〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
合掌造りで有名な世界遺産白川郷や、同じく合掌造り集落のある富山県の五箇山(ごかやま)を流れ、富山湾へと流れ込む庄川(しょうがわ)。
その流域の途中、富山県南西部の南砺(なんと)市にあるのが、「船でしか行けない秘湯」大牧温泉観光旅館です。
「船でしか行けない秘湯」の成り立ちや魅力について、大牧温泉の営業課長北川博志(きたがわ・ひろし)さんにお話しを伺いました。
目次
村が水没、「何とか温泉だけでも」 宿の誕生秘話とは
大牧温泉は80年の歴史を誇る温泉旅館ですが、その成り立ちにはちょっぴりせつない物語がありました。
「この場所に建物を建てたのは1930年に小牧ダムができた後で、それ以前、この地には大牧村という村がありました。河原にあった露天風呂は、村人たちの保養地だったそうです。ところが、ダムが出来て村は水没してしまった。泉源も水没したけれど、何とか温泉だけでも残したいと、川の中に取水設備を設置してこの宿が作られました」と北川さんは語ります。
山肌に沿うように建てられたこの旅館への陸路はなく、船でしか行けない旅館として名を馳せるようになりました。
季節ごとに違った表情をみせる「絶景」
小牧港の「庄川狭遊覧船」の船着き場から峡谷を下ること30分。そこには「絶景」と呼ぶにふさわしい景色が広がります。一般的には紅葉や雪景色が有名ですが、夏はエメラルドグリーンの湖面が本当にきれいだそうです。その峡谷の美しさと、「陸の孤島」という立地から、テレビドラマなどのロケ地になることも多く、ドラマとしては20本以上、旅をテーマにしたバラエティ番組にも何度も登場しています。「使われるのは水墨画のような雪景色が多いですね」と北川さん。
喧騒を忘れ、ひたすら「のんびり」できる贅沢
以前は携帯もつながらなかったという大牧温泉ですが、最近はさすがにお客様のご要望もあり、一部つながるようになったそうです。
「喧騒を忘れてゆっくりと船に揺られ、温泉に浸かって、のんびりしていただく。うちはそういう宿だと思っております」と語る北川さん。
また、山の中にあって歴史も古いので、ひなびたイメージを持たれがちですが、建物の中に入ると、和を基調とした昔ながらの雰囲気を残しながらも、新しさに驚くお客様も多いとのこと。
温泉は無色透明な塩化物泉で、体が温まり湯冷めしにくく、とろみがあってお肌がすべすべになるといいます。
携帯は鞄にしまって、素晴らしい峡谷の景色を眺めながらお湯に浸かり、富山の美味しいものを頂いて、ふかふかのお布団やベッドで眠りにつく…。なんという贅沢な時間でしょう。
立地柄、従業員さん達は基本的に住み込みで働いています。北川さんは15年ほど勤めていて、お休みの日には近隣の他の温泉宿に行ってのんびりされるのだそうです。
「他の温泉がどういう接客をされているのか、どんなアメニティが使われているのか、そういったものを見るのも勉強になります」と語る北川さん。
そんなお客様思いの従業員さんがいらっしゃる宿こそ、心休まる、泊まってみたい宿と言えるのではないでしょうか。