沖縄県は2024年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。
環境保護、SDGsと近年よく耳にする言葉たち。エコバックをカバンに備え、マイボトルを持ち歩くようになった方も多いのではないでしょうか?でも持続可能な自然環境を保持するためには何よりもまず正しい知識が大切。今回は沖縄県竹富町小浜島で自然を守り、自然のことを伝えていくために奮闘する星空探検隊なちゅらの中村航大 (なかむら・こうだい)さんにお話を伺いました。
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幼い頃から職場は自然の中だと決めていた。中村少年、カニ漁船に乗る
環境保護することを目的に小浜島へ移住した中村さんは、幼い頃から自然を職場にすることを決めていました。
「アレルギー体質だったこども時代はよく皮膚炎を起こしていました。海に浸かれば良くなるという治療法を聞き、両親はよく海へ連れて行ってくれたんです。それで赤ちゃん時代は毎日海へ散歩に行っていましたね。いろんな体質の方がいると思いますが、ぼくは海のおかげで健康な肌になりました!」
誰しもの健康に海が良いというつもりではなく、自身の体質は自然のもので改善されたという経験は中村さんの人生を大きく左右します。
そんな中村さんが環境保護を気にするようになったきっかけは、小学校の総合学習で作ったビオトープでした。
「授業を通して、野生動物が減っていること、オゾン層が破壊されていること、酸性雨の問題など地球の環境問題が気になるようになってきたんです。でもきちんと作り上げた、ぼくのビオトープにはトンボが飛んできたんですよ!そこで『正しい自然を知り、守っていかないと』と思いましたね」
自然と関わる道で生きると決めた中村さん。海上保安官を目指し進学、卒業資格である航海士の筆記試験にも受かり、免許を得るために必要な実務経験を積むためカニ漁船に乗りこみました。
現場を知り、目標を再設定。カニ漁師がカニ隊長になるまで
いざ漁師として船に乗って海に出ると、「海上保安官は環境保護できているのか?水産庁は研究をしているが、それは環境保護になるのか?」と思い描いていた環境保護とはイメージが異なっていることを感じたと言います。
「その現実を知ったときはどうしようかと思いました。その時たまたま小浜島へスノーケルをしに行き、担当してくれた船長に相談したら『研究しても一般に伝わってない。それより船の上で感じたことを伝えていく方が深みが伝わる。もっと世間に理解を広める方が大事なんじゃないか』と言われて、ズドン!と来ましたね」
それから一気にカニ漁師を辞めて、2012年に小浜島へ移住。ヨットやウィンドサーフィン、ダイビング、スノーケルとマリンスポーツを覚えていった中村さん。
「前職のインパクトが強くて、インストラクターの先輩たちには『カニ漁師』と呼ばれ、常連さんからも『カニ君』と呼ばれるようになっていました。それでインストラクターネームは『カニ(kanii)』にしました。2017年の独立後は星空探検隊の隊長ということで『カニ隊長』と名乗っています。ガイドをする時に子どもにも受けが良くて覚えてもらいやすいですよ!」
気が付ければ、周りの全てが環境教育の一環になる
小浜島を含む八重山諸島は、日本初の星空保護区で日本一の星空を誇ります。
「風のない日は水深30cmくらい浸かるけど水の中を歩くこともあります。歩くのを止めてしばらくすると空と水面が鏡になって、それがすごく綺麗なんです!」
幅広い生物が住む小浜島では鳥や昆虫、爬虫類や甲殻類にウナギ、1年中ホタルに会える可能性も高いそう。その他にも山や川、森に海にマングローブと豊富な環境があるため、星空探検隊では小浜島の自然を思う存分堪能することができます。
島の環境をよく知っているカニ隊長と一緒に歩いて回ると、新しい発見や視点が得られること間違いなしです。話を聞き、見て体感すれば周りの全てが環境教育の一環であることに気がつくはずです。
共存をすることで、守り繋いでいく自然環境
「最近では不純物が増えて、環境が壊れて来ていることを感じます。自然を守るためにぼくが目指す世界は『正しく自然保護するなら自然は使った方が良い』です」
植物でロープを作るなど「自然の利用」がテーマで、裏テーマとして「環境保護を伝える」という目的を掲げるカニ隊長。いつかは野草や食材を採取し料理を作る「探検飯」をやりたいと次の目標設定も余念がありません。
「どうしても子どもの考えは親に左右されることが多いです。子どもだけに伝えても、その後10年、20年と環境のことを考えていなかったら、記憶や知識は薄れてしまいます。人生で1度しか会うことのないぼくが伝えることもよりも、親子一緒になって学び、環境に意識を向け続けることの方が大事だと思っています」
地球に生まれ、この星で暮らしている私たち。あることが当たり前だと思っている今、目の前の自然環境はいつ壊れてもおかしくない状況に向かっているかもしれません。人間だけでなく、たくさんの生物が生きるこの地球。自然環境を正しく知り、みんなで守り次の世代へ繋いでいくことが大切なのではないでしょうか?