今年、芸能活動50周年を迎えた歌手の吉幾三(70)を「理想の男性はIKZO様」としてリスペクトするアラサー女性へのインタビューを通じ、吉幾三ことIKZOの人間としての魅力に迫る本企画。前編では、吉幾三の“言葉の力”やライブパフォーマンス、ファン女性の横顔に焦点を当てて吉幾三の魅力を描いてきた。後半では、圧倒的な歌唱力でファンを魅了しつつ、青森愛そして東北愛を貫き通す、“人間”吉幾三の魅力にダイレクトに迫っていきたい。
(前後編の後編。前編はこちら https://thelocality.net/ikzodaisuki01/)
目次
ファンからも、スタッフからも、誰からも愛される秘訣は、愛情の深さと、何をも受け入れる器の大きさ
前編に引き続き話を伺ったのは、栃木県栃木市在住の会社員、永山志穂さん(30)。永山さんは、吉幾三の魅力の核心は器の愛情の深さと器の大きさにこそあると強調した。曰く、「IKZOさんは何といっても愛情が深いんです。スタッフの方が気さくに話しかけてくれたり、無理そうなお願いにも応じたりしてくれるのは、まず、IKUZOさん自身がスタッフの皆さんを愛しているからだと思います。その愛情の深さが、見た目やしぐさ、笑顔にもよく現れているんですよね」。
また、永山さんは吉幾三が愛される秘訣は、その器の大きさにあると語る。吉幾三の器の大きさを示すエピソードとして、「IKZOブーム」における好意的、且つ寛容な対応は多くの人が知るところだろう。IKZOブームとは、2000年代後半に代表曲『俺ら東京さ行ぐだ』のマッシュアップムービーが「IKZOシリーズ」としてニコニコ動画に大量に上げられた現象だ。吉幾三は、そのブームに対して、「若い人の考えることは面白いね」とブームに対して理解を示し、その際につけられたIKZOの異名を、今現在も公式に採用している。
永山さんは「普通の歌謡界の大御所だったら普通は怒ったりすると思うんですが、IKZOさんは、ある意味フリー素材化することを厭わずに一緒に楽しめちゃうんです。そういう器の大きさに、人として憧れています」と感嘆した様子で当時の熱狂に想いを巡らせる。
何といっても歌唱力。70歳になっても衰えない実力の秘密は、そのルーツにも
とは言え、人柄だけで第一線を張れる程芸能の世界は甘くはない。肝心の歌唱力がファンの心を揺さぶるものでなければ、コンサート会場を満席にすることはできないのは明らかだ。しかし、吉幾三の歌唱力に衰えの兆しはないという。
永山さんは、吉幾三の歌唱力について、「普通、70歳にもなれば昔リリースした楽曲を元キーから下げて歌うんですけど、IKZOさんは今も元キーのまま、伸びやかに歌います。まったく衰えないどころか、今コンサートで聞く生歌の方がCD音源より凄いんじゃないかと思うくらいです。IKZOさんって凄く涙脆いんですけど、その涙を堪えて歌いきる心の強さも尊敬してます。まさに、心技体が揃った歌手だと思います」と絶賛する。
吉幾三の歌唱力は、そのルーツにも裏付けがある。吉幾三の父親・鎌田稲一氏は、昭和18年に開催された東奥日報社主催の第8回青森県民謡大会にて優勝を果たし、その後三連覇を達成した民謡の名手だ。子どもの頃からの恵まれた環境に加え、本人のシンガーソングライター・エンターテイナーとしての“妥協しない姿勢”が、未だに衰えを知らずの歌唱力の源泉となっているのだろう。
芸能活動50年、津軽弁を貫く。貫き通してきた東北愛が、東北人の心を打つ
さて、吉幾三のルーツに触れたところであるが、吉幾三を吉幾三たらしめるものは、地元への強い想いであろう。吉幾三から自然とにじみ出る、津軽、青森、そして東北への愛が、地域を愛する人々の心を打ち続けている。そういった地域への想いに対する地元ファンのレスポンスの一つが、吉幾三の出生地である青森県五所川原市にある「吉幾三コレクションミュージアム」だ。現役のアーティストで、このような記念館があるのは珍しいという。
今回、インタビューに答えてくれている永山さんも、生まれは福島県の喜多方市。喜多方市も、東北の原風景が色濃く残るまちだ。「IKZOさんの楽曲は、東北人が持っている心の原風景に刺さるものがあると思います。それは私に限らず、東北で生まれ育った人にとって皆が共有できるものなんじゃないでしょうか」と語る。
また、「いくつになっても、どこに行っても、地元津軽の言葉を話し続けているところが凄いんですよね。東北の人は東京や他の地域に行ったら東北弁を隠してしまうんですが、IKZOさんはブレずに喋り続けている(笑)。さらに尊敬するのが、そういうことを“仕掛けている”のではなく、“自然に”そうなっているところです。戦略的に、〜出身のアイドルみたいな感じで売り出してるわけではないので、あざとさがないんですよね」と続けた。
まさに、この自然体での東北愛こそが“人間”吉幾三の魅力であろう。
IKZOさんは、超高齢化社会における生き方、地域への関わり方のモデル
永山さんはインタビューの最後にこう結んだ。
「IKZOさんは、70歳になっても新しいことに挑戦し続けているんですよね。それも楽しそうに、ごく自然体で。IKZOさんを見ていると、自分も新しいことにチャレンジしてみようと思えるんです。日本が超高齢化社会を迎える中、IKZOさんが生き方や地域への関わり方のモデルを見せてくれているような気がします。私も、新しいチャレンジの一つとして民謡を習ってみようかな、と思っています。IKZOさんを追っかけて民謡始めるなんて、小学生の頃に好きな男の子を追っかけて剣道始めたのと同じかもしれないですね(笑)」
「私もIKZOさんに背中を押されたので、誰かの背中を押せるような存在になりたいと思っています」と語る永山さんの瞳には確かに力が宿っていた。吉幾三に人生を変えられた人は永山さんだけではないだろう。
70歳過ぎてなお、共感の連鎖を生み続ける生粋のエンターテイナー吉幾三の活躍から目が離せない。
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