
「ドローンショー」を見たことがあるでしょうか。夜空に浮かぶ光は立体的に動き、ときに文字となり、ときにアニメーションとなって、これまでに見たことのない景色を生み出していきます。観客は思わず「わあっ」と声を上げ、一斉にスマートフォンを掲げてその一瞬を残そうとします。
空を新しい舞台へと変えているのが、光を操るプロフェッショナル、株式会社レッドクリフです。代表取締役 CEOを務める佐々木孔明さんは、秋田で花火文化に触れて育ち、世界で目にしたドローンショーの可能性を、日本発のエンターテインメントとして実装してきました。

その光景の裏側には、数センチ単位の制御と緻密(ちみつ)な設計があります。人の心を動かす体験は、偶然ではなく積み重ねられた技術を構造化することによって生まれています。
目次
「空を見上げる」原風景。花火やドローンショーとの出会い
佐々木さんの原点は、空を見上げることにあります。
「小さいころから、大曲の花火が身近にありました」
秋田県大仙市大曲で1910年から続く「全国花火競技大会」は、国内有数の伝統と格式を誇る花火大会です。毎年8月、夜空に大輪の花が咲き、観客は同じ方向を見上げます。空に描かれる一瞬の芸術は、幼い佐々木さんの記憶に強く刻まれていました。
その後、佐々木さんは大学に進学、そして在学中に休学し世界一周の旅に出ます。
「世界一周するなら、自分にしかできない旅をしたい」
その旅のお供に選んだのが、当時注目され始めていたドローンでした。壮大な景色を空から撮るのが目的でした。その体験を経て、佐々木さんは撮影するだけではない、「魅せる」ための海外のドローンショーと出会います。
一台のパソコンから数百機を制御し、夜空にアニメーションを描く。その光景に、強い衝撃を受けたといいます。
「これはすごい。日本ではまだ誰も本気でやっていない」
感動を受けた瞬間、同時に“構造”も見えたそうです。ここに、佐々木さんらしさがあります。目の前の美しさに心を動かされながらも、可能性を見抜き、ドローンショーという選択につながっていきました。
自分の目で見たインパクトを行動に変える
2021年、佐々木さんはドバイで連日行われていたドローンショーを目の当たりにします。ドローンショーの時間になると人々が集まり、ドローンが描く光の造形に向かって一斉にスマートフォンで写真を撮りながら盛り上がる。ショー終了後には、その光景がSNSで一斉に拡散されていきました。
「これは広告になるのではないか」
佐々木さんは、自社でドローンショーを展開しようと試みました。しかし、日本で実装するのは簡単ではありませんでした。
安全性への懸念や前例のなさで、資金調達は難航。半年以上、思うように進まない時期もあったといいます。
「もう無理だ、と思ったことはありますか?」と尋ねると、佐々木さんは少し間を置いて、答えました。
「もう無理と思っても、自分は“無理”という環境のほうが燃えるのかもしれません。できることは誰かがやればいい。簡単には実現できない環境のほうが挑戦のしがいがあります」
なぜそれを進められるのか続いて質問をしてみました。
「自分は、現物のインパクトを見ていたから」
海外で目にした光景。空に描かれた物語と見上げる人々の熱。
あの場で佐々木さんは、自分の目で見た「未来」を日本で実装する覚悟をしていたのです。
夜空に生まれる感動は、偶然ではなく「構造」
レッドクリフの強みは、夜空に浮かぶあの光景を、確実に成立させるための圧倒的な技術力にあります。
ドローンショーは、ただ光が動いているだけの演出ではありません。1台のパソコンから数千機のドローンにプログラムを送り、それぞれの機体が正確なルートを飛行します。GPSに加え、数千機の軌道を担保する正確無比な補正システムを使用し、水平・垂直方向の誤差は数センチにまで抑えられています。最大33分という長時間の安定飛行に加え、安全面にも徹底して配慮されています。

技術の積み重ねがあるからこそ、観客は安心して夜空を見上げることができるのです。
結果として、来場者満足度は97.1%。2024年時点の国内市場における売上シェアは65.3%にのぼります。(レッドクリフ公式HPより引用)「驚き」と「感動」を掲げるレッドクリフですが、実態は極めて理性的です。
「他社がやっていないことをやる。常に新しいものを投じ続ける」
その言葉通り、花火搭載ドローンや、夜空に二次元コードを表示するドローンショーQR®、さらに昼間の空でも表現を可能にするドローンインパルス®など、次々と新しい表現を生み出してきました。


ただ美しいものを見せるのではなく、これまでにない体験を成立させる。夜空に生まれる感動は、偶然ではありません。緻密な計算とぶれない運営体制の仕組みを体系的に構造化することから生まれているのです。
日本文化を空で表現し「感動は『日本』から『世界』へ」
レッドクリフが掲げるVisionは明確です。
感動は「日本」から「世界」へ
「日本の文化やコンテンツを、ドローンショーで世界に届けたい」という思いの背景には、佐々木さん自身が見上げて育った“日本の空”への実感があります。
かつて佐々木さんが感動を受け取った花火大会は、近年、スポンサー不足や山林火災、環境問題などの影響を受け、中止になるケースも増えています。空を使ったエンターテインメントを続けていくことは、以前よりも簡単ではなくなってきました。
だからこそ、持続可能な“空の表現”が必要だと、佐々木さんは感じています。
その思いは、実際の取り組みにも表れています。かつて見上げる側だった大曲の花火では、いま運営と連携しながら、花火大会に合わせてドローンショーを実施しています。さらに大阪・関西万博をはじめ、全国各地のさまざまな大型イベントでも、ドローンショーの活用は広がり続けています。


花火を終わらせるのではなく、進化させる。
そうして磨かれた日本ならではの空の表現を、次は世界へ届けたい。佐々木さんが見据えているのは、単にドローンショーを広げることではありません。日本がもともと持っている文化や表現の力を、空という新しい舞台で世界へ届けていくことです。
花火、アニメ、IPコンテンツ。日本には、世界に誇れる素材が数多くあります。それを空に描くことで、これまでにない体験として立ち上げる。そして、ショーを見に海外から人が訪れる未来を思い描いています。
その視点の先にあるのは、伝統と最先端技術が対立するのではなく、響き合いながら新しい景色を作っていく未来です。
空の概念は変えられる。感動を構造化し、空を新しい舞台へと導き未来へつないでいく。それが佐々木さんの思いです。
もっとも印象に残った言葉:
「もう無理と思っても、自分は“無理”という環境のほうが燃えるのかもしれません。できることは誰かがやればいい。簡単には実現できない環境のほうが挑戦のしがいがあります」
※写真はすべて株式会社レッドクリフ提供
企業情報
会社名:株式会社レッドクリフ
取材対象者:代表取締役 CEO 佐々木 孔明さん
設立年:2019年
ミッション・ビジョン:「夜空に驚きと感動を」・感動は「日本」から「世界」へ
事業内容:ドローンショーの企画・運営、ドローン機体販売、ドローン空撮、ドローンプログラミング教室の企画・運営
所在地:
本社:東京都港区東麻布1-10-11 東麻布アベビル6階
大阪オフィス:大阪府大阪市北区大深町6番38号 グラングリーン大阪北館JAMBASE6階JAM-DESK
URL:https://redcliff-inc.co.jp/






