

神戸・HAT神戸エリアに位置する「兵庫県立美術館」は、子育て世代にこそ訪れてほしい、美術と建築が融合する特別な空間である。日本を代表する建築家・安藤忠雄氏の設計によるこの建物は、美術作品を鑑賞するための施設にとどまらず、五感を研ぎ澄まし、空間と対話する芸術体験の場として構想されている。
目次
複雑な迷路のようで、明快な構成美
この美術館の特徴は、単純明快な構造の中に、複雑多様な空間体験を可能にしている点である。外観からは巨大なコンクリートの塊のようにも見えるが、一歩中に足を踏み入れると、柔らかい陰影に包まれたエントランスホールが来訪者を迎えてくれる。ここは感受性を高め、静かな瞑想へと誘うような空間であり、日常の喧騒から距離を取る導入部として機能している。
そこから回廊へと進むと、雰囲気は一転する。自然光がふんだんに差し込む展示室周辺は、ガラス張りの廊下を通じて外の景色と連続し、内と外の境界が曖昧になる。季節や時間帯によって、差し込む光が刻一刻と変化し、それが館内の雰囲気を塗り替えていく。建築そのものが「変化する展示」のように訪れる者を迎え、何度でも新しい発見を与えてくれる。


子どもと一緒に楽しめるプログラムも充実
兵庫県立美術館では、親子で楽しめる教育プログラムやキッズ向けの体験型展示も積極的に行っている。公式サイトでは、年齢別・テーマ別に用意されたワークシートやイベント情報が掲載されており、「芸術に触れる」ことをより身近な体験へと導いている。
特に未就学児から小学生を対象にした「美術館キッズプログラム」は、見る・描く・話すという多角的なアプローチで、子どもたちの感性を引き出す工夫が凝らされている。親子で参加することで、作品への感じ方や受け止め方の違いを共有し、日常とは異なる「対話の時間」が自然と生まれる。

無料で入れる「Ando Gallery」と人気のフォトスポット
常設展や企画展は有料だが、館内には誰でも無料で入場できるスペースもある。「Ando Gallery」はその一つで、安藤忠雄の建築思想を紹介する展示が行われている。建築模型や映像資料を通じて、安藤建築に流れる思想や哲学に触れられるこのギャラリーは、建築に詳しくない親子でも直感的に楽しめる工夫が施されている。
また、美術館の顔ともいえる大階段や、屋外に設置された「青りんご」の彫刻作品は、フォトスポットとしても人気だ。特に海外からの旅行客が毎日のように訪れては写真を撮っており、芸術と記念撮影が自然と結びついた空間になっている。


海と建築がつくる、一期一会の美術館体験
兵庫県立美術館のもう一つの魅力は、目の前に広がる神戸の海と一体になったロケーションである。潮風を感じながら建物の外周を歩くと、建築と自然が呼応し、まるで自分自身が作品の一部となったような感覚が得られる。迷路のような構造に迷うこともあるが、それすらも「仕掛けの一部」として楽しめるのがこの美術館の真骨頂である。
天候や時間帯によって異なる光の表情、変化する空気感——この美術館は「再訪する楽しみ」が尽きない場所であり、繰り返し訪れることで親子の記憶にも何層もの彩りが加わっていく。

JICA関西と合わせて、週末のミニ探検へ
すぐ近くにはJICA関西 (https://thelocality.net/jicakansai-syokudou/)があり、世界各国の料理を味わえる食堂が併設されている(予約不要・一般開放)。展示や民族衣装体験もできるため、美術館とセットで訪れることで「文化と世界にふれる」週末のミニ探検が実現する。お弁当や外食に頼らずとも、ランチからアート鑑賞、体験型の学びまでを一日で完結できるコースとして、関西圏に暮らす家庭にとってはぜひとも訪れたいエリアである。
施設情報
兵庫県立美術館
所在地:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 HAT神戸内
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
公式HP:https://www.artm.pref.hyogo.jp/