「食の価値を見直すことが大切」甲南女子大学郡俊之(こおりとしゆき)教授が描く食のこれから

※写真はイメージです

「食育の効果」や「噛む回数と栄養状態の関係」をテーマに研究を進める甲南女子大学医療栄養学部の郡俊之教授は、研究者と教育者の両方の顔を持ち合わせています。

栄養教育の一端を担う大学教授から見た「食」のリアルと今後の展望についてお聞きしました。

「コンビニでもいい。まずは食に関心を持って欲しい」

健康志向が高まる一方で食に無関心な人も依然として多いという現状があります。「食に対する興味は、育ってきた環境に大きく影響される。家族の食習慣が子どもにとっての“当たり前“になる。だからこそ栄養教育が大切」と話す郡教授。

「コンビニやファストフードでも良いから、食べものに対する関心と興味をまず持って欲しい」と食育の必要性を訴えます。

「手術は栄養状態が整ってから」。医療現場でも理解進む栄養管理

「食事は薬ではない。即効性が無く効果が伝わりづらい。当たり前すぎて見過ごされやすい」と郡先生。けれども体づくりの根幹をなすのが食事です。

「栄養に関連する数値が改善されてから手術を実施する」という病院も近年増えています。栄養状態が悪いと手術後の回復に時間がかかり、薬物治療も上手く機能せず患者さんへの負担が増大してしまいます。適切な栄養管理は基本的な医療として積極的に取り入れられています。

お弁当は食情報の宝の山!「食育の効果検証」への取り組み

食育基本法が制定されて17年が経ちました。今後の課題に「食育の効果検証」が挙げられます。効果を数値化することで「何となく良さそう」と「感覚」に委ねられていたものを「事実」として世に現すことができます。その切り口に約10年前から挑んでいる郡先生です。

「食育の効果検証」のデータを得るために、給食にお弁当を導入している小学校を追跡調査しています。具体的には、子どもたちが持参するお弁当を2年にわたり撮影し栄養価を数値化します。成長とお弁当の関係を分析することで、食育の効果を数値的に証明しようという試みです。

お弁当の写真は食情報の宝の山。コンビニ弁当や菓子パンなのか、欠食しているのかといった“食事の姿“を知ることができます。栄養価だけでなく、食習慣もまた数値化され実態として積み上げられています。体づくりと精神性の両方を養う時期の食事を分析することは、未来の子どもたちの健康づくりの指針へと繋がります。

「管理栄養士の地位向上」の先に見える世界

「食」に介入するとは、個々人のライフスタイル、つまり信念や思想に立ち入ることです。ここに食習慣を改善する難しさがあると郡教授は指摘します 。

「食の大切さを発信する第一線は管理栄養士だと思う。けれども、管理栄養士側も研究論文などの実績が少ないのも事実。しっかり力をつけないと話を聞いてもらえず、適切な食情報の認知も広まらない」。現状を悲観するのではなく、小さくとも確実に歩みを進めること。

大学教授の胸の内には「食を通じて、一人でも多くの人が健康で豊かに生きることが出来る未来」が思い描かれていました。

大野佳子

生まれは福井、育ちは大阪。公務員、栄養士、農業、食品加工の遍歴あり。「農と食」のフィールドでセルフ人事異動(転職)を行ってきました。
現在は農業と福祉を連携させた商品づくりに取り組んでいます。「暮らし」に感動し、「科学」に挑戦し、「芸術」を愛して生きています。趣味はカフェ巡りと数学です!