福岡市中心部の博多駅から地下鉄で一駅、祇園駅近くの東長寺(とうちょうじ)には、木造大仏「福岡大仏」があります。その日本最大級の大きさを誇る檜(ひのき)の座像、そして真っ暗闇を歩き抜ける「地獄・極楽巡り」。観光名所である一方、カメラやスマホを簡単に向けることが許されない場所でもあります。このお寺を訪れると、撮影禁止の意味を改めて考えさせられる体験……。「カメラを構えられないという制約が、福岡大仏の神聖さや、自分自身の日頃のスマホカメラとのあり方を見直す機会を与えてくれます。
目次
福岡木造大仏、圧巻の美しさを目で刻む
お寺の入り口の案内看板
東長寺にたたずむ「福岡大仏」は、木造座像として日本最大級の大きさを誇る仏像です。その巨大な姿は、目に焼き付くような圧倒的な迫力があります。光背には7仏や13仏が彫られ、後の壁面には5千もの小仏が並ぶ様子は圧巻。
しかし、カメラ禁止の看板があり、ここでスマホやカメラを向けるのはご法度。
受付の方にどうしてカメラNGなのかと伺うと、「心を寄せてお参りしている方がいらっしゃる」こと、また「大仏には魂があり人が無断で突然カメラを向けられたらどう思うかを考えてほしい」という問いかけをいただきました。私はその言葉にハッとさせられました。レンズ越しではなく、自分の目で仏像と向き合う重要さを感じることができ、現代社会の象徴ともいえるカメラを向けずとも、仏像に向き合う時間を設けることができました。
暗闇に挑む、「地獄極楽巡り」
福岡大仏の台座部分には、真っ暗闇を歩き抜ける「地獄・極楽巡り」の体験があります。まず地獄絵巻の恐ろしさに身震いしながら進みます。絵巻が終わると、完全な闇に包まれ、手すりを頼りに歩を進めるしかありません。途中に「仏の輪」があり、それを見つけると極楽に行けると教えられましたが、真っ暗闇で何も見えない恐怖に圧倒され、探す余裕はありませんでした。
ここでもカメラを向けることは許されておらず、また向けても全く意味がありません。暗闇の中、手すりだけを頼りに自分の感覚を研ぎ澄ませる体験が、とても神秘的でした。
スマホに頼らない「本物」との向き合い方
この二つの体験を通じて、「スマホで撮影できない」ということがどれだけ自分をムズムズさせるかを実感しました。普段、なんでもかんでもカメラに収めてしまう癖がある私たちにとって、写真に残せない分、五感を使って「今ここ」に集中するしかありません。この場所の魅力は、スマホの画面越しではなく、自分自身の記憶や感覚の中に深く刻み込まれました。「撮らない」という選択が、この場所をより特別なものにしてくれました。
写真はすべて筆者が2024年12月13日に撮影したもの
情報
【南岳山 東長寺】
住所:福岡県博多区御供所町2-4
開催時間:9:00〜17:00
料金:[拝観料]無料 [大仏殿拝観料]50円
お問い合わせ:092-291-4459