、まっすぐライオン岩の方向を向いています。

「いったい何を見るためのものだろう?」
そう思って眺めていると、軽トラックで地元の方が到着し、丸太を切った木材を運んで来られました。
顔見知りでもあったため声をかけると、「この丸太、あそこに乗っけてくれんか」と頼まれました。
せっかくのご縁だと思い、設置作業を手伝うことに。
日差しや雨を防ぐための屋根を取りつけると、小さな望遠鏡が完成しました。

作業の合間に、気になっていたことを尋ねてみました。
「この望遠鏡、もしかして観音様を見るためのものですか?」
「そうそう。それを見るために作ったんよ」
やはりそうか、と、心の中で納得しました。
ライオン岩があるこの山は岩屋山といいます。その「ライオンの鼻」にあたる部分には観音堂があり、本尊として如意輪観音(にょいりんかんのん)がまつられています。
ただし、この観音堂へ直接たどり着くには、さびた手すりだけを頼りに、断崖のような岩肌を登らねばならず、非常に危険です。
この望遠鏡が設置されたことで、遠くからでも安全に観音堂を拝むことができるようになりました。

秋には、ライオン岩のたてがみに見立てられた山の木々が紅葉し、真っ赤なたてがみを持つ「ライオン」の姿が現れます。
これから訪れる紅葉の季節、ライオン岩とその鼻先にたたずむ観音堂を、ぜひ望遠鏡越しに眺めてみてくださいね。





