ローカリティ!時代の開拓者たち

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メディアの革新を通じて情報革命を実現する思い。AI時代の荒波を越え新たな「収益の柱」を築く【東京都千代田区】

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    1999年の設立以来IT、ビジネス、製造、産業、コンシューマー領域を専門とするオンラインメディア群を運営するアイティメディア株式会社。代表取締役社長の小林教至(こばやし・ たかし)さんは、黎明(れいめい)期からインターネットの可能性を信じ、同社の成長を牽引(けんいん)し続けてきました。AIの台頭により検索流入に依存した従来のビジネスモデルが岐路に立つ折、同社が描くメディアの生存戦略と人間が発信する情報の価値に迫ります。

    アイティメディア株式会社 代表取締役社長 小林教至さん

    検索流入が減少するAI時代の危機感

    オンラインメディア業界はいま、過去最大級の転換点を迎えています。Googleなどの検索エンジンからの流入に依存してきた従来のビジネスモデルが、AIの普及によって根底目で覆されようとしているためです。ユーザーが検索結果のリンクをクリックせずとも、AIが回答を提示する時代において、メディアへのアクセス数は減少傾向にあります。

    同社はこの事態を一過性の現象ではなく、構造的な不可逆変化と捉えています。25年前メディアの主戦場が紙からインターネットへと移り変わる様を目の当たりにしてきた小林さんは、現在も同様に、インターネットからAIへとプラットフォームが移行する過渡期にあると捉えています。変化に対応できなければ消滅するという危機感の下、同社は既存の収益構造に依存しない新たなモデルの構築を急いでいます。

    インターネット黎明期に見出した希望

    小林さんがメディアとテクノロジーの可能性に魅せられたのは、社会人になりたての頃にさかのぼります。当初は広告関連業界で仕事をしていましたが、1995年のWindows95発売を機にインターネットが社会を変えるという確信を得ました。当時、表現力豊かなWebサイトに衝撃を受けた小林さんは、アスキーに転職し、インターネット関連の新規事業開発に従事します。

    その後、2000年に同社の前身の一つであるアットマーク・アイティへ参画しました。当時はまだブロードバンドも普及していない時代でしたが、インターネットの進化が世の中を変えていく最前線に身を置きたいという一心で、エンジニア向けの転職サービスなどを立ち上げます。「インターネットで世の中が変わるというのは確信として持っていました。テクノロジーの最前線に自分がいたいし、そのメンバーとして世の中を変えていく一員でありたいと考え続けてきました」と、小林さんは当時を振り返ります。

    組織再編と黒字化への苦渋の決断

    順調に見えた同社の歩みですが、2008年のリーマン・ショックにより大きな試練が訪れます。景気後退の影響で業績が悪化する状況下、小林さんは自らが立ち上げた人材事業の撤退を決断せざるを得ませんでした。その後、管理本部長として構造改革の先頭に立ち、リストラを含む痛みを伴うコスト削減を断行しました。

    2期連続の赤字から黒字転換を果たすまでの2年間は、同氏にとっても会社にとっても苦渋の時期でした。ただ、この経験が現在の強固な財務体質と、変化に対して安住しない企業文化を育む土台となりました。黒字化に貢献した後、同氏は再び事業部門へ戻り、2025年からは創業者の後を継いで社長として指揮を執っています。

    広告モデルからの脱却を図る

    現在、同社が全社を挙げて取り組んでいる最大の挑戦が、メディア広告に依存しない「第2の収益の柱」の確立です。2025年10月には、海外のテクノロジー展示会の取材レポート販売を行う株式会社ピイ.ピイ.コミュニケーションズをグループ会社化しました。これは同社にとって初となる、コンテンツそのものへの課金ビジネスへの参入です。。

    BtoB領域においては、情報収集の効率化が求められるため、今後はAIエージェントが人間に代わって情報を収集・要約する形へ移行すると同社は予測しています。そのため、単にPV(ページビュー)を稼ぐのではなく、質の高い一次情報を有料で提供するモデルや、取材で培った知見を元にしたコンサルティング事業など、AI時代に適応した収益構造への転換を進めています。2026年1月には、セミナーマーケティング支援事業を展開するマジセミ株式会社もグループ会社化することを発表し、既存のメディアに依存しない事業開発にも取り組んでいく予定です。

    変化を当然と受け入れる人材の力

    激変する環境下において、同社の最大の強みは「人」にあります。メディアビジネスは景気変動の影響を受けやすく、常に変化を強いられる産業です。そのため、社員の多くは「今の収益モデルは永続しない」という健全な危機感を共有しており、役割や立場を超えて主体的に動く文化が根付いています。

    変化を恐れず、むしろ変化を楽しむ姿勢こそが、幾度もの荒波を乗り越えてきた同社の原動力です。組織全体が「茹でガエル」になることを防ぎ、常に新しい収益源を模索し続ける姿勢は、AIという未知の脅威に対しても揺らぐことはありません。

    「変化していくのが当たり前であり、その前提で動けるメンバーです。今の収益モデルはいつか稼げなくなるかもしれないという危機感を絶えず持って仕事をしているのが、我々の強みです」と、小林さんは語ります。

    人間が介在する価値を再定義する

    AIがいかに進化しようとも、人間が足を使って取材し、見て、聞いて、感じた一次情報の価値は代替できないと小林さんは語ります。医師の余命宣告が、AIによる確率論よりも人間の医師の言葉が重みを持つのと同様に、誰が発信した情報かという「文脈」と「信頼」が、これからのメディアにはより一層求められます。

    同社は、AIによる効率化と人間による取材という高付加価値化を両立させ、テクノロジーの力で社会に貢献するという企業理念を体現し続けます。25年前に紙からネットへの変革をリードしたように、AI時代におけるメディアのあり方を再定義し、次世代のメディアビジネスのスタンダードを築く挑戦は、まだ始まったばかりです。

    最も印象に残った言葉:「今のテクノロジーのレベルで物事を判断してはいけない。1年後、2年後には人間と遜色ないコンテンツをAI作るようになる。だからこそ、メディアに依存しない収益モデルを作っておかなければならない」

    写真提供:アイティメディア株式会社

    会社概要

    会社名:アイティメディア株式会社
    取材対象者:代表取締役社長 小林教至(こばやし たかし)さん経営理念:メディアの革新を通じて情報革命を実現し、社会に貢献する
    設立年月:1999年12月事業内容:インターネット専業でのメディア運営および各種サービスの提供
    所在地:東京都千代田区紀尾井町3-12
    URL:https://corp.itmedia.co.jp/

    木場晏門

    木場晏門

    神奈川県鎌倉市生まれ藤沢市育ち、香川県三豊市在住。コロナ禍に2年間アドレスホッピングした後、四国瀬戸内へ移住。webマーケティングを本業とする傍らで、トレーニングジムのオープン準備中。

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