〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
さつまいもの生産量全国2位、干し芋の生産量では全国1位を誇る茨城県。この地で昨年から本格的に干し芋づくりを始めたのは、水戸市にある「ふるさと工房」の村上典男(むらかみ のりお)さん。
「さつまいもは5月に定植して、収穫が10月いっぱい。そこから約40~50日かけて、8~10℃くらいの低温で熟成させて糖化させます。低温で、時間をかけると糖度がぎゅっと上がってきます」
「でも、うちはもう一つこだわりがあって、その熟成期間中に、倉庫の中で朝晩モーツアルトをかけているんです。私は、植物が音楽や人の話を聞く、というのを信じていて、本当に糖度計で測ると、2度くらい違うんです。
昨年は14~14.5度くらいだったのが、今年は最初からモーツアルトを聞かせて16度。生芋で16度だと、干し芋にすると60度になるんです。この話を知り合いにすると、そんなことあるわけないと馬鹿にされるんですが、私は信念を持ってやっています」
モーツアルトを聞かせたさつまいも!
積み重ねたデータに基づく科学的裏付け、というには少し弱いかもしれませんが、村上さんの言葉には実感がこもっています。そして何より、さつまいもへの並々ならぬ愛情が伝わってきました。
妊婦や胎児に聞かせる音楽としても有効だとも言われているモーツアルト。
その響きは穏やかで優しく、人の心を和ませます。その振動や周波数が植物に影響を与えることも十分に考えられます。
「ふるさと工房」では、そうしてじっくり甘みを引き出したさつまいもを蒸して、丁寧に手作業で皮を剥きます。熟練の従業員のみなさんは、一人1日100キロもの芋を剥くとのこと。剥いた芋はピアノ線を張った専用の裁断機で裁断してから、機械で11時間ほどで干し上げるそうです。
「昔は天日干しが主流でしたが、機械を使うことで衛生管理も行き届き、短時間でしっとりと干しあがります」
コロナ禍で原点回帰。芋づくりは面白い
「ふるさと工房」は水戸市鯉淵町の「花みどり」という園芸店の一角にあります。
農業大学出身で「花みどり」の社長だった村上さんは、こんにゃくの製造販売や漬物作りを経て、36歳で社長を弟さんに譲りました。その後は地方議会等で活動してきましたが、コロナ禍で政治活動が思うようにできない中、原点回帰で始めたのが干し芋づくりです。
「私の原点は農業。農業ってすごい大変なんですけど、極めるとすごい面白い。こういうものを作りたいと狙って作っても思うようにいかなかったりする。でもその通りになった時は感動です。私たち生産者は干し芋を作る時が一番うれしい季節。これからも日本の伝統と国民の栄養食として自信と責任を持ってお届けします」
「モーツアルトを愛した干し芋」の甘さは、工房のみなさんに愛された証なのではないでしょうか。