
目次
青く染まる“ブルーシティ”との出会い
旅行先を探す旅人にとって、インド北西部ラジャスタン州にあるジョードプルは強烈な印象を与える街である。旧市街一帯が鮮やかな青色に染まり、“ブルーシティ”として世界中から注目を集めている。熱気、香り、人の動き―そのすべてが濃密で、旅の高揚感を一気に引き上げてくれる空間である。

なぜ街は青いのか? 諸説に満ちた街の知恵
ジョードプルの街を歩くと、丘の斜面に並ぶ無数の青い家々が旅人を迎えてくれる。なぜこの街は青いのか、については諸説がある。
バラモン階級の家を区別するためであったという説、石灰に青を混ぜることでシロアリ避けの効果があったとされる説、強い日差しを反射して涼しく見えるためという説など、多くの理由が語られてきた。
いずれの説であっても、この青色は人々の暮らしが生み出した智慧(ちえ)の結晶であり、旅人を惹きつける独特の魅力をつくり出している。

『ONE PIECE』アラバスタ編のモデル地と噂される理由
日本の若い世代にとって興味深いのは、大人気漫画『ONE PIECE』のアラバスタ編のモデルの一つがジョードプルではないかという説である。公式な発表はないものの、街の風景、犬の形をした銃、広場の中心の時計台、そしてメヘランガル砦の壮大さは、物語世界を連想させる。街を歩いていると「あのシーンのようだ」と感じる場所がいくつも存在し、旅に物語性を加えてくれる点が魅力である。



メヘランガル砦から眺める、息をのむ青の大地
ジョードプルの中心部には、巨大な岩山の上にそびえ立つメヘランガル砦がある。遠くからでも圧倒的な存在感を放つこの砦は、街の象徴的な建造物である。内部には精巧な装飾や宮廷文化の名残が残され、当時の王族の暮らしぶりを垣間見ることができる。砦から見下ろす青い街並みは、この地でしか出会えない特別な景観であり、夕刻には黄金色と青が混じり合う幻想的な光景へと変わる。


生活の息づかいが残る路地散策
旧市街を歩けば、スパイスの香り、カラフルな歩行者、チャイを飲む人々、ゆったりと歩く牛など、インドの日常がそのまま広がっている。観光地でありながら生活の気配が強く残っていることもジョードプルの魅力である。写真愛好者にとっても、光と影、色と人が交差するこの街は絶好の撮影スポットであり、シャッターを切らずにはいられない瞬間が次々と現れる。



世界遺産ではないのに、人々を魅了し続ける理由
ジョードプルは世界遺産ではないものの、多くの旅人にとって“インド旅行のハイライト”となる場所である。それは、この街が“唯一無二”の文化と景観を持ち、短い滞在でもインドの奥深さを濃厚に感じられるからである。デリーやジャイプルからのアクセスも比較的良いため、年末年始などの限られた休暇でも日本から訪れやすい点も魅力である。
ジョードプルの青い街並み、砂漠の風、砦の壮大さ、人々の熱気―それらすべてが旅人の心を刺激し、忘れられない体験をもたらしてくれる。
『ONE PIECE』に胸を躍らせた世代ならなおさら、この街の冒険心をくすぐる空気に魅了されるだろう。青の迷宮を歩きながら、自分自身の物語を紡ぐ旅を始めてみよう。
デリーからジョードプルへの行き方
1. 飛行機(最も快適・短時間)
- 所要時間:約1時間20分
- デリー(DEL)→ ジョードプル空港(JDH)
- インディゴ航空やエアインディアが就航
- 市内まで車で約15〜20分
→ 年末年始は混むため、早めの予約を推奨。
2. 列車(安価でインドらしい旅気分)
- 所要時間:5〜6時間(快速)〜10時間(普通列車)
- デリー駅からジョードプル駅まで複数列車が運行
- 年末年始時期は寒暖差がある季節のため ACクラス(寝台・エアコン)がおすすめ。
→ インド鉄道ならではの風景を楽しめる選択肢である。
3. 長距離バス(バックパッカーに人気)
- 所要時間:約11〜13時間
- 夜行バスあり
- デリー発 → ジョードプル中心街着
→ コスト重視の旅人向け。


※写真は全て筆者が撮影(2025.01.03)





