
10月25日、長崎県佐世保市で「第25回席上揮毫大会」が開催された。県内の高校生の書道部員が一堂に会し、日頃の練習の成果を発揮する伝統ある大会だ。「揮毫(きごう)」とは筆で文字や絵を書くことで、「毫(ふで)を揮(ふる)う」からきている。今回の大会は、全九州総合文化祭への出場につながる重要な場でもあり、書道部にとって大きな節目となる。壱岐島からは壱岐高校書道部も参加。半年間の練習の成果を発揮すべく、県内13校が会場に集まった。
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「書」と向き合う緊張の2時間
会場となった広い体育館にはブルーシートが敷かれ、開始前から独特の緊張感に包まれていた。生徒たちは縦約1メートルの「条幅」という紙に検定印を押してもらい、墨や筆、下敷きの準備を慌ただしく進める。「揮毫、はじめ」。合図とともに会場の空気が一変した。与えられた2時間の中で、納得のいく一枚を仕上げなければならない。二階席から顧問や観覧客が見守るなか、生徒たちは一心に筆を運ぶ。静寂の中に響くのは、紙の上を滑る筆の音だけ。書道に真剣に向き合う高校生の姿は、会場の人々の心を打ったことだろう。
「書」で広がる文化の輪
揮毫を終えた生徒たちは、自分の作品を会場前方に並べ、互いの作品を鑑賞し合う。ただ作品を仕上げるだけでなく、互いに見て、学ぶことを大切にするのがこの揮毫大会の良さだと感じる。紙の構図の取り方、筆使い、字体の違いなど、学校ごとの個性が鮮明に表れていた。長い紙を横向きに使って漢詩をびっしり書き込んだ作品や、ピンク色の紙を用いたものなどユニークな作品などもあり、書道ならではの奥深さを感じられた。作品鑑賞を通して次の作品へのヒントを得たり、「この作品、上手ですね」「どんなことを意識して書いていますか」などの書道トークが会場内のあちらこちらで生まれたりと、書道を軸にした交流が広がるのもこの大会の魅力だ。学校の垣根を越えて語り合える時間は、高校生にとって大きな刺激になる。
「書」の文化を未来へ
席上揮毫大会は、競技であると同時に、若い世代が「書」の文化を受け継ぎ、互いに高め合う貴重な場でもある。壱岐を含む県内各地の高校生が同じ空間で筆を振るう光景には、日本の文化が未来へつながっていく力強さがあった。
写真は2025年10月25日筆者撮影




