ローカリティ!時代の開拓者たち

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産業スクラップから宝の山へ。「この手で守る自然と資源」を体現するAREの挑戦【東京都千代田区・茨城県坂東市】

4 min
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  • AREホールディングス
  • 貴金属のリサイクル
  • 都市鉱山
代表取締役社長 兼 最高経営責任者の東浦知哉さん

第二次世界大戦後の大阪で、写真店や病院レントゲンの廃液回収から始まり、現在は貴金属や希少金属の再資源化を主力事業とするAREホールディングス株式会社(以下、ARE)。さまざまな産業の廃棄物(スクラップ)を「都市鉱山」ととらえ、金・銀・プラチナ・パラジウムなどの元素を回収し、社会に供給しています。

1952年に「朝日化学研究所」として創業し、写真廃液からの銀リサイクルを原点に、歯科、電子材料、宝飾、自動車・化学触媒へと事業領域を拡大。2022年には茨城県坂東市に坂東工場を竣工し、2023年に現在の社名へと変更しました。

同社代表取締役社長兼 最高経営責任者(CEO)の東浦知哉(ひがしうら・ともや)さんに話を聞くと、事業の根底にあったのは、目立たず、決して華やかではなくとも、誇りを高く持ち続けてきた企業の歴史でした。「この手で守る自然と資源」というパーパスはいかに生まれ、いまどのように事業と組織を動かしているのか。その歩みをたどりました。

現場で働く人たちの誇りが生んだパーパス「この手で守る自然と資源」

AREの原点は、写真の現像液や病院のレントゲン廃液から銀を回収する仕事にありました。写真のデジタル化に早い段階で危機感を持ち、現在は扱う金属や事業領域も大きく変化し、広がっています。それでも、排出物から資源を取り出し、再び社会へ戻すという発想は、創業時から変わっていません。

当時から同社が向き合ってきたのは、扱いが難しく責任を伴う領域でした。写真の現像液やレントゲン廃液、歯科や医療に関わる回収物などは、衛生面や環境面への配慮が欠かせないものばかりです。

東浦さんは、「回収の現場は必ずしもきれいで美しいものではないけれど、社員が自分たちのやっている仕事に誇りを持っていてくれた」と振り返ります。目立たず、決して華やかではない仕事の中にこそ、社会を根底で支える価値がある。AREの歩みは、そのような現場に支えられてきました。

同社のパーパス「この手で守る自然と資源」は、1970年代に社員公募で生まれたものです。現場で働く人たちが抱いてきた誇りを言葉にしたものであり、その理念は現在の社名「ARE(Asahi Resources Environment)」にも重ねられています。社名そのものに、資源と環境を守り続ける意思を宿しているのです。

「坂東工場」でスクラップを宝の山に。評価され始めた都市鉱山が生み出す新しい価値

坂東工場

現在のAREを象徴するのが、茨城県坂東市にある坂東工場です。歯科、宝飾、電子材料など、さまざまな分野から集まる原材料がここに集約され、年間約30トンを超える金が再生されています。その量は「世界有数の金鉱山に匹敵する規模」と東浦さんは話します。

坂東工場は、役目を終えたスクラップが再び価値ある資源へと生まれ変わる場所です。生産や医療や消費の過程で不要となったものを集め、磨き直し、社会へ戻す。まさにスクラップを宝の山へと変える、“都市鉱山”の現場といえます。

本来、貴金属を得るには鉱山を掘削し、多くのエネルギーとコストをかける必要があります。一方で、都市に存在するスクラップには、すでに高濃度の金属が含まれており、効率的に資源を取り出すことができます。都市鉱山は、「より合理的な資源の取り方」なのです。

さらに重要なのは、その価値が社会的・経済的に評価され始めている点です。再生品を高く買う動きが広がり、再生由来の貴金属にプレミアムがつく現実も生まれています。

こうした変化は、資源を再生することそのものが、新しい価値として社会に受け入れられ始めていることを示しています。そしてAREは、その価値をいち早く事業として実装してきた企業です。

かつては難しいとされてきた資源循環と経済性の両立も、現実的なものとなりつつあります。坂東工場は、その可能性を具体的に示している場所なのです。

「挑戦」と「循環を支える力」。パーパスが現場に息づく

AREのパーパス「この手で守る自然と資源」は、言葉として掲げられているだけでなく、現場の行動の中に息づいています。東浦さんが挙げたのは、「新しいものへの挑戦」と「循環を支える力」という二つの軸でした。

同社の事業は、時代の変化とともに大きく姿を変えてきました。「社会の中で守るべき資源が変わり続ける」という現実の中で、必要とされる資源を見極め、時代に合った方法へと変化していくことが求められています。

東浦さんは、こうした変化に対応し続ける難しさにも触れます。求められるものが変わるたびに、新しい技術や領域へ踏み出さなければならない。だからこそ、「この手で自然と資源を守る」ためには、「挑戦し続けること」が不可欠だといいます。

同社が担っているのは、新しい領域への挑戦だけではありません。資源を回収し、再び社会へ戻すという事業そのものが、社会の循環を支える役割を持っています。事業を止めることは、循環を止めることにもつながります。同社は、自らそうした責任を背負いながら事業を続けてきました。

その姿勢は災害時にも表れていました。1995年の阪神・淡路大震災では、拠点を分散しながらオペレーションを継続しました。また、2011年の東日本大震災でも、神戸本社からの支援物資が翌日には仙台へ到着するなど、事業を止めることなく対応を続けてきました。

東浦さんが同社を表現する「穴が開いてもちゃんと埋めるような結束性」という言葉には、変化に挑み続けながらも、社会に必要な循環を途切れさせないという覚悟がにじんでいます。それこそが、「この手で守る自然と資源」というパーパスが、組織の中で実際に機能している姿なのです。

「この手で守る自然と資源」は、次の時代へ手渡されていく

廃液回収から始まった同社の仕事は、いまや世界有数の規模で資源を再生する事業へと成長しました。それでも根底にあるものは変わりません。不要となったものの中に価値を見いだし、社会に必要な循環を守るという姿勢です。

東浦さんの話から見えてきたのは、同社がパーパスを現場で積み重ねてきた会社だということでした。坂東工場の拡大も、そのパーパスを今の時代に実装し直すプロセスです。

スクラップから宝の山へ。その変換を支えているのは、技術だけではなく、人の誇りです。AREはこれからも、「この手で守る自然と資源」という言葉を次の時代へ手渡していきます。

最も印象に残った言葉:
「回収の現場は必ずしもきれいで美しいものではないけれど、社員が自分たちのやっている仕事に誇りを持っていてくれた」

※写真はすべてAREホールディングス株式会社提供

企業情報

企業名:AREホールディングス株式会社
取材対象者:代表取締役社長兼 最高経営責任者(CEO) 東浦知哉さん
創立年:1952(昭和27)年7月
パーパス:
この手で守る自然と資源
限りある資源と地球環境を守り、持続可能な世界の実現に貢献します
事業内容:
貴金属事業(貴金属のリサイクル・精錬・加工・販売)および環境保全事業を中心とした事業を展開
所在地:

 東京本社:東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー11F
神戸本社:兵庫県神戸市中央区加納町4-4-17 ニッセイ三宮ビル16F坂東工場:茨城県坂東市
ホームページ:
https://www.are-holdings.com/

天野崇子

天野崇子

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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