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「インドネシアのグランドキャニオン」と呼ばれる場所へ
インドネシア・スマラン郊外にある Brown Canyon(ブラウンキャニオン)。
近年、「インドネシアのグランドキャニオン」と呼ばれることもあり、旅行好きのあいだで写真映えスポットとして知られるようになった場所である。
切り立った崖が何層にも重なり、赤茶色の岩肌が朝の光を受けてやわらかく浮かび上がる。たしかに、その景色だけを見れば、思わず息をのむような美しさがある。

実は“自然がつくった景色”ではない
ただし、この景観は自然が長い年月をかけて生み出したものではない。
ここはもともと採石場、鉱山の現場である。建設資材を採るために人の手で削られ続け、その結果として、偶然のようにこの独特な地形が生まれた。
正式な観光地ではなく、入場ゲートも整備された遊歩道もない。それでも、観光本やSNSを通じて「まだ知られていない絶景」として紹介されてきた。

観光地と呼ぶには、少し違和感がある
実際に現地を歩いてみると、よくある観光地とは空気が違うことに気づく。
重機が動き、トラックが行き交い、土ぼこりの中で人々が黙々と働いている。ここでは、写真で見る“絶景”と、日々の労働の風景が同時に存在している。
なんでも観光地化すればいい、というわけではない。
それでも、この美しい景色をこれ以上削ってしまうのは、少しもったいないと感じてしまう自分もいる。一方で、ここで働く人々にとっては、この場所が生活の場であり、仕事の現場だ。外から来た旅行者が、簡単に答えを出せる話ではない。

それでも、今の姿を残したいと思った理由
Brown Canyonは「破壊されつつある自然」ではない。
最初から人の手によって形づくられ、いまもなお掘り進められている場所である。
この先、工事が進めば、やがて「がっかりスポット」と呼ばれる日が来るかもしれない。旅の世界では、そんな場所を何度も見てきた。
だからこそ、思った。
美しさと労働が同時に存在している、この場所の「いま」を記録しておきたいと。

旅とは、ただ美しい景色を消費することではない。その土地が抱える現実や時間ごと、そっと見つめることでもある。
Brown Canyonは、そんな当たり前のことを、あらためて考えさせてくれる場所だった。
「誰のための景観なのか」。
その答えは出ないままでもいい。ただ、今しか見られないこの風景を、自分の目で見ておく価値は、きっとある。

アクセス・注意点
最寄りの空港は、スマランのアフマド・ヤニ国際空港である。
空港からBrown Canyonまでは、タクシー利用がもっとも分かりやすい。
所要時間はおよそ40〜50分ほど。
配車アプリ(Grabなど)を使えば、目的地を「Brown Canyon」と指定するだけで問題ない。道の途中から未舗装路になるため、ドライバーには「入口付近で降ろしてほしい」と伝えると安心である。
Brown Canyonは正式な観光地ではないため、柵や安全設備がほとんどない。
崖の縁まで近づくことができてしまう場所も多く、足元は決して安定していない。
写真撮影に夢中になりすぎず、
・崖の端には立たない
・足場の柔らかい場所には注意する
といった基本的な安全確認は必ず心がけたい。



※写真は全て筆者が撮影(2025.12.25)





